« 2017年8月 | トップページ | 2017年10月 »

2017年9月

2017.09.27

■感想 黒沢清監督『ダゲレオタイプの女』


『ダゲレオタイプの女』予告編 - YouTube

 黒澤清監督がフランスでフランス人スタッフと撮った昨年の作品を、WOWOWの録画で観た。いつもの黒沢映画の雰囲気を感じる部分と、欧州映画としてみえる部分と複合した新しい黒沢映画の誕生といった感じである。

 まずダゲレオタイプの写真撮影風景がいい。
 上の予告篇にあるように、銀板に映像を定着させるために1-2時間の間、人を静止させるなければいけない。それを補助するための器具で、人の体の線に沿って、身体の位置を支持するシーン。予告篇冒頭にあるように、撮影助手の主人公が、写真家の娘でモデルを務めるマリーの身体を固定する。その際のマリーの吐息のエロティックさが、この器具を介した二人の男女の関係を映画に定着させている。

La_femme_de_la_plaque_argentique

 この長時間の人体の固定により、銀板に人は露光され写し取られる。
 長時間の不自由を強い、身体のある種の限界を引き出していくことで、その生命の一部が写真に奪われていくような描写が秀逸である。
 写真/映像が持つ魔術的な側面をうまく映画に焼き付けている。

 この人体から魂の一部を抜き取るようなダゲレオタイプの描写が、続くシーンでの幽体の存在感を醸し出している。いつもの黒沢映画での、そこに佇む幽霊の姿が、フランスという異国の地の背景と、ダゲレオタイプという不思議な映像装置により、いつもと違った雰囲気になっている。日本の湿った感じの方が良いような気もするが、、、。

 物語は後半急転。
 どちらかというと前半が好みだけれど、主人公の見る幻がどこからどこまでなのか、判然としない様子が映画の余韻になっていて、若干無理のあるストーリー(不動産絡みのネタと銃は出さなくても良かったような、、、)だが、映画としての奥行きが獲得できている。

 『散歩する侵略者』、上映が終わらないうちに、ちゃんと観に行かなくては。

20170924_213322

・daguerréotype - Google 検索
 いにしえのダゲレオ写真がいろいろと眺められます。
・当ブログ記事
 黒沢清 当ブログ関連記事 - Google 検索

| | コメント (0)

2017.09.25

■感想 『ツイン・ピークス The Return』(Season 3) 2017 第9話

Hudson Mohawke - Human (Twin Peaks clip) - YouTube

 1週飛んで第8話から2週間空けて放映された第9話。
 今回は前回でシュールな映像爆撃を終了したからか、映像的には大人しく、今回は物語を進める回の位置付け。各地各登場人物の物語が並行して語られ、そして謎の一部がわかるとともに、次の謎が提示される。




★★★★★★★ネタバレ注意★★★★★★★★★★★★★



20170924_193651down

The Search For The Zone

 リンク先は、ヘイスティング元校長がルース・ダベンポートと作っていた異次元研究サイト「異次元を探せ」HP。なんとも懐かしいサイトデザインで、妙に落ち着いたりww。1997年にスタートしたサイトとのこと。校長先生が顔写真載せてこんなページ運営してていいんでしようか...(^^;)。

 今回第9話は、衝撃の8話で描かれた不思議な空間が、ブリックス少佐とヘイスティング元校長につながって、「異次元」と名付けられて物語に回収されていく。

 リンク先を見ると、ヘイスティングがムー的な謎の世界に惹かれていたのと同時に、SF作家 ロバート・A・ハインラインのファンということが分かる。
 僕はハインラインのよい読者じゃないんですが(『宇宙の戦士』とジュブナイルくらいしか読んでない)、あまり異次元もの書いてた印象はないのだけど…。

Img_8248

 今回、映像的には奇想は潜められたのだけど、悪ダギーの血まみれの登場姿は、迫力だった。今後、このワイルドなドッペルギャンガーな男とダギーとして静かな男に転生したクーパーの、直接対決はあるんだろうか。あと9話分に想像が広がる。

21765019_1871972869798965_139255710

 9話ではヘイスティングが取り調べにおいて書いた日付が9/20、「異次元を探せ」サイトの最終更新はその2週前の9月初旬と設定されている。
 ただ「異次元を探せ」サイトのLast Update は2015年11月…。
 まあヘイスティングのサイトのメンテが悪いだけという可能性が高いが…(^^)。 シーズン3はいったい何年の設定なのか??

