■感想 テリー・ギリアム監督『ゼロの未来』 & 園子温監督『ラブ&ピース』
テリー・ギリアム監督『ゼロの未来』DVD初見。
冒頭の未来都市のカラフルで猥雑な光景、クリストフ・ヴァルツ演じる主人公コーエン・レスの住む寂れた廃墟の教会等の美術が素晴らしい。
物語はほぼこの教会の中で描かれるためにスケール感は少々乏しいが、閉塞されたコンピュータ社会、単調な仕事に勤しむ社員と管理職、解放のイメージを描く女性キャラクター、会社の中枢にある巨大な装置、、、それらの意匠と主人公のキャラクターが、自然と彷彿させるのが『未来世紀ブラジル』。
コンピューターやネット、ヴァーチャルリアリティを描く光景は少々異なるが、これはギリアムのセルフリメイク的な小品になっている。 VRとして描かれたネット空間上の浜辺の光景とベインズリーという女性との交流にギリアムの理想郷が描かれているのかも。ちょっと『コンタクト』の異星の浜辺に似ていますね。
映画『ラブ&ピース』×『忌野清志郎 ロックン・ロール・ショー The FILM ~#1入門編~』コラボ忌野清志郎「スローバラード」ミュージックビデオ - YouTube.
園子温監督『ラブ&ピース』DVD初見。
もともと1990年頃に園監督はこの映画の脚本を書き、忌野清志郎主演で撮りたいと考えて清志郎にもオファーしたということだけれど、もしそれが実現していたらと考えると残念でならない。
ボーカルがキーになる映画で、朴訥とした演技でこの主役を清志郎が演っていたら、、、。
前半の会社員としての清志郎の違和感は、本作ほど奇怪な主人公にならなかったのじゃないか、そして後半のブルースマンとしての演技と、園監督が書いた曲をあの清志郎の声で歌われていたら、、、。
そしてクライマックスでかかる「スローバラード」。
歴史にIFはないけれど、そんな幻の映画が実現していたら、その後の園監督作品と清志郎の、さらなるコラボレーションでどんな作品が生まれていたか、、、。二人のファンとして、存在しなかったそんなパラレルワールドの共作映画を想像しないわけにいかない。
園ファンとして、もうひとつメモしておくと、本作は監督が好きな映画のベスト1に挙げるジョージ・ミラー脚本,制作の クリス・ヌーナン監督『ベイブ』を思わせる動物やオモチャたちのシーンがある。
本作、初公開は6月だったけれど、本来は12月に上映すべき映画だったかも。園監督の『トイ・ストーリー3』オマージュにも溢れているような気がする。
特撮映画としてもクライマックスの迫力は素晴らしい。園作品としては異色作だけれど、切なくも楽しいエンタテインメント、今更だけれど、お薦めです。
◆関連リンク
・園監督の好きな映画ベスト10
・"水道橋博士と高橋ヨシキの「動物映画」特集「ラブ&ピース」「ベイブ」ほか"
園監督も出演。
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