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2016.10.10

■感想 岩切一空監督『花に嵐』 と 「期待の新人監督2016」@カナザワ映画祭 


PFFアワード2016入選作品 『花に嵐』予告編 - YouTube

期待の新人監督2016 - カナザワ映画祭2016|かなざわ映画の会

"9/25(日) 12:45〜 一般公募自主映画の中から選ばれた3作品を上映し、最優秀作品としてカナザワ映画祭期待の新人監督賞、観客投票で選ばれる観客賞、そして出演俳優賞を選ぶ。
・太田慶 監督・脚本・編集『狂える世界のためのレクイエム』(15年/88min)
・大野大輔 監督・脚本・主演『さいなら、BAD SAMURAI』(16年/61min)
・岩切一空 監督・脚本・撮影・編集・主演『花に嵐』(15年/76min)
審査員 黒澤清、ダンカン、柳下毅一郎、小野寺生哉委員長(カナザワ映画祭)"

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期待の新人監督2016 受賞結果発表 - 目標毎日更新 カナザワ映画祭主宰者のメモ帳

"期待の新人監督賞 『さいなら、BAD SAMURAI』
観客賞 『花に嵐』
出演俳優賞 里々花(『花に嵐』)"

 カナザワ映画祭の期待の新人監督の三本を観た。応募された60本からこの日、候補作3本が上映され、観客の投票による観客賞と審査員による出演俳優賞、期待の新人監督賞が決定された。

 以下、上映順に僕の感想です。

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 まず『狂える世界のためのレクイエム』、映画をめぐるサスペンス&メタフィクション。女優 東亜優が素晴らしい。その眼の演技が男たちをテロリストとして先導していく役にぴったり。テロリスト3人の個性も良かったし、小宮孝泰による撮らない映画監督によるラストのメタフィクションも、好きな作品になりました。

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 『さいなら、BAD SAMURAI』、黒沢清が講師を務める映画美学校出身の大野監督作品。正に監督紹介に書かれている通り「呪われた映画監督」。これも自主映画を巡る制作の苦労の物語なのだけれど、その道筋の混沌。同人誌を作っているシネフィルが途中登場しおちょくられるシーン、なかなかの爆笑でした。(こんなブログをやってると自戒自戒(^^;))

◆岩切一空監督『花に嵐』

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 早稲田大学公認自主映画サークル「稲門シナリオ研究会」出身の岩切一空監督『花に嵐』大学映研の日常を描くPOVとしてスタートしたドキュメンタリーが、見事に伏線を回収してフィクションに転化して昇華していく傑作。

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 予告篇の映像は映画のシーンを右左に2分割して短いカットを繋いであるけれど、そこから切り出した映像で簡単に映画のイメージを紹介してみたいと思う。(予告篇のイメージは必ずしも本篇とは合っていなく、この予告篇そのものの映像性を狙ったものになっている)

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 まず映画冒頭、上の画像のように、砂浜を撮り空が写り込んだ海面を天地逆にして表現している。ここに不安を掻き立てる、学生時代を思い出すようなモノローグがかぶり、映画のトーンを予告する。映像的に新しい何かを観せてくれる予感も合わせて表現していて秀逸。 

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 映画は大学構内、春の新入生サークル勧誘から始まる。
 POVで描かれた、キャンパスや学生サークルの部屋、そして新歓飲み会の描写はごく自然。新人がサークルのハイビジョンカメラで日常を切り取っていく体を取っている。

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 学生たちの日常としか思えない自然な描写にジワジワと忍び寄るフィクションのディーテール。日常描写として違和感があったシーン(ex. 広報写真に使われているコインロッカー前のシーン等)も見事に伏線として回収されていくテンポのいい展開。

