■感想 リドリー・スコット監督『オデッセイ』: The Martian
The Martian: Behind the Scenes - YouTube
リドリー・スコット監督期待の新作、『オデッセイ』をRealD方式の3Dで観てきた。(今回は名古屋では字幕版しかなかったIMAXと迷って、結局吹き替えを選んだ)
噂に違わぬ、火星SFの秀作。まさに『グラビティ』火星版、というか『月は地獄だ』火星版というか。宇宙でのサバイバルを描いた映画の中では、まさに秀作と言える作品であると思う。
陽性でどこまでも危機に対してポジティブに取り組む主人公の物語、そしてそれを描き上げるCGと特撮、そして3D変換技術、どれも完成度が高く、全篇引き込まれて観た。実は不勉強で原作を読んでいないのだけれど、あくまでも科学的に描いたサバイバルに絡む技術の描写が、SF的な興奮を生みだしていた。
2011年に『火星の人』が出版された後、間違いがあることが判明した。作中では火星での砂嵐によって船が深刻なダメージを受けたことになっている。確か に現実の火星では風速が時速190キロメートルにもなる。しかし、火星の大気圧は非常に低いので、船に深刻なダメージを与えるほどの風を発生させることは できないのである[44]。この間違いは映画においても訂正されなかった。
一部、科学的におかしい描写もあるようだけれど、それも映画としての迫力を生み出すための、わかった上での演出もあったようだ。
僕が思ったのは、MAV(Mars Ascent Vehicle)の飛行シーン。
ノーズコーンを外した宇宙船の風圧の描写が、上と同じように科学的にはリアルでないような気がした。「火星」wiki等によると、火星の大気圧は0.7-0.9 kPaで地球の101kPaに対して約0.8%。地球の大気圧の1/125ということになる。12Gの加速という描写があるので、1/125×12=約1/10。地球上の1/10でロケットにかかる風圧としてあの描写はなんか違う気がする(^^)。
リドリー・スコットの映画として、僕は多くの同年代のファンと同じように、『ブレード・ランナー』とか『エイリアン』といった初期作品が好きなのだけれど、その後の作品では『ブラックホークダウン』は格別に迫力があり、好みである。
今回の作品は、SFやアメリカ宇宙開発の陽性な面を描いている映画だけれど、あの『ブラックホークダウン』のような迫力のある物語と映像が積み上げられていたらどんな傑作になっていたかと思わずにはいられないw。
描く方向は180度近く異なるのだけれど、『ブラックホークダウン』のリアリティが獲得されていたら、ポジティブな宇宙開発の映画としても、さらにクールなものになっていたのではないだろうか。(面白くなかったわけでなく、スコット監督なのでさらに上を期待してしまう、ということである)
主人公のポジティブさの表現があることで、一部、もともと生き残るんでしょw、という予定調和的な面が感じられ、一面宇宙の非情な冷たさももっと描けてたらな、と思うわけです。
最後に先日亡くなったデイヴィッド・ボウイ「Starman」、素晴らしかった。
あらためて黙祷です。
◆関連リンク
・David Bowie- Starman - YouTube
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