21686380_1871974096465509_803025693

 日付けに関してもう一つ。このメモのシーンでは2日後が10/1と言っている。
 上と比較すると、ツインピークスの町とサウスダコタバックホーンのシーンは同時進行ではないのか、時空がねじれてるのか? ここらも今後の伏線なのかもしれない、がただいい加減なだけかもw。

22007587_1871974363132149_151650843

 ちなみに、も一枚のメモ。
 この数字の羅列が転移するための座標なのか??
 劇中では「クーパーが2人」と言っていたが、このメモには3人目のクーパーの名「coo..」も書かれてるように見える。
 人のクーパーとは、金の球体になった本物、緑の背広が似合うダギー・ジョーンズも。クーパーに数えられるということだろうか!?
 謎が謎呼ぶ、混迷の第9話。続きがさらに楽しみである。

◆関連リンク


Au Revoir Simone - "A Violent Yet Flammable World" (Twin Peaks 2017) - YouTube 3人の女性ボーカルのさわやかなエンディングでした。特に腋の下をバリバリ搔き毟る野卑な女の子のシーンの後だったからw。あの痒みの奥に、「Frog Moths : 蛙蛾」が蠢いていたら、、、。ひぇ〜〜。

当ブログ記事
感想『ツイン・ピークス The Return』(Season 3) 2017 第8話
感想『ツイン・ピークス The Return』(Season 3) 2017 第6話
感想『ツイン・ピークス The Return』(Season 3) 2017 第5話
感想『ツイン・ピークス The Return』(Season 3) 2017 第4話
感想『ツイン・ピークス The Return』(Season 3) 第3話
動画『ツイン・ピークス』ペンデレツキ「広島の犠牲者に捧げる哀歌」
感想『ツイン・ピークス The Return』(Season 3) 第2話
感想『ツイン・ピークス The Return』(Season 3) 第1話

| | コメント (0)

2017.09.20

■感想 『ツイン・ピークス The Return』(Season 3) 2017 第6話


Sharon Van Etten - Tarifa (Twin Peaks 2017) - YouTube

 前回の記事、なかなかの衝撃で8話をレビューしましたが、2話分飛ばしてしまったので、順番が逆になりますが戻ってまずは6話の感想です。
 



★★★★★★★★★★ ネタバレ注意 ★★★★★★★★★★




 

 今回の見どころは何と言っても、あのダイアンがついに画面に登場すること。
 シーズン1,2でクーパーの口述筆記の相手としていつも名前のみ登場(映画『ローラ・パーマー最期の七日間』ではクーパーが部屋越しにダイアンへ話しかけるシーンがあったが姿は見せなかった)、もしかしたら架空の存在じゃないかとも言われていた「ダイアン」がテレビ映像として現実化する。

 アルバートが 夜のMax Von’s Barで声をかけて振り向くその女性は、、、、。まさかのあの女優のこの役での登場に吃驚するとともに、確かにこの方しかないかもしれないという思いも。今後の彼女とクーパーの絡みもとても楽しみになりました。そしてダイアンが噂だけ聞いていたRRダイナーのチェリーパイとコーヒーを味わうことがあるのかどうかも注目(^^)。

 そして強すぎるお母さん、ナオミ・ワッツ!(^^) ギャングを叱り飛ばし、借金を半分に値切るしっかりものw。

 現在、ナオミ・ワッツ、48歳なんですね。カイル・マクラクランは58歳。役の上での年齢設定は不明だけど、少しぼやっとしてるっぽかった(クーパーに置き変わる前の)ダギーには、ひと回りくらい年齢が下な奥さんが合うのかも(^^)。
 結構母性本能をくすぐるタイプと推定(^^)。赤ちゃん化しても、全く別人と思われないのは、もともと頼りないタイプでないかとw。

 それにしてもダギー・クーパーはいつ元のクーパーに戻るのであろうか。
 RRダイナーのチェリーパイとコーヒーを食して元に戻るに1票(^^)。あるいはアニーとの再会か(と急に真面目になる)。

 先日惜しくも亡くなってしまった名バイプレイヤー ハリー・ディーン・スタントンの登場も嬉しい。そして『ローラ・パーマー最期の七日間』に出てきたファット・トラウト・トレーラハウスの謎の電信柱も出た。324810と6の番号の謎。

