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2017年1月

2017.01.30

■分析 新海誠監督『君の名は。』大ヒット要因?、中島みゆき「糸」のカラオケランキングとの関係


【君の名は。】糸【MAD】 - YouTube

◆『君の名は。』大ヒットの要因
 先日、同窓会2次会でカラオケ行って驚いたのは、ランキングで中島みゆき「糸」が5位に入っていたこと。中島みゆきの歌の中でもそれほど大ヒットしたわけでもないのに、なぜ、今??
 調べてみると昨年の年間で2位、そしてここ数年上位が続いているらしい。

ジョイサウンド年間ランキング 2016年 2位2015年 3位2014年 13位

歌唱した年代別比率(2015年)。20-50代に満遍なく分布。

 で、直感的に思ったのが『君の名は。』大ヒットとの関係。
 RADWINPSやSNSによる要因だけでは考えられないビッグヒットになっている底流に、この「糸」のカラオケランキングに現れている日本人の心象が関係しているのではないか。

 もちろん通底するのは運命/結びつき/糸。
 どこかで運命的なつながりに関する情動が現在日本人の底流に横たわっているのかもしれない。相関関係の証明は難しいが、おそらく無関係ではないだろう。カラオケという一つの気持ちの表現の場で、売れている曲から、今後の映画作品のヒントを得る、というのは無意味ではない気がする。カラオケマーケッティング(^^)。

 なーんて妄想をしながら同窓会仲間と「糸」を熱唱した夜、でした。
 探してみたらそういう分析はネットにはないのですが、いろいろと作られている『君の名は。』MADにばっちりのものがありましたので、ご紹介。ヴォーカルは中島みゆきのものではないのでけれど、なかなか良いです。

◆関連リンク
君の名は ヒット 要因 - Google 検索
■感想 新海誠監督『君の名は。』

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2017.01.25

■感想 庵野秀明責任編集『ジ・アート・オブ・シン・ゴジラ : The Art of Sin Godzilla』取材、執筆/氷川竜介、中島紳介、木川明彦

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庵野秀明責任編集『 ジ・アート・オブ・シン・ゴジラ』

『シン・ゴジラ』公式記録集 ジ・アート・オブ シン・ゴジラ - 監督・庵野秀明自らが編集した『シン・ゴジラ』の詳細全記録集が、豪華ハードカバー上製本で発売決定!:EVANGELION STORE

"【収録内容】
・庵野秀明ロングインタビュー(本書のみの独占掲載)★7万字以上の大ボリューム!
・主要スタッフインタビュー
 樋口真嗣、尾上克郎、前田真宏、竹谷隆之、鷺巣詩郎、山内章弘、佐藤善宏、佐藤敦紀、大屋哲男、山田康 介、林田裕至、佐久嶋依里、山田陽、野口透、稲付正人、三池敏夫、摩砂雪 他
・『シン・ゴジラ』はこうして作られた!
 庵野秀明による企画メモやプロット、脚本(準備稿、決定稿、最終決定稿)、各クリエイターのデザイン画やイメージボード等を網羅して収録
・前田真宏による『シン・ゴジラ』デザイン画
・竹谷隆之による『シン・ゴジラ』雛型写真
・メイキングスチルによる撮影現場紹介
・ゴジラをはじめとするCGモデリング画像
・美術セット、特撮用ミニチュアその他劇中登場アイテム
・ポスター、チラシなど広告媒体、サントラCD、エキストラ参加記念品など関連アイテム
・完成台本(関係者配布用製本と同仕様)を別冊付録で同梱
・描き下ろしイラストポスター(前田真宏、鶴田謙二)封入
監修/カラー、東宝"

 年末に出た560ページという大部の記録全集『ジ・アート・オブ・シン・ゴジラ』をやっとw読了したので、その感想です。
 冒頭の写真はカバーを広げたところ。ゴジラの長い尾をカバー全面を使って、ダイナミックに見事に表現しています。下は怪しい本を察知して、匂いを嗅ぎにきた我が究極映像研 猫たちw。

