■感想 ジョージ・ルーカス監督『スター・ウォーズ』エピソード1-3
スターウォーズ予告編[ファントム・メナス編] - YouTube.
スター・ウォーズ エピソード1/ファントム・メナス wiki (1999)
『フォースの覚醒』、2015.12/18の世界同時に向けて気分が高まる中、このお祭りを楽しむしかない、と『スターウォーズ』の映画6作品を続けて観てみようと考え、まず今週はep.1-3をイッキ見。
どういう順番で観るか、考えたのだけれど、初めての6作連続観は、物語の時間軸順としました。今まで作られた順にしか観ていなく、歴史順だとどんな感覚になるか試したかったわけです。では一作づつの感想です。
エピソード1は、以前観た印象と同じくやはりストーリーは薄味。こだわりが少ない。ので肩の力を抜いて、出てくる宇宙機とかガジェットとか星人とか、スターウォーズらしい世界観をゆっくりと堪能するに限るw。
この薄味、エンターテインメントとして、例えば『ロード・オブ・ザ・リング』のピーター・ジャクソンあたりによる粘ったシナリオと活劇で見せてもらったらどんなにか重厚だろうか、といらぬ想像もしながら。
ストーリーの骨格は、クワイ=ガン・ジンがアナキンを見出し、ポッドレースにナブーの将来を賭けレースが行われる。アナキンとジェダイの遭遇という全スターウォーズ世界のスタートと言っていい物語の端緒が描かれる。
そしてこのシーケンスで描かれるポッドレースが映像的にも一番の見所。ロケット(ジェット)エンジン2機に引かれるポッドの動きが映画的に映える。
そしてドラマの中心は、アナキンとパドメの交流、母との別れといったところか...。ここがやはりジョージ・ルーカス、感情の持って行き方がやはり薄味。Pジャクソン補正を脳内でかけながら観るとグッとくるw。
ガジェット的には、通商連合の一般ドロイドがイマイチで惜しい。兵士がほとんどそれなので迫力に欠けている。この兵士たちの出来が違ったら緊迫感は変わっただろう。例えば回転しながら突撃してきてシールド広げて攻撃するシス・ウォー・ドロイド・マークI(Sith war droid Mark I)のデザインがいい。このレベルがドロイド全体に獲得できていたら、、、。
ラストは、通商連合のドロイド制御艦の破壊で少し小粒、ここも薄味の一端。
同じくクライマックスのダース・モール、クワイ=ガン・ジン、オビ=ワン・ケノービとのライトセイバーによる武術の戦い。赤鬼と侍の対決という絵柄はいいのだけれど、どうしてもルーカスが憧れた黒澤映画の殺陣と比べると緩い。
無駄な動き、特に一回後ろへくるっと回る所作がそんなことしてたら隙だらけでしょ、と見えてしまって残念。『用心棒』や『七人の侍』の緊迫感のある動き。武具に触れたら死んでしまう、という緊迫感がもっとあれば、、、。
このあたりの感想は、実は『ホビット 決戦のゆくえ』を直前で観たので、あのクライマックスの殺陣の真剣勝負が眼に焼き付いていたので致し方ないw。
アミダラの日本の姫のような髪と衣装が素晴らしかったので、日本の時代劇リスペクトがそうしたところにも横溢していたら、と思わざるを得ない。
SFXは、CGなのでもっとマクロから近接のディテイルアップまで一連のショットで見せてもらえたらと思うところが何箇所か。ミニチュアにできない描写がそのあたりにあると思うんだけれど、、、。そのCGとマット画によるだろう、ナブーの景色は最高なのでここらも惜しくってしかたがない。
本作ではヨーダはフランク・オズ。CGではない(特別篇ではCGに差し替えられたらしいですが、、、。)
ジャージャーは世に言われるほど嫌いじゃない。ただコメディリリーフとしても、C3POともっと絡ませるとか、盛り上げ方はあったかも。ルーカスの脚本がとにかく薄味というのがやはりまとめです。
「スター・ウォーズ エピソード2/クローンの攻撃」トレーラー - YouTube
「スター・ウォーズ エピソード2/クローンの攻撃」wiki (2002)
クローン兵を生産する惑星 カミーノ。ジャンゴ・フェットとボバ・フェット親子の登場。クローン・ホストという位置付けで大きく絡むというのは印象的。
アナキンとパドメが愛しあう舞台 ナプーの自然描写がこちらも最高。(ナプーは観光で一度は行ってみたいと思いますねw。イスラムと日本のいいところの融合というか、、、)
ただし、このシーンで牛のような生物にアナキンが巫山戯て乗って落ちるところの合成が、ep1-3の中で最も違和感のある映像だった。もろCG的な。
ナプーのパドメが女王の任期を終えて、共和国議会の議員になっているという設定も面白い。ここらがep.4で同盟国でレーアが姫様となっている設定とつながっているのだろう。
タトゥーインでのアナキンのタスケン・レイダーの虐殺。ここは自然に暗黒面への道筋が付けられているところでストーリーの要でもありますね。違和感はアナキンがep.1と2であまりに印象が違うところ。普通少年時代と青年時代ってもっと同一人物の連続性ってあたりまえだけれどありますよね。顔が似た俳優をチョイスして、ここがもっと自然に描かれていたら、、、。
