■感想 片渕須直監督『この世界の片隅に』
映画『この世界の片隅に』予告編 HD - YouTube
この世界の片隅に - Wikipedia
" 片渕自身がこの作品のアニメーション映画を企画し、こうのに許諾を請う手紙と自作『マイマイ新子と千年の魔法』のDVDを送った。
こうのは1996年に放送された片渕のテレビアニメ『名犬ラッシー』にあこがれ、「こういう人になりたい、こういうものが作りたいと思う前途にともる灯」として捉えていたため、この手紙を喜び枕の下にしいて寝たという"
片渕須直監督『この世界の片隅に』を名古屋伏見ミリオン座で観た。
まず第一に、冒頭のことりんごの主題歌が出てくるシーンの素晴らしさ。息を飲むような素晴らしい空のシーンにまずじんわりと映画全体がそこに結晶したような感覚を(冒頭なのに)何故か覚えたのは僕だけだろうか。
そしてそれに続く本篇のアニメーション表現の何と豊かなことか。
冒頭の化け物の背追い駕篭から、座敷わらし。空襲のリアリティとファンタシー。衝撃的な場面の心象を前面に出したようなアニメーション映像。
こうの史代の原作も、ロ紅で描いたり、左手で描いたりしたそうだが、映画の心象を見事に表現した、アニメーションの柔軟な描写が活きている。
片渕須直監督と、そして監督補・画面構成を担当された浦谷千恵さんのアニメーション表現が存分に発揮されたみごとな映像。
淡々とそしてユーモラスに描かれる日常のリアル。
絵を描くシーンも日常の家事も、いずれも主人公すずの手作業を丹念に追い、そこに息づく人間のぬくもりを伝えてくる。ホワッとしたすずの人柄がなんとも微笑ましい。
そして呉という街の独特の雰囲気と、その日常描写があいまって、映画は戦時中の人々の生活をリアルに描き出している。
そうした人の手の作業を前半で描き、それに退避して描かれる後半の痛ましい現実。積み上げた日常を破壊する戦争という過酷な現実の表現として、ほわっとしたすずのあるシーンでの慟哭が強く胸を撃つ。
戦争と市井の人間を描いた素晴らしい傑作。多くの人に観てほしいアニメーション映画です。
◆蛇足 岩井俊二監督『リップヴァンウィンクルの花嫁』との関連
この映画を観て、僕は今年観た『リップヴァンウィンクルの花嫁』を何故か強く思い出していた。主人公 皆川七海の浮遊感と、状況への巻き込まれ感がきっとその原因なのだろうと思う。
描いている時代もテーマも大きく違うが、ここに
◆関連リンク
・当ブログ記事 ■感想 岩井俊二監督『リップヴァンウィンクルの花嫁』: Bride wedding scores for rip van winkle
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