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2017.04.17

■感想 ルパート・サンダース監督『ゴースト・イン・ザ・シェル : Ghost in the Shell』


Ghost in the Shell - SUPERCUT - all trailers & clips (2017) Scarlett Johansson - YouTube
 ルパート・サンダース監督『ゴースト・イン・ザ・シェル』IMAX3D 吹替版を109シネマズ名古屋、最前列中央で堪能。
 吹替版が素晴らしい。まるで素子とバトーとトグサが義体を変えて、IMAXスクリーンに登場したみたいな錯覚。
 予告篇からある程度は予想していたけれど、これほど押井守愛に満ちた映画とは想像してませんでした。まさに『ゴースト・イン・ザ・シェル』リメイク。ガジェットやエピソードに宿る押井守。
 前半の街の映像とかは士郎正宗リスペクト。漫画チックな立体デジタルサイネージが士郎チックな雰囲気を醸し出している。
 そしてクライマックスの情動は神山健治SEC 2ndの魂が宿っている。空を、巡行ミサイルが飛び交っていたらもっとジンとくるけど…(^^)。

 押井ファン、アニメ攻殻機動隊ファンには、リスペクトに満ちた素晴らしい映画であるが、残念ながら一般映画ファンに対してはいささか満足できない部分があるのでないか。

 押井ファン、攻殻ファンとしても欲を言わせてもらうと、もう少し策謀部分を緻密に作り込んで欲しかった。カッター社長がなぜあんな危険を冒してまで自らの手を汚しているか。久世の目的も復讐だけなのか。
 もっと裏の策謀が描かれ、9課が追う理由と緊迫感があったら、映画はさらに素晴らしいものになっていたのではないか。

 最後にジョーダン・ヴォート=ロバーツ監督『キングコング : 髑髏島の巨神』に続く、プライムフォーカスによる2D-3D変換について。
 特に素晴らしかったのは、スカーレット・ヨハンソンのアップの3D質感。最高の少佐が描かれたと押井監督も評価したというスカーレット・ヨハンソン。アップのシーンの眼とか顔の輪郭が迫真の少佐像を構築していて、僕もとても魅かれました。

 プライムフォーカスの3D変換は、『キングコング』よりは立体視を意識したシーンが少なく、若干残念感もぬぐえませんが、ラストの水の描写等、3Dらしい良いシーンもあり、鮮明なIMAX 3Dには感嘆しきりでした。吹替3D IMAX、4/20までの限定公開らしいがお薦めです。



★★★★★★ 以下、ネタバレ注意 ★★★★★★

 押井愛を感じるシーンは、バトーによるバセットハウンド犬 ガブリエルへの給餌シーン。
 そして香港のスラム街の上空を飛ぶ有翼機。ガラスを割って銃を構え、テロの現場に飛び込む少佐。そうしたどこかI.G作品で観たシーンが、実写3Dで大画面に描かれるとファンとしては、涙が出そうになりますw。

◆関連リンク
109シネマズ名古屋 上映スケジュール | 109CINEMAS
 ゴースト・イン・ザ・シェル[IMAX3D・吹替] 4/14(木)〜4/20(木)のみの上映


Ghost in the Shell - Bloopers


『ゴースト・イン・ザ・シェル』 | 押井守 特別映像 - YouTube

魂が入ったアニメーション――押井守が語った実写「攻殻機動隊」の不思議な感覚と素子に残る“引っ掛かり” - ねとらぼ.

"押井 ラッシュを見たとき、ヨーロッパ風の格調高い映像で「なかなかいいな」と。
 その後試写に入ったらメガネ渡されたんで、どうなっちゃうのかなって。正直、最初の10分くらいは、違和感の塊だった。当たり前だけど、立体になると空気感とか消し飛んじゃうから。多分、立体視で見るのか、2Dで見るのか、IMAXで見るのかで随分印象が変わると思う。僕は興味があるので全部試してみるつもりだけど。  立体に関して言えば、引き(の絵)は完璧にアニメーションにしか見えなかった。(キャラクターに)寄っていくと、シームレスに実写になっていく。実写って言い方は正しくないな。魂が入ったアニメーション。とても不思議な体験だった。

押井 普通、3DCGのキャラクターって、リアルになればなるほど、いわゆる不気味の谷で気持ち悪くなって、僕は“死人が踊っている”といったりもしたけど、ある種不気味さが出てくる。ところが、(ゴースト・イン・ザ・シェルは)役者が演じているから、セットアップに切り替わっていくと、今までCGにしか見えなかったキャラクターにフワッと魂が入ってくる。確かにここにいる人間には“魂”が、攻殻の世界で言えば“ゴースト”を感じる。それは今まであまり見たことがないから、とても不思議な気がした。

 よくできた3DCGのアニメーションは幾つもあるわけだけど、それにはもちろん魂を感じたことはない。どこまでリアルになっても記号でしかないから。実写映画というのは逆に言えば、キャラクターだけじゃなく“空気”にも魂が漂っている。恐らく、(『ゴースト・イン・ザ・シェル』は)結果としてそうなったんじゃないかと思うけど。

―― 結果として?

押井 ああいう表現になることを想像して、それを目指して作ったとは思えない。映像を作り込んでいった結果、そういう表現が出現してしまった。アニメーションにはよくあることなんだけど、表現って意地になって徹底して作り込んでいくと、画面にとんでもなく予想外のもの――“怪物”とも呼ばれることがあるけど――が立ち現れてくる。

 実写というのは良くも悪くも、ある種のフィルターが掛かるので、表現が突出することは普通はない。CGや合成を使って作り込んでいけば行くほど、ある種別なものが映っちゃう瞬間がある。僕も何度か経験したことがある。モノだと思っていたものに魂が入っちゃったり、逆に魂のあるものが無機物になっちゃったり。その瞬間に立ち会ったような気がした。"

 とても興味深いので、長文引用させて頂きました。まだ全体は長いので興味が湧いた方は是非リンク先へ。
 立体視映画でこそ、空気が映像に映り込む、と思っている僕は異論もありますが、何か不思議な雰囲気が宿った映画であるのは、僕も感じました。その正体が何かはまだよくわかりません。

 

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