ジオノーシスでドゥークー伯爵に囚われて、3人が宇宙獣に処刑されるシーン。アクションが工夫されていてなかなか。そして駆けつけるヨーダとクローン軍団。
ここの戦闘シーンのCG演出がスビルバーグが『宇宙戦争』等でやったカメラを寄せながらブレさせる、この頃の流行の演出が効いていて臨場感がいいですね。
今回からヨーダはCG描写になり、表情がきめ細かく、鋭い感性を感じさせるキャラクターに変身している。
「スター・ウォーズ エピソード3/シスの復讐」トレーラー - YouTube
スター・ウォーズ エピソード3/シスの復讐 (2005)
共和国と帝国の関係、ルークとレイア他、エピソード4への繋ぎが明確になるep.3。ルーカス渾身の一作だと思う。ぬるい感じだったストーリーが一機にハードになっていく。これはジャージャーに代表されるようなファンの批判によって修正された部分であろう。
特にハードなラストは、『ロード・オブ・ザ・リング/王の帰還』に影響されたのではないか、と思わざるを得ない。
クライマックスの火焔の星・ムスタファーでの決闘シーンは、『王の帰還』のフロドとゴラムの溶岩の中での対決を想起する。
そしてアナキンの悲痛な姿。ここはまさに人の暗黒を描くために、ルーカスが子供も観るはずの家族ムービーにノワールを持ち込んだシーン。ジャージャーがほとんど出て来ないこの映画は、このノワールシーンに象徴されるようにシリーズ屈指の残酷映画となっている。
共和国から最高議長の独走(非常事態での独断を議会が許したことから来る)により、生まれる帝国軍。独立星系連合軍と帝国軍の関係がどうなるのかと観ていたのだけれど、この持って行き方は、帝国の非道さを提示していて面白いと思う。クローン側が帝国軍になる流れはここで繋がっているのだと。
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◆ep.1-3の感想
通して感じたのは、日本の武士の志とジェダイの違い。特にここではルーカスが偏愛する黒澤明の描いた武士との比較を簡単にしてみたい。
ジェダイにはマスターとパダワンという師弟関係の厳格な定義。評議会という組織による統治。こうした体制と言葉によるルールで縛っているようにみえるジェダイと、黒澤の描く武士は大きく異なる。
僕が特に好きな黒澤の描く武士は『用心棒』の桑畑三十郎と『七人の侍』の勘兵衛、久蔵に代表される浪人/野武士である。
彼らが持つ武士の矜持と鍛え上げた剣術の凄みが、きっとルーカスが惚れた日本の武士ではないか、と思う。彼らの武士道は、言葉によらない、自らのうちから言葉に表さずに滲み出るまさに矜持と言っていい、姿勢である。日本人の語らない美徳ということもあるかもしれない。
それに対して、ジェダイは外から言葉で定義される規律に基づいて行動している。常にマスターの言葉で規制され、何があるべき道かを自身で考えているように見えない部分がある。これは日本と西洋の考え方の違いかもしれない。
レディファーストやノブレス・オブリージュ(「高貴さは(義務を)強制する」)は人の内から自律して出てくるというより、まさに義務として社会的に定義されている度合いが強く感じられる。これはジェダイ道(?)にも通ずるところだと思うがどうだろう。欧米のこのあたりの感覚は、もともと人が自律的にはそうすることができない生き物で社会としての規律で縛る必要がある、という考えが根底にあるような気がする。
それに対して、桑畑三十郎と勘兵衛で黒澤が表現しているのは、まさに自身の判断で内側から人の善性として滲み出る武士道である。この黙して語らず行動する、日本の良質な時代劇の血がジェダイにもっと流れていたら、映画の感動はより深いものになっていたのではないかと思う。
ここでも黒澤の武士に近いのはP・ジャクソンが描いた『ロード・オブ・ザ・リング』と『ホビット』の剣士たちである。ルーカスも『スターウォーズ』でトールキンから影響を受けている、とされているのだけれど、ジェダイを黒澤とトールキンの正当な嫡子として描いていたら、、、と想像しないでいられない。
この剣士達の姿は、もしかしたら北欧の神話からの影響かもしれないが、それらを未読の僕はこれ以上語れません。
欧州の騎士道と武士道の違い、北欧の神話における剣士達、これらの分析から各地域の人々の特性分析を試みた文化人類学書があったら読んでみたいものです。
、、、、ということでお祭りに盛り上がるつもりが、つい今まで『スターウォーズ』に違和感を持っていた部分を再度強く認識するような結果に、まずは終わってしまった。さあ、来週はep.4-6で盛り上がるぞっと(^^)。
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