■感想 立川吉笑 『現在落語論』
"「立川談志の『"現代"落語論』から50年。孫弟子・吉笑が語る『"現在"落語論』!」と題して、吉笑さんが話題の新刊『現在落語論』について語っています。
http://www.tbsradio.jp/ss954/2015/12/21/
TBSラジオ 荻上チキSession 22 ミッドナイトセッション 2015年12月21日 出演:荻上チキ、南部広美"
立川吉笑 『現在落語論』(毎日新聞出版)読了。
いつもPodcastで聴いている「荻上チキSession 22」に2014年秋に登場して興味深かった落語家 立川吉笑が、2度目の登場で自著を紹介されていたので、読んでみた。引用した上のYoutubeの音声ファイルで語られている、落語のシュールな可能性についての言葉がとても興味深い。
立川派の若手、立川吉笑による新進落語論。
特に本の前半、落語の語りの特性からシュールな描写の可能性について述べる筆致は、まさに奇想SFや叙述ミステリーと真髄を同じくするもので、そのまま幻想文学論に援用しても良いくらい(^^;)。
立川吉笑は本書で叙述ミステリーについては述べているが、バリントン・ベイリーとかイアン・ワトスン、R・A・ラファティ、円城塔他の想像力の極北を切り拓く、不条理SF(バカSF)は読んでいないのだろうかw。
落語の特性、登場人物たちの語りだけで、観客の頭の中に、冥界の情景(例えば『死神』)とか、人間が真っ二つに切られてその両方が自由に動き回る(「胴切り」)光景だとかを縦横無尽に時空を超えて描けるところに着目し、そのシュールな光景で奇天烈なお笑いを描こうと考えているところが凄く期待させる。
上のYoutubeの音声ファイルで紹介されている幻想枕「赤鬼」のくだりを聴くだけでも、吉笑奇想落語の一端を知ることができるが、これらの延長上に不条理SF(バカSF)が存在していると思うのは僕だけだろうか。
例えば、円城塔『Self-Reference ENGINE』の短篇を落語化してみたら、素晴らしい作品になるんじゃないかとか、夢想しないではいられません。
今後、伝統芸術と思われている落語の、若者たちへの大衆芸能としての解放に、立川吉笑奇想落語が活躍するのを期待してやまない。こうした本で落語の語り口による新しい笑いの可能性を明文化できる先鋭な落語家がトライする世界に大いに興味がわく。
SFと落語の関わりというのは、小松左京と桂米朝の関係とか昔から幻想方面で接点があり、古くにはSF大会で米朝により「地獄八景亡者戯」が演じられたこともあったようで、奇想方面でのクロスオーバーが今後も実現したら嬉しいと思う。(最近、家族の影響で立川志の輔とか春風亭一之輔、柳家三三、桂文治他が名古屋へ来ると、高座へ出向いているのでそんな夢想を...(^^;))。
今のところ東海地方で吉笑落語を聴ける機会は皆無なようだけれど、是非とも一度高座を聴いてみたいものです。東京から大阪へ素通りしないで、名古屋でも一席設けて頂きたいものです。
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