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2016.08.29

■感想 新海誠監督『君の名は。』


「君の名は。」予告 - YouTube

 新海誠監督『君の名は。』初日観てきました。今日はネタバレなしの感想です。


 ★★★ 一部、物語の舞台については具体的に触れているので、前知識なしに観たい方は御注意ください。 ★★★




■劇場の客層
 実は、新海作品を劇場で観るのは今回初めて。全作観ているのだけど、いまひとつ波長合わないので劇場までは行ってなかった。でも前作の『言の葉の庭』が今までと作風は延長上なのだけど、何処か印象が違って作品の昇華度が高かった。そして今作は素晴しく前評判が良かったので、最近癖になってる週末、会社帰りにいつものイオンシネマ大高で初日の18:35回を観て来た。

 劇場はこの映画館では中程度の広さで、7割の入り。ほぼ20代男女。『シン・ゴジラ』の初日の年令層との差は歴前。きている方々が新海ファンなのか、それとも楽曲を提供しているRADWINPSのファンなのかは、判然としない。うちの娘がラッドファンなので、聞いてみようかとw。

■何と地元が舞台
 冒頭予告篇にもある流星のシーンが素晴しい。そこにかぶる新海節の独白にはじまり、急展開な物語、と何かどこかで聞き覚えのある方言。何とこの映画、飛騨が舞台。うちは同じ岐阜でも南の東濃なのでイントネーションは結構、違うけど、明らかに親近感のある言葉、そしてところどころ出てくる「高山ラーメン」の看板とか見知った光景(^^)。

 twitterで検索すると、この夏の長編劇場版アニメは、岐阜ブームらしいので、また吃驚。
 『聲の形 』の舞台が大垣市、『ルドルフとイッパイアッテナ』が岐阜市に帰る話、そして『君の名は。』の舞台が岐阜県飛騨市(古川駅が出てくる)付近に設定された架空の街。

 飛騨を舞台にしたという山の中、何もない感はなかなかの親近感でした。飛騨の山々と星の流れがとてもマッチしている。特集本をみると企画書では山中の村か島の設定とのことでしたが.....。

 新海監督自身山の国である長野出身だけれど今回何故岐阜を舞台にしたのか聞いてみたい。雰囲気としては山深い森の多いシーン、そこにある少し神秘的な情景を持つ山村というのが飛騨にイメージが合ったのかもしれない。ちなみにカミオカンデがあるのは飛騨市神岡。そうした宇宙とのつながりのイメージも影響したのかもしれませんね。

 あえて岐阜県人としてひとつ苦言を呈すると、「あほ」という言葉は「たわけ」と言ってもらった方がより地元感が出たかと(^^)。

 それにしてもこの映画が岐阜県の北部 飛騨地方では上映されていないのが残念でならない。現在、飛騨には映画館が実はないのですね。

■総論 
 と以上は映画そのものに大きく関係するわけでないどうでも良い話地元話なんですがw、ここからが本題。

 物語の不思議の提示とある危機をめぐるサスペンス、そしてそれを裏打ちする日常の確かな登場人物の息遣いの聞こえてくるエピソードのてんこ盛りで映画は息つく間もなくクライマックスへ。ここの捻り方が絶妙で、上手い構成に涙腺をやられます。
 SF映画としても、よくある設定を重層的に重ねることで、新しい緊迫感が生まれていて、壮大な流星の光景とともに見事なSFの「絵」を構成しています。

■映像について
 これ以上書くとネタバレになるのでストーリーについては止めておきますが、映像は超絶な背景とかは今回少し薄味。全体が110分と長いので、新海監督自らによるあの超絶な光と影による光景描写はある一定程度の領域に留まり、冒頭とか山の中の紅葉シーンとか絶品なシーンはあるのですが、そこは今回少なくて、一般的なアニメの背景的シーンも多かったかな、と。

 今回の見所のもう一つはアニメーターの作画シーン。作画の良いパートは何とも素晴しい出来。
 エンドタイトルを見てると作画監督のジブリ出身安藤雅司氏の他に、沖浦啓之、橋本敬史、松本憲生、井上鋭、黄瀬和哉氏といったスーパーアニメータの名がクレジットされ、さらにジブリの名アニメータ 稲村武志、田中敦子、賀川愛氏といったの方々の名前がある。あのアニメーターはこのシーンかな、とかいろいろ思い致るも想像でしかないので、担当シーン情報が知りたいものです。twitterで検索すると幾人かの人が幾つか予想していて面白い。

 橋本敬史、松本憲生氏は流星のシーンとか、途中の抽象画的シーン、沖浦啓之氏は主人公たちが駆けるクライマックスのどこかかな、とか。沖浦氏は、例によって(?)ミニスカートのシーンかもしれない(^^)。

 いずれにしても今までの新海作品の良い部分と、ジブリ、IG等の日本アニメの財産が結晶化したような映画作品になっています。そして前述した丁寧な日常の積み上げとひねりの効いたクライマックス。新海作品で波長の合わなかったセンチメンタルに振ったシーンも、緻密で稠密な重層的物語構造によって、自然に流れに身を任せて物語に惹き込まれて観ることができる、なかなかの傑作です。

 ラッドの歌も、少し五月蝿いかな、と思うところもあったけれど、映画の雰囲気に合っていて、作品の厚みを増していてとても良かったです。

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