◆総論
 前田真宏他のデザイン画、竹谷隆之の立体造形、初期プロットから完成稿、そして圧倒的な分量のインタビューで構成され、映画の成立を追った充実の記録集である。『ヱヴァンゲリヲン新劇場版 全記録全集』と同様にその徹底した作品の制作過程へのアプローチが素晴らしい。

 特に今回はカラーでの初の長篇実写映画ということで、今までのアニメに対して、どう制作過程が同等/異なるのか、というところが読んでいく/眺めていく時の興味の中心だった。

 その結果は、主に氷川竜介氏によるインタヴューで明らかになっているが、特に「庵野総監督の今回の演出が絵コンテ、プリヴィズ至上主義で予め決められたレイアウトで撮影時の画面設計が決められている」と考えていた部分が大きく誤解していたことがわかった。

 当ブログ記事 『シン・ゴジラ』感想2でもそうした前提で考えていたが、これは僕だけの誤解ではなく、ネットや本で書かれている批評家、観客の多くが誤解している部分である(例えば『映画秘宝 17.3月』「秘宝ベスト&トホホ10」での町山智浩氏と柳下毅一郎氏の対談での誤解)。

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 『ジ・アート・オブ・シン・ゴジラ』を読むと、特に実写部分は現場でiPhone含む多くのカメラでいろんなアングルから被写体(主に俳優の演技)を撮って、その多数のカットのサムネイルを使って、ベストな画角の絵を選んで行った、とある。

 実写ならではの、現場での新鮮な映像を捉える方法をとっていたわけで、その手法はアニメーションとは明らかに違う。
 単にアニメの手法を持ち込んだという、型どおりの批評が多い中、この映画は実はそうした撮影技巧含めて、実写映画(日本映画?)としてのある種の革新を成し遂げていたのではないか、と思うのだ。

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 もちろん複数カメラは黒澤明含め、すでに多くの映画監督によってとられている手法であるが、今回は機動力の高いiPhoneとかキャノンのCANON XC10とかそうしたものが普通には撮れなかったようなアングルで画角を切り取り、それが画面に躍動感をもたらし、この映画独特のルックを作っていたということ。特にインタビューで触れられていた摩砂雪氏のカメラが独特の画角と言われていて、ここはアニメの演出/レイアウトで鍛錬された摩砂雪氏独特の感覚が息づいていたのであろう。

 iPhoneの映像も全1558カット中31カット使用されているという。XC10は146/1558カット。二機種合わせて全体の11%というのはなかなかの数字。(ちなみにメインのデジタルシネマカメラ ALEXA 1018カット、RED 55カットと(P343)。)

 上記、この本の数々のインタビューとカットのサムネイル画像から、実写部分は現場での複数カメラと認識したが、特撮とCGは全てプリヴィズ通りということか、Blu-ray特別版に特典として収録されるというプリヴィズでの確認も楽しみである。

◆ビジュアル設計
 まず前田真宏氏のデザイン画が素晴らしい。
 第1形態、第5形態に加え分裂進化形態まで。制作過程で検討されたヴィジュアルイメージの数々に「もう一つのシン・ゴジラ」を体感し、ワクワク(^^)! 大判の写真で見られるのでこれだけでもこの本の価値があるかと。第5形態についての詳細、かなり当初は踏み込んだ設定があったようで、もし全部のイメージが映画に焼き付けられていたらと考えるとゾクゾクくる。

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 そしてもちろん、竹谷隆之氏の造形が素晴らしい。右の尻尾の造形はCG化せず映画にそのまま映し出されたとか。
もう美術品の域です。未来の国宝かと(^^)。