 そしてリチャード・ホーンとヤクの取引で揉めるバルサザール・ゲティ演じるレッドという男。この男の使う超能力の描写が今後どう活きてくるか。
 この超能力を見て僕はトレモンド夫人の孫かもと思ったんですが、どうなんでしょう。
 このバルサザール・ゲティの実年齢は42歳。『ロストハイウェイ』にも出てた役者らしいが、年齢から考えるとトレモンド孫には少し老けすぎかも。
 この2人の行っちゃってる噛み合わない会話がリンチ的で怖い。

 それにしてもこの後のリチャードの行動は、酷過ぎ。 ググるとリチャード役のEamon Farrenは、1985年生まれで32歳。ホーン姓から考えると、オードリーの子の可能性もあるが、年齢的には少し年で合わないか。年齢からは、ベンがよそで作った子という線もあるのかもしれない。

 冒頭に引用した今回のバンバン・バーの曲 Sharon Van Ettenの "Tarifa" ほんと、リンチの音楽趣味は良い! 僕はリンチのサントラ聴きすぎて、リンチ音楽脳に矯正されてて既に客観視点は持てないのだが…(^^;;)

 今回、さらに物語の展開より、情感質感の描写が増えてる印象。リンチのアート思考の強化と『ツインピークス読本』にあった老人化によるスピードの遅速化があるのかもしれない(^^)

  今回ラストが特に通常の連続ドラマ的でなく途中ぶつ切り感があった。フランク・トルーマン保安官と妻ドリスの息子に関するエピソードで終わるという途中感。最後のロードハウスでの歌 "Tarifa" がなかったら本当にブツギリ。

 このエンディングのアイデアも、全18時間あまりの大長篇を切り分けて放映するにはナイスな考えだったわけだ(^^)。

◆関連リンク
本エピソード wiki
感想『ツイン・ピークス The Return』(Season 3) 2017 第8話
感想『ツイン・ピークス The Return』(Season 3) 2017 第5話
感想『ツイン・ピークス The Return』(Season 3) 2017 第4話
感想『ツイン・ピークス The Return』(Season 3) 第3話
動画『ツイン・ピークス』ペンデレツキ「広島の犠牲者に捧げる哀歌」
感想『ツイン・ピークス The Return』(Season 3) 第2話
感想『ツイン・ピークス The Return』(Season 3) 第1話

| | コメント (0)

2017.09.18

■動画 オリビエ・デ・サガザンの新作「Gareth Pugh S/S 18」


Gareth Pugh S/S 18 - YouTube (★かなりショッキングですので自己責任で★)

" ‘This is not a show.’ Nick Knight and Gareth Pugh offer an exclusive visual insight into Pugh’s S/S 18 collection presented here as fashion film. In collaboration with philosophical artist Olivier de Sagazan, Pugh explores the extremities offered by the elements and the raw physicality of humanity."

 以前に紹介した粘土を顔や体に塗りたくって人体変容をパフォーマンスするフランスのアーティスト オリヴィエ・デ・サガザンの新作の衝撃。(冒頭1/3ほどがサガザン作品。サムネイルの赤い服のアートは別の方の作品です)。

 WOWOWでリンチ『ツインピークス』放映のない今週は、このシュルレアルで抜けた穴を埋めて下さい(僕だけか...(^^;))。

 今回の新しさは、二人の人間による粘土を用いた人体変容。
 ふたりの男の頭が融合し分離したり、合体した上で大きな口が開いたり、そして後半の腹部の拡大とその中へのダイブ。特にこの後半はなかなかの衝撃度。

 セクシャリティの問題と生命の根源みたいなものがゴチャ混ぜになった面妖さ。僕にはここのシーン、相当の衝撃だった。皆さんの感想も是非お聞かせください。

◆関連リンク
Olivier de Sagazan "performance O de Sagazan 08" オリビエ・デ・サガザン 人体変容パフォーマンス:Performance Transfiguration
サガザン 当ブログ関連記事 Google 検索

| | コメント (0)

2017.09.11

■感想 『ツイン・ピークス The Return』(Season 3) 2017 第8話


The Nine Inch Nails in Twin Peaks - YouTube

 ついに放映された北米で話題騒然の第8話。まさに噂に違わぬ問題作。
 想像を絶する混沌と闇。これはデイヴィッド・リンチの実験映画としての最高傑作かもしれない。
 これを連続ドラマの一本として放映したというのは正に事件。
 例えるなら、『宇宙家族ロビンソン』(もちろんもっとダークだけど...)のある回が、突然『2001年宇宙の旅』を放映してしまったような...w。

