■感想 黒沢清監督『ダゲレオタイプの女』
黒澤清監督がフランスでフランス人スタッフと撮った昨年の作品を、WOWOWの録画で観た。いつもの黒沢映画の雰囲気を感じる部分と、欧州映画としてみえる部分と複合した新しい黒沢映画の誕生といった感じである。
まずダゲレオタイプの写真撮影風景がいい。
上の予告篇にあるように、銀板に映像を定着させるために1-2時間の間、人を静止させるなければいけない。それを補助するための器具で、人の体の線に沿って、身体の位置を支持するシーン。予告篇冒頭にあるように、撮影助手の主人公が、写真家の娘でモデルを務めるマリーの身体を固定する。その際のマリーの吐息のエロティックさが、この器具を介した二人の男女の関係を映画に定着させている。
長時間の不自由を強い、身体のある種の限界を引き出していくことで、その生命の一部が写真に奪われていくような描写が秀逸である。
写真/映像が持つ魔術的な側面をうまく映画に焼き付けている。
この人体から魂の一部を抜き取るようなダゲレオタイプの描写が、続くシーンでの幽体の存在感を醸し出している。いつもの黒沢映画での、そこに佇む幽霊の姿が、フランスという異国の地の背景と、ダゲレオタイプという不思議な映像装置により、いつもと違った雰囲気になっている。日本の湿った感じの方が良いような気もするが、、、。
物語は後半急転。
どちらかというと前半が好みだけれど、主人公の見る幻がどこからどこまでなのか、判然としない様子が映画の余韻になっていて、若干無理のあるストーリー(不動産絡みのネタと銃は出さなくても良かったような、、、)だが、映画としての奥行きが獲得できている。
『散歩する侵略者』、上映が終わらないうちに、ちゃんと観に行かなくては。
・daguerréotype - Google 検索
いにしえのダゲレオ写真がいろいろと眺められます。
・当ブログ記事
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