 それにしてもこんな素晴らしい造形の記録が2Dだけとは残念すぎます。こうしたものこそ、3D映像として記録し多くの人に立体物としての魅力を広めて頂きたい。

 3Dハンディカムでもかなりの臨場感ある映像として残せるので、是非ブルーレイ特典に入れて頂きたい。
 今までに彫刻等、美術品を撮って家で観るとそこにあって触れそうですから(^^)、かなりの臨場感で記録できると思う。

 私、立体映像師としてボランティアで撮影に伺ってもいいのだけれど、、、呼んでもらえないですかw。

◆庵野G/プロット改訂版(13.12月27日版) 庵野秀明、神山健治15780781_1714892585506995_823576598
 『ジ・アート・オブ・シン・ゴジラ』に掲載された最も初期のプロットを読む。引用写真に書かれている「神山版プロット」というのも神山健治監督ファンとしては興味深いが、この掲載プロットは神山監督のクレジットが残った物。

 大きな骨格は完成作品に近い。異なるのは主人公が元総理の息子で、官房副長官から総理代行になること、巨災隊は組織されるがそれが物語の中心にはいないこと、主人公の元彼女が官僚としてGに関わっていること、博士の娘がG退治のキーを握ること。
 『SAC 2nd.Gig』での日米中関係、『東のエデン』で政治家を描いた神山監督の経験が活きている部分かもしれない。

 博士の娘、主人公の元カノ、義母等が出てくるところ、こうした部分は東宝怪獣映画テイストが残っている。こうした情の要素を落としたことで映画のテイストを変えることが出来て正解だったと思える。

 本稿でのクライマックスは放射性熱線照射&飛翔後、分裂しかけて8つの頭を持つG(まさに八岐大蛇)が米中ロの艦隊からの核ミサイル攻撃を受ける。自衛隊とGの熱緑でそれらが撃ち落とされるシーンは、まさに神山監督の前述2作を彷彿とさせる。この展開も映像化されていたら素晴しい物になっただろう。アナザー『シン・ゴジラ』を脳内再生できます。

 以上、本では文字が小さく読めなかったので、iPadで写真にとりPDF化して、拡大しながら読んでみた(^^;)。本には最終決定稿含めあと5本のプロットが掲載されている。

◆G作品プロット案修及び同2 (14.7月7-9日版) 庵野秀明
 実際の撮影を配慮したのか、上で書かれていた派手なシーンがカットされている。
 博士の娘の設定が孫娘に変更。主人公が政治家になりたくなかったが、兄の死で元総理の父親を継いだ。主人公が総理補佐官の設定。不明巨大生物の秘密を探るため、主人公が博士の息子の家を目指していたといった部分が公開版と異なる。
 核攻撃は日本の懇願で待ったがかかり、自衛隊+αによる経ロ投与によりG凍結というプロットとなっている。

◆G作品新プロットメモ2 (15.1月7日版) 庵野秀明
 かなり映画に近いプロット。巨災隊の面々が登場しない所とデテイルがまだ描れていないのが違う位。
 示唆されるゴジラが持ついろんな種の遺伝子。人のそれは「教授の可能性がある」と明記されている。
 大統領特使は祖母が被曝者である設定が出てきているが、主人公の留学時代の恋人の設定。

 あとのプロットは、ほぼ映画の物語のリファインされていく過程なので、ここでは省略。やはり冒頭の「庵野G/プロット改訂版(13.12月27日版)」のクライマックスの奇想炸裂が圧巻。前田真広氏のイメージスケッチを思い浮かべながら読むと、壮大な当初のスケール感ある物語が楽しめる。ただこれは東宝が望むゴジラからはあまりにかけ離れているのと、制作費がさらにかかるのとで、諦めざるをえなかったのではないかと邪推する。