 そしてニューメキシコのホワイトサンズで1945年に実施された人類初の核実験であるトリニティ実験 (Wikipedia)の原爆爆発シーン、『幻詩狩り』のように言葉による死者。
 悪の存在が伝播するその様は、SFとして観ても、相当ハイレベルな出来になっていると思う。
 

★★★★★★★★★★ ネタバレ注意 ★★★★★★★★★★




 冒頭に引用したトレント・レイズナーによるノワールな一曲「She’s gone away」。この後、以前記事に書いたペンデレツキ「広島の犠牲者に捧げる哀歌」をBGMにしたデイヴィッド・リンチ渾身の原爆映像が流れる。

20170910_213539

 この取り合わせのなんたる破壊力。この第8話の白眉のシーン。このペンデレツキの曲と映像は、『2001年宇宙の旅』のクライマックスのジョルジュ・リゲティ『アトモスフェール』に匹敵するかと。

 しかもその後も実験映像は続く。
 今回は、CGをリンチが縦横無尽に使うとこういう映像が創造されるという回だった。以前はデジタル(正確にはフィルムに対するデジタル撮影のことを言っていたのだけど...)を否定していたように思うけれど、密かにこんな企みをしていたわけだ。

 蛙蜚蠊蝗という不思議な生物とか、空中に生まれるボブとか、そしてホワイトサンズでのあの業火の描写とか。もうひとつ美しかったのが、原爆シーンのあとに流れた海の映像とそこにある孤島とその上に立つドイツ表現主義風の白い建物とその内部。

 ここに居るセニョリータ・ディド(Senorita Dido)と巨人。
 オペラ座のようなステージがある広大な部屋と、そこに置かれた鐘と、そしてスクリーンに映し出されるトリニティ実験とその渦中でのボブの誕生(?)。

21369309_1865581450438107_102742804

 ここの部屋の床の表現も素晴らしい。なんなのだろうあの不可思議で魅力的な文様。みてるだけでワクワクするあの映像。そこを基調として描かれるステージ上空の歯車と巨大な管楽器。そこに現れるローラ・パーマーの黄金球体。素晴らしいイマジネーションの飛躍である。ここで『ツインピークス』の本当の物語が始まったのかもしれない。

 8話を観終わって解禁した『ツインピークス読本』。

Twinpeaks_38_kpjk

 滝本誠師によると、ラジオ局KPJKシーンはエドワード・ホッパーの絵画「夜のオフィス」の再現だったりするらしい。リンチのホッパー好き、極めれり。

 その後に続く、どこかの田舎町の少年と少女の物語。

21462718_1865398877123031_447242683

 クレジット(右)には、この二人、Girl (1956), Boy (1956)となっている。さすがにまだ名前は明かしてもらえないw。僕は少女がベッドに座っている時の脚のアザが妙に何故か気になった(下の引用画像)。そして口から入っていく蛙ゴキブリ蝗(?)。

21462924_1865580557104863_504173197

 あの生物は悪の化身に見えるのでキラーボブだとすると、サラに宿ってリーランドに取り憑いたとかそんなルートも考えられる。ただし、あの少女と少年はニューメキシコに住んでいるとすると別人の可能性も十分あるが、、、。

 リンカーンに似た(町山智浩氏によると、リンカーンのモノマネを得意とするコメディアンが演じているらしい)ウッズマンと名付けられた黒い顔の怪力の男。
 彼が奏でる言葉の兵器。
 "Got a light. This is the water. And this is the well. Drink full and descend. The horse is the white of the eyes and dark within. "
「火、あるか? これが水だ。そしてこれが井戸。全て飲み干し降りて行け。この馬は白眼で、中は闇。」

 「Gotta light」は核の火を得た、という意味も内包してるんだろうか。そうすると日本語訳「火、あるか?」はニュアンスが合わないかもしれない。(Facebookの非公開グループ「ツインピークス」のお仲間に伺ったところでは「Gotta light」は英語表現で煙草の火を借りる慣用句そのものらしいので深読みの必要はないのかもしれない...)

 最後に流れる馬の鳴き声。
 ツインピークスで馬と言えば、こちらの白馬。ウッズマンが言う馬は、シーズン1,2に登場したこの白馬なのだろうか??

