■感想 本多猪四郎監督『ゴジラ』(1954年)
本多猪四郎監督『ゴジラ』(1954年) デジタルリマスター WOWOW版録画見。
ちまたでは庵野秀明総監督&樋口真嗣監督『シン・ゴジラ』試写の感想がつぶやかれているようですが、(ネタバレが怖くて情報シャットアウト中w) 、『シン・ゴジラ』の前に第一作を観直した。真面目に丁寧にそして大胆に作られていることを再度実感。
特に昨年観た時に気になっていたゴジラの足音に着目して今回の感想をまとめてみた。
ゴジラの足音は、タイトルバックと海からの登場シーン、大戸島シーンのみに、太鼓の音で付けられている。日本本上へ上陸してからは.地上シーンも海上シーンも足音は無音。
建物が踏み潰されるシーンのみに、その破壊音が当てらえているので錯覚するが、今回注意して観るとまさにそのように演出されている。特に無音のシーンは、どこかゴジラの幽玄な雰囲気を創り出している。
冒頭でゴジラの脅威を足音(太鼓)で表現しているので、普通に考えればリアリティーを出すために、巨大な存在のおそろしげな地響きをともなう足音を使うのが常道であろう。
しかし本多監督(と円谷特技監督?)は、そこを無音で処理した。明らかに強い何らかの意図があったものと考えられる。
この無音の意図は何だろうか。
やはりよく言われる様に、太平洋に散った英霊の象徴化を意図されていたのか。それとも水爆という脅威を映像化するのに、現実的な音を廃して幻をイメージさせようとしたのか。
科学志向が強かったという本多監督がこの抽象的描写で何を狙ったか、機会があれば御本人に確認したかったと思わざるを得なかった。ネットで検索すると、いくつかこの描き方に対する解釈を読むことができるのだけど…。今回探した限りでは直接関係者に確認した情報はネットにないようだった。
54年版ゴジラのドキュメンタリー的な映像描写、テーマである科学批判と、そして幻の様なゴジラ描写。これらが、後年のエンタメ作、リアル志向作と圧倒的に異なり、本作に鋭いギリギリするような緊迫感をもたらしているのだと思う。
そして、芹沢博士の発明したオキシジェンデストロイヤーという仕掛けを用いることで、ゴジラという存在で水爆の脅威を描くとともに、科学の暴走の悲劇を二重に描き出している。ここは何度でも書き綴られるべき本作の素晴らしい描写であろう。
さてこれを復習した上で、原発事故後の日本と『シン・ゴジラ』の闘いがどのように描かれているか。オキシジェンデストロイヤーに変わる仕掛けは何か用意されているか。そしてゴジラの足音の処理は?
興味は尽きないがこうした空想をして時間を潰すのもあとわずか3日程。週末の公開が楽しみでならない。
◆関連リンク
ゴジラデジタルリマスター版三大放送ビットレート比較 - 録画人間の末路 -
| 固定リンク
« ■情報 ヤノベケンジ展「シネマタイズ」&「ULTRA×ANTEROOM exhibition 2016」 開催! | トップページ | ■感想(後半ネタバレ) 庵野秀明 総監督/脚本, 樋口真嗣 監督/特技監督, 尾上克郎 准監督/特技総括『シン・ゴジラ』 »
コメント