◆庵野秀明インタビュー
 あえて観客の記憶と想像力に委ねるという発言が印象的。
 またミニチュア感による(東日本大震災の)災害イメージの軽減とか、夢と現実の境界でギリギリ夢になるようにするための、車や列車の描写とか興味深い。
 震災に対して、理想を描くエンタテインメントに終始しよう、気持ちいいもの楽しいものだけで構成したら何度でも観られるのではないか(P510)と述べられており、『ヱヴァンゲリヲン新劇場版:Q』での震災の影響を真っ向から受け止めようとして悪戦苦闘した様からの、クリエータとして、吹っ切ろうとする姿勢が印象的だった。

 これを受けての『シン・エヴァンゲリオン劇場版:||』の大エンターテインメントへの回帰(『破』の作風への回帰)を期待。完成が楽しみでならない。

 最後になりましたが、この大部の充実した映画制作ドキュメントを届けていただいた、責任編集の庵野秀明総監督、取材、執筆の氷川竜介さん、中島紳介さん、木川明彦さん、そしてカラーの編集スタッフの皆さんに感謝したいと思います。これは、怪獣映画が進化した瞬間の、貴重な記録です。必読。

◆感連リンク
「ジ・アート・オブ シン・ゴジラ」発売記念プレゼントキャンペーン :EVANGELION STORE

"庵野秀明総監督直筆サイン入り表紙カバーを抽選で50名様にプレゼント!!"

 これ、申し込もうと思ってます(^^)。

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2017.01.23

■情報 VR HMD 比較 FOVE 0 VR Headset 他


FOVE 0 VR Headset Pre-order Trailer - YouTube

"Follow Road to VR:
Twitter: https://twitter.com/rtovr
Facebook: https://www.facebook.com/roadtovr
Google+: https://plus.google.com/+RoadtoVR/"

Home - FOVE Eye Tracking Virtual Reality Headset(公式HP)

"ディスプレイ     WQHD OLED (2560 X 1440)
フレームレート: 70fps     視野角: 最大100度"

 新しいVR用HMD、ヘッドセットがこの1月に発売される。
 スペック等詳細ページは上の公式HP。購入もこちらから$599USDで可能なようです。

 解像度を他機種と比較してみた。

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 FOVE 0 VR Headsetが縦横 約2割づつモニタ解像度が高いことがわかる。この解像度なら片眼あたり、フルハイビジョンの高精細となる。

 PS VRの感想の際に書いたが、特に実写映像等の実景では、PS VRはまだ画素が荒くリアリティを損ねていた。PS VRより縦横ともに33%画素が高精細になっているので、この点は改善されているのではないか、と思われる。

 この機種の特徴である、赤外線アイトラッキングシステ等の効果も期待できそうで、今後、こうした機器の開発競争が進み、素晴らしいVRが実現することを祈るものである。

◆関連リンク
・目の動きを認識できるVRHMD「FOVE」(FOVE 0)とは | Mogura VR - 国内外のVR最新情報
・Oculus Rift、PlayStation VR、HTC Vive、買うならどれ?比較購入ガイド | Mogura VR - 国内外のVR最新情報

 上のグラフを作成するのに、リンク先のVRニュースメディア Mogura VRの記事を参考にさせて頂きました。このサイト、VRファンとしては見逃せません。

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2017.01.18

■情報 『TRIBUTE TO OTOMO: トリビュート トゥ オオトモ』 大友克洋リスペクト 展覧会と図録

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図録『TRIBUTE TO OTOMO』
講談社 公式HP

"2017年の「アングレーム国際漫画祭」開催日に、フランス版・日本版を同時発売!"

図録「TRIBUTE TO OTOMO」岸本斉史、貞本義行ら約80名が参加 大友克洋の世界を描き下ろし | アニメ!アニメ!