 このあとの展開は予想もできないが、まさに次が待ち遠し過ぎる。でも次回WOWOW放映は2週間後。リンチ映像ヘロイ◯の禁断症状が出ること必至ww。

◆関連リンク
Trinity Atomic Test complete takes - YouTube
 1945年ホワイトサンズ、世界初の原爆実験のリアル実写映像。 リンチの描いたものとは印象がずいぶん違いますが、これも充分に恐ろしい。
David Lynch talks about seeing "frog moths" - YouTube
 あの少女の口の中に入っていく蛙ゴキブリ蝗は、リンチ自身が「Frog Moths : 蛙蛾」と呼んでいるようです。
内藤理恵子 のブログ: あの!わけのわからない!新作ツインピークス第8話がだいたいわかるようになるページ(少なくとも悪クーパーモミモミの元ネタはわかる)
 これは読みが深そうですが、ネタバレがやばそう。みなさん自己責任でw。
 これを読んでコクトーが観たくなり、Amazonで『詩人の血』を(中古で)ポチりました。 このブログを書かれてる内藤理恵子さんという方、愛知大の宗教学の先生で、WOWOW の特番に出てた方! おまけに『ツインピークス読本』でアメリカ文学の歴史をなぞってる分析とか登場人物紹介を書かれてた。
内藤理恵子さん wiki
 以下引用
 "「ツイン・ピークス」新シーズン独占!WOWOW9時間無料放送 2017年7/1(土)午後1:00~夜10:00 ドラマ解説者として出演"
 この内藤理恵子さん、葬送,死者儀礼,墓石など、この世とあの世の狭間を研究されている様で、正にツインピークスの、特にブラックロッジを深く語られる方の様です。Facebook の記事も多く一般公開されていて興味深いので、つい読みふけってしまいました。
Nine Inch Nails Lyrics - She's Gone Away 歌詞Google 翻訳
本エピソード wiki (8話は異例の1エピソードだけで詳細wikiが立っている)
感想『ツイン・ピークス The Return』(Season 3) 2017 第5話
感想『ツイン・ピークス The Return』(Season 3) 2017 第4話
感想『ツイン・ピークス The Return』(Season 3) 第3話
動画『ツイン・ピークス』ペンデレツキ「広島の犠牲者に捧げる哀歌」
感想『ツイン・ピークス The Return』(Season 3) 第2話
感想『ツイン・ピークス The Return』(Season 3) 第1話

| | コメント (0)

2017.09.06

■感想 『ツイン・ピークス The Return』(Season 3) 2017 第5話


Trouble - Snake Eyes | Twin Peaks 2017  Part 5

 今回は前回に続き、ツインピークスの街のシーンが多くなり、シーズン1,2の雰囲気を継承し、そしていろんな謎が具体的な形でいろいろ出てきて、ツイン・ピークスらしい話に。



★★★★★★★★★★ ネタバレ注意 ★★★★★★★★★★



 ダギーを始末するように指示されているらしき殺し屋2人。電話の相手はロレインという人相の悪い中年女。Blackberryで「URGENT 2」というテキストを送信。蜘蛛の巣の張った裸電球のある場所で奇妙な四角い装置の音が鳴る。

 ダギーが殺し屋に狙われるのは、本業の保険金絡みの可能性がありますね。
 元々仕事はできなさそうなので、悪党と組むことで仕事の成果を出してたとか…。その報酬の5万ドルの借金で首が回らなくなってた可能性もあるかと。

 そしてサウスダコタの警察の検死のシーン。変死体(首のない男側)の腹から出てきた指輪に、"To Dougie, with love, Janey-E"の文字。ジェニーEがダギーに送った指輪!
 例の殺し屋たちの陰謀の可能性もあるかと思うけれど、それじゃあ普通の犯罪物になるので、おそらくもっと超自然な事件なのかもw。

 シーンは独房のワイルド・クーパーへ。
 鏡をみて、まだボブは自分の中に、というようなことをつぶやく。
 ドッペルゲンガー・クーパーの悪の源泉。映像的には薄くボブの顔が被さったような微妙な描写が良かったですが、これはボブ成分が薄くなっていることも表しているのだろうか。

 ツインピークスの町のある会社の面接風景。社長はなんとボビーの友達マイク・ネルソン。ネイディーンとの恋から厚生し、立派になったものです。で、スティーブンというチンピラに説教して面接から追い返す。