 そして、まさかの空撮(ドローンを調達できず風船20個にカメラぶら下げたとか)による映画的ショック。

 みずみずしい感性としっかりしたストーリーの縦糸を持つ映画の構造はまさに岩井俊二の初期作を思い出させるレベル。けどその感性は21世紀の新しい今。

 僕の知ってる自主映画、特に学生映研を舞台にしたものは、映画づくりへの情熱と、あの年代特有の鮮烈で新鮮な感性が結実したような映画が傑作として記憶されているのだけれど、この映画はそうした感覚を持った上で、エンターテインメントとしての結構とサスペンス、そして映画的な映像の快感を持った傑作だと思う。

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 上映後のツイートでこの映画を観た人から、劇場で一般公開できるレベルと複数書き込まれているのを見たけれど、まさにそんな映画。

 岩切一空監督のこれからの作品も大いに期待です。 主演賞に選ばれた里々花の活躍も楽しみ。

◆関連リンク
花に嵐(青山シアター)
 有料ですが、ネットで全篇上映中!
PFFアワード2016『花に嵐』|第38回PFF

"= 今後の上映スケジュール =    
京 都 会場 】 2016年10月31日(月) 16:40~ @京都シネマ
   ※同時上映『おーい、大石』『山村てれび氏』    
【 神 戸 会場 】2016年11月5日(土) 16:00~ @神戸アートビレッジセンター
   ※同時上映『おーい、大石』『山村てれび氏』    
【名古屋 会場】 2016年11月11日(金) 18:30~ @愛知芸術センター
   ※同時上映『回転(サイクリング)』『シジフォスの地獄』"

PFFでの映画紹介ページ

"[2016年/76分/カラー] 監督・脚本・撮影・編集:岩切一空/録音:石川領一 出演:岩切一空、里々花、小池ありさ、篠田 竜、半田美樹、不破 要、吉田憲明"

岩切一空 関連 YouTube
岩切監督twitter , "i" tumblr (岩切監督tumblr)
りりかtwitter , ririka(公式HP)

◆「期待の新人監督2016」審査員コメント

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 3人の審査員からのコメントのメモです。

・ダンカン

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 昔の自主映画は何だったんだろう、と言う位、みんな本格的。
 『さいなら、BAD SAMURAI』の主役、大野さんは友達になりたくないタイプ、イライラ感がつのる(笑)。
 たけし監督の『監督バンザイ』も酷かった。自分が楽しめるのが大切。覚醒剤と同じ、映画続けるか、人間やめるか(笑)。

 岩切監督はいい芝居だった。POVでうつっている以上の芝居を想像させる。
 りりかさんは絵が持つ女優、オーラがあった。最優秀俳優はりりかさん。

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・柳下毅一郎 観客賞 岩切監督『花に嵐』言うまでもなく。観てて面白かった。まさに映画に祝福されている。それに対して『さいなら、BAD SAMURAI』の大野監督は映画に呪われている。祝福と呪いなら呪いは一生。『さいなら、BAD SAMURAI』の方が強いと思う。
 『狂える世界のためのレクイエム』は、やはりあのストーリーなら、本当にテロをやるのが映画。もう一歩踏み越えて欲しかった。

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・黒沢清
 3本とも映画を巡る物語で、皆んな青春を描いている。8mmを撮ってたのに大して格段の進歩。
 やはり青春を若い人は撮ってしまう。そして映画に、呪いか祝福か捕らわれてしまう。
 『狂える世界のためのレクイエム』映画を撮ることと女性。後半から映画を撮ることに集中。
 まず撮ることからはじまるが、気持ちよくフィクションにつないでいく。
 期待の新人監督賞『さいなら、BAD SAMURAI』は、映画を撮ることのせつなさを感じた。

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・大野監督挨拶
 映画作ってて良かった。大きなスクリーンで上映され幸せな瞬間。審査員の3人の方に観てもらい恐縮の限り。次作はガラリと雰囲気を変えて『ア二一ホ―ル』みたいな新作を撮りたい(会場 笑)。

◆関連リンク
カナザワ映画祭2016 期待の新人監督審査員講評 - 目標毎日更新 カナザワ映画祭主宰者のメモ帳 公式な審査員講評はこちらをご覧下さい。

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