" フランスで開催される「アングレーム国際漫画祭」開催日である2017年1月26日に発売される。この「アングレーム国際漫画祭」は、フランスのアングレーム市で行われるバンド・デシネのイベントで、1974年より開催されている歴史あるマンガの祭典だ。

 浅田弘幸、江口寿史、五十嵐大介、上條淳士、桂正和、岸本斉史、松本大洋、望月峯太郎 村田蓮爾、弐瓶勉、貞本義行、士郎正宗、田島昭宇、高野文子、竹谷隆之、谷口ジロー 寺田克也、浦沢直樹、吉田戦車とマンガ家からイラストレーター、キャラクターデザイナーと幅広く、ジャンルも様々だ。B4サイズ168ページというボリュームで、価格は5,000円(税別)である。"

 フランスの「アングレーム国際漫画祭」にて展示される大友克洋のトリヴュート展について情報をまとめる。まず冒頭のリンクは、講談社で出版される日本版図録。
 そして「アニメ!アニメ!」のサイトには日本人の参加作家の紹介がある。
 全員で80名の作家が参加しているということだが、そのうちの日本人が上記引用。
 次に「アングレーム国際漫画祭」の展示会場風景とフランスを中心にした海外作家の紹介。

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【展覧会】TRIBUTE TO OTOMO 大友克洋オマージュ展
- アングレーム国際漫画フェスティバル 日本語ブログ【公認】

"参加作家リスト

Virginie Augustin, Bannister, Dominique Bertail, Matthieu Bonhomme, Aleksi Briclot, Francesco Cattani, Lorenzo Ceccotti, Merwan Chabane, Olivier Coipel, Luigi Critone, Simone D’Armini, Ludovic Debeurme, Benoît Feroumont, Manuele Fior, Juan Gimenez, Joël Jurion, Jean-Philippe Kalonji, Viktor Kalvachev, Nicolas Keramidas, 金政基(キム・ジョン・ギ ), Olivier Ledroit, Stéphane Levallois, Li-An, Liberatore, Julien Loïs, Vincent Mallié, Dilraj Mann, Stan Manoukian, Thierry Martin, Laureline Mattiussi, Hugues Micol, Timothée Montaigne, Nicolas Némiri, Vincent Perriot, Gloria Pizzilli, Victor Santos, Stan Sakaï, Otto Schmidt, Guillaume Singelin, 谷口ジロー, Lucio Villani, Vince

展覧会の図録『TRIBUTE TO OTOMO』シリアルナンバー入り限定999部、表紙は大友克洋による描き下ろしイラスト(27.5 x 32cm、88ページ、29ユーロ)がフランス版『AKIRA』発行元のグレナ社が出版、同社が運営するパリのギャラリー Galerie Glénat で2月2日から販売。 なお、出品イラストは6月8日〜28日、パリ・Galerie Glénat で展示・販売される予定。"

 図録はシリアルナンバー入りの999部限定版と普及版があるようだ。
 限定版はパリのギャラリーでの販売のみのようであるが、詳細はGalerie Glénat公式サイトあたりで探してみるしかないです。フランス語なので私はお手上げ(^^;;)。

 次に引用したのは、展示会の様子を紹介した公式動画。
 これは日本でもぜひ開催して欲しいものです。
 

FIBD2016 - Hommage à Katsuhiro Otomo - YouTube

 現時点でネットで観られるトリビュート作品は以下のギャラリーの絵画販売サイト(今は購入できないようです)と、Google画像検索で確認ください。
Votre recherche pour otomo - Galerie Glénat
 グレナギャラリー 絵画検索「OTOMO」。

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TRIBUTE TO OTOMO - Google 検索
 なかなか興味深い絵があります。

『TRIBUTE TO OTOMO』(Amazon)
 1/27の発売は、Amazonでも扱いがあります。

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2017.01.16

■感想 黒沢清監督『クリーピー 偽りの隣人』


黒沢清監督『クリーピー 偽りの隣人』予告編 - YouTube

 黒沢清監督『クリーピー 偽りの隣人』ブルーレイ初見。
 日本のどこにでもある住宅街を舞台に、黒沢節が炸裂し、異常な不安感に満ちた映像描写が素晴らしい。

 ストーリー運びやキャラクタのセリフの不自然さ等、通常の作品批評の文脈で観ると荒く感じる部分がいろいろとある。しかし黒沢が描きたいのは恐らくそんなものでは決してない。この作品が描きたいのは冒頭で述べた異常な不安感を、映像として写し込み、映画館の観客を異次元に運ぶことだけである。そのために必然的にいびつに描かれる物語とキャラクターと映像演出、そして音楽。

 主要人物を描写する、その背景にいるエキストラの動きに顕著だけれど、隅々までその不安感を観客の無意識に対して叩き込むような映像描写になっている。照明と風とカメラの視点移動。恐ろしくスクリーンの奥から響いてくる音楽と音響。

 精神的に歪んだ隣人を中心にして、人間のいびつさをこれでもかと描くテーマの映画で、映像と音響が最大限の効果を発揮する様が見事にこのブルーレイに焼き付けられている。

 従来、安易な映像批評は、文学に対して映画は目の前に固定した画像を提示してしまうために、文学の想像力に及ばない、と言ってしまうことがある。だけれども文学が直接的に文字で表現する心象を、映画はこうした映像と音響で観客の想像力に委ねる比率が高いため、容易に文学を凌駕する場合がある。

 この黒沢映画は、まさにそんな一本である。

◆関連リンク
・当ブログ記事 黒沢清 関連 検索

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2017.01.11

■感想 瀬下寛之総監督 安藤裕章監督『亜人』


TVシリーズ「亜人」第2クール番宣CM(angela×fripSide) - YouTube

 瀬下寛之総監督 安藤裕章監督『亜人』第2クール、終わりましたね。素晴らしい緊迫感溢れるシリーズでした。

 第1クールが亜人の生態と永井と佐藤の非人間性を中心に描いたのに対して、今回は日本(米国),永井 VS 佐藤の戦いに集約して虚々実々の肉弾戦兵器戦を見事に描ききってました。

 クライマックスの盛上りも秀逸で、第3クールへの引きも充分。毎週テレビでこれだけの迫力を注入されると、このシリーズのない日常はアドレナリンが足りず耐えられません(あの音楽は麻薬的)(^^;)。

 今日、桜井画門の原作漫画8,9巻を読んだのだけれど、テレビシリーズの方が、物語演出ともに相当上を行っている感じ。攻めと守りの頭脳戦とその規模の拡大でアニメ版のスケールが凄い。

 加えて大友克洋似の桜井漫画描写も良いのですが、ポリゴンピクチャーズの作画が素晴らしい。亜人という非人間を描くテーマに、セルルック3Dアニメのリアルな人体描写と少しだけ自然でない動きが見事にマッチしている。
 作画のレベルで考えると、2D手描き作画の沖浦啓之、本田雄といったスーパーアニメーターと呼ばれる方々の硬質な人物の動きに少し近いような気がする。それがコンスタンスに作成されているこの手法の今後の発展に期待です。

 来年はこのスタッフ+脚本虚淵玄による『GODZILLA』の登場。見逃せません。

◆関連リンク
CGプロダクション向けフィニッシングセミナー~ポリゴン・ピクチュアズ 『亜人』メイキング、FlameとSmokeでクオリティアップ~ | Meet the Experts オートデスク ウェビナー | AREA JAPAN

"2016 年 9 月 2 日(金)に開催した「CGプロダクション向けフィニッシングセミナー~ポリゴン・ピクチュアズ 『亜人』メイキング、FlameとSmokeでクオリティアップ~」をオンデマンド配信でご覧いただけます。

CGプロダクションの皆様向けに、ポリゴン・ピクチュアズ ショット部エディットグループのクリエーターの方をお招きして、Autodesk Smokeを活用したアニメ『亜人』のメイキングについてご紹介します。
12 月 15 日(木)までの限定配信となりますので、お早めのアクセスをお願いします。 皆様のご視聴を心よりお待ちしております。"

大ヒット公開中『亜人 -衝動-』FXスーパーバイザー秋山知広氏による3DCG<エフェクト×Houdini>メイキングセミナーを開催|デジタルハリウッド株式会社のプレスリリース.

"■秋山 知広氏/FXスーパーバイザー (デジタルハリウッド[専門スクール]卒業生) 1979年生まれ。ポリゴン・ピクチュアズ所属。2006年よりFXグループリーダーとしてチームを束ねながら、エフェクトスーパーバイザーとして多くの映画、TV、ゲーム映像などの案件に関わる。 代表作は「ストリートファイターⅣ」「GHOST IN THE SHELL / 攻殻機動隊2.0」「Tron: Uprising」など。 最新作の 劇場アニメ3部作 第1部『亜人 –衝動-』では、形状が常に変化し続ける特殊なキャラクター<IBM>のアセット開発と、Houdiniパイプライン開発を担当した。"

Shotgun がプロジェクトを救う:第6回:国内導入事例を徹底取材 Case3:ポリゴン・ピクチュアズ 〜インハウスツールをShotgunへつなぎ、大量データの一元管理と二次利用を実現〜 | 連載 | CGWORLD.jp.

"TVシリーズのような大型プロジェクトは、膨大な量の情報やデータを扱います。1エピソードの平均ショットが300として、1期12話でショット数は3,600、アセットも何千という数にのぼります。それらを管理するため、SVとPMたちが各々の立場で工夫を重ねてきたので、多種多様な使い方、見え方のGoogleスプレッドシートが生まれました。"

CGWORLD (シージーワールド) 2015年 12月号 vol.208 (特集:アニメ『亜人』、達人たちのコンポジットワーク) | |本 | 通販 | Amazon.

"第1特集 アニメ『亜人』 11月より劇場3部作の第1部が公開、また来年1月よりTVシリーズの放映も予定されている一大アニメプロジェクト『亜人』。 決して死ぬことのない亜人と人類との戦い、亜人のもつ特殊な能力「IBM」の表現など映像化は困難と言われていた本作のアニメ化に、『シドニアの騎士』シリーズで国産アニメCGの新たな可能性を示したポリゴン・ピクチュアズ(PPI)が挑む。 Direction&Production Design 企画・演出・プロダクションデザイン Production Pipeline プロダクションパイプライン Part 1 キャラクターデザイン Part 2 ストーリーリール Part 3 アニメーション Part 4 エフェクト Part 5 背景"

単行本発売記念】大童澄瞳×りょーちも、魂のアニメ対談!【映像研には手を出すな!】 - コミスン(comic soon)

"ちも 『亜人』を作ったときに確信めいたものがあって。いままでアニメを作っていて、こう撮りたい、ああ見せたいというのしかなかったんです。『亜人』では、このシーンにはカメラを何台もっていく、このロケ地に何台カメラを用意できるかという発想を獲得できたんです。実際にそのシーンを撮る時のリアルが今までなかったんですよ。絵だからどうやっても録れたんです。それが限られたカメラを考えて配置して、それで撮ったものを編集すると、かっこいい。アニメ関係ない!かっこいいって。

大童 『亜人』を観たときに、いままで観ていた日本のCGアニメと違うところで、別の何かが動き出したなって。

ちも あれは、実写のドラマがアニメに進出したような感じの視点の設計で見たんですよ。どちらからでもアニメは作れるよ、アニメは見せ方のただの副産物ですよという方向性が仕掛けられたので、この方法は攻めれるぞって。"

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2017.01.09

■情報 簡単パノラマVR写真 | Entapano VR

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魚眼レンズ一体型カメラ Entapano 2| Entaniya

"Entapano 2はシャッターボタン1つで水平視野250°の超広角な魚眼写真を撮影できるカメラです。 たった一枚の写真で目に入る全ての景色を写すことができます。

Entapano 2で撮影した写真は「Entapano VR」に登録すると グルグルと動かせる臨場感たっぷりのパノラマ写真として楽しめます。 パノラマ変換サービスのEntapano VRは無料でご利用いただけます"

 VR写真を1ショットで撮れるカメラ Entapano 2 のモニタ品を株式会社インタニヤさんからお借りしたので、その使い心地と撮影したVR写真をご紹介します。

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Entapano VR butfilp(究極映像研究所)
 こちらに僕が撮影したVR写真が掲載されています。

 現時点、近所の飛騨木曽川国定公園で手頃に撮影してきた試し画像だけなので、以下のように川の岩場という地味な画像ばかりですが、この点はご容赦ください(^^;)。将来的にはいつもこのブログで紹介しているような、美術展(主に立体造形物)とか建築物を撮って、掲載していきたいと思っています。

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 まずはVR写真の撮り方。
 サンプル提供いただいたカメラEntapano2で撮影した画像は、PCで読み込むと以上のように魚眼レンズにより円形のものになっています。

 Entapano VRのサイトでアカウントを登録すると(メアドのみで無料で設定可能)、上の写真をVRサイトにアップロード可能。その際に自動的にVR画像に変換してくれます。そのVR画像は以下。

 この写真は、マウスで操作すると周辺画像が見渡すことができます。
 スマホでアクセスすれば、スマホを持つ角度を変えるだけであたかも周囲を見回している感覚で画像が動きます。もちろんそのスマホをヘッドマウントセットに装着すれば、頭の向きを変えただけで周囲を見回すことが可能。

 これだけ簡易的にVR写真が撮れると今後のVRの可能性が広がりそうです。インスタグラムのような交流サイトでVR写真がやりとりされるようになると、SNSとしての臨場感が上がり、よりコミニュケーションが進むような気がします。

 ただ、自分の興味で書くと、、、今は撮れるのは2D写真のみ。僕はもともと立体写真が好きなので、いずれ近い将来、このような簡易的な方法で立体3D VR写真(もしくは動画)が撮れるようになるのを期待したいと思います。

 最後になりましたが、モニタ品貸し出しでお世話になった株式会社インタニヤの皆様に感謝したいと思います。どうもありがとうございました。次回はもう少しVRとして見栄えのする写真を撮ってきたいと思いますので、まずはご容赦ください。

◆関連リンク
簡単パノラマVR写真でPR | Entapano VR モニタ募集 200名までとのことです。まだ現時点では受け付けられていますので、興味ある方はリンク先で詳細確認を。
ENTANIYA コンパクトデジタルカメラ 超広角魚眼レンズ一体型カメラ Entapano 2(Amazon) こちらでカメラが発売されています。

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2017.01.05

■新年ご挨拶 映像悦楽共犯者

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 新年あけましておめでとうございます。

 本年も皆さんと映像の「悦楽共犯者」として楽しんでいきたいと思いますので、よろしくお願いします(^^)。

 本業が忙しくなってきて、昨年後半から、更新頻度が週一に落ちていますが、なんとか週二に復活したいと思っていますが、、、どうなりますやら(^^)。

 Facebook(奇映輝名義)ではブログ記事の卵(情報の元ネタ)を、週二以上は発信しているので、情報量は今までのブログ記事より薄いですがそのまま転載して記事数を維持することも考えたいかなw、と。

 待望のヤン・シュヴァンクマイエル新作は、今年でなく来年の予定ですが、とにかく完成に至って頂きたいものです。その前に今年は『ツイン・ピークス』新シリーズ(前作デイヴィッド・リンチが監督!!)があるので、そのあたりで盛り上がれたらいいなあと思ってます。

◆関連リンク 当ブログ記事
・情報 ヤン・シュヴァンクマイエル監督『蟲』ファーストテザー & クラウドファウンディング Jan Švankmajer - Insects 2018 first teaser & Cloud Faunding

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