 この男がシェリーの娘、アマンダ・サイフリッド演じるレベッカ(・ベッキー)・バーネットの彼氏というか既に夫となっている、スティーブン・バーネット。エンドクレジットの名前からはそう判断できます。

 今回はリンチの映像幻想コカイ◯度は低かったけど、本物の粉が出てきてしまった。シェリーの娘と彼氏がいっちゃってるのが心配。親子揃って危険な男に惹かれるタイプなのか??
 彼女が空を見上げて恍惚とするのを天から写したシーンは、車がクラッシュしそうな予感でドキドキし(おまけにシートベルトしてないし)、映像的に今回の白眉。(それにしてもこの娘の父親はボビーなのか??)

 そしてもうひとつの今回の見所は、刑務所のドッペルゲンガー・クーパーの電話を使ったハッキングと謎のセリフ「牛は月を飛び越えた」のシーン。
 プッシュホンでハッキングできてしまうって余りにも脆弱ww。どういうシステムなんだろう(^^;)。

 「牛は月を飛び越えた」、うーん、シュールだ。
 このセリフで冒頭に出てきた裸電球の部屋にある黒い箱がブエノスアイレスのものであることがわかる。黒い箱の変異。いったいブエノスアイリスで何が起きているか。ここでフィリップ・ジェフリーズにつながっていきましたね。本当にデイヴィッド・ボウイが亡くなったのが残念。

 謎としては、他にもタミー捜査官(クリスタ・ベル)が指紋を確認していたシーン、「クーパーのファイル上の指紋がドッペルギャンガーの逆であることを発見」とのこと。これも面白いですね。観てるだけでは気付かなかった!

 バンバンバーのTrouble - Snake Eyesの曲のシーンで、リチャード・ホーン登場。
 ラストはひとひねり。いつものバン・バン・バーの歌(今回はリンチの息子ライリーのバンドの演奏)で終わるかと思いきや、勤め先のLUCKY 7 INSURANCE社の前の銅像の横で立ち尽くすクーパーのバックに流れるジャズで締める。哀愁が良かったが、どうなるクーパー!?

 それにかぶるエンドクレジットに流れるのはこの曲。
 JOHNNY JEWEL "WINDSWEPT" (Youtube) 、ChromaticsによるPVもめちゃ渋い。特に黒猫がかっこいいので一見の価値あり。

 そしてそのJOHNNY JEWELのアルバム"WINDSWEPT"のプレイリスト(リンク先)。渋すぎる。 

◆関連リンク
本エピソード wiki
感想『ツイン・ピークス The Return』(Season 3) 第3話
動画『ツイン・ピークス』ペンデレツキ「広島の犠牲者に捧げる哀歌」
感想『ツイン・ピークス The Return』(Season 3) 第2話
感想『ツイン・ピークス The Return』(Season 3) 第1話

| | コメント (0)

2017.09.04

■感想 『ツイン・ピークス The Return』(Season 3) 2017 第4話


Au Revoir Simone - "Lark" (Twin Peaks 2017)

 しばらく夢中に見続けてw、感想をアップしていなかった『ツイン・ピークス』Season 3について、各話レビューの続きを書きます。現在、第7話が終わったところです。いよいよ噂の第8話に突入する前に復習兼ねてw。



★★★★★★★★★★ ネタバレ注意 ★★★★★★★★★★




 カジノでミスター・ジャックポッドと呼ばれるに至ったダギー(・ジョーンズとして現生に舞い戻った)・クーパーの物語が続きます。

 ナオミ・ワッツ演じるダニーの妻 ジェイニーE・ジョーンズとのやりとりがいちいち笑えます。極め付けはダギー・クーパーが、ネクタイを頭に巻いて食べる朝食とコーヒーのシーン、そしてトイレに行けなくて股を抑えるシーンでしょうか。

 息子のサニー・ジムとの目での心の通い合ったような会話もいいです。
 ここから入れ替わる前のダギーも、どこか子供心を持ち続けている人物だった気配。


 ジャズスタンダード「Take Five」をBGMにした朝食シーンの軽快感と漂うユーモアは今シーズンの一服の清涼剤です。

 そしてゴードン・コールが首相補佐官に出世しているシーズン2の登場人物であるデニースとの会話。リンチの演じるゴードンの実直だけれど女好きな描写も味わい深い。自分の絵的な魅力もよく理解しているリンチ絶妙の自己演出ですw。

 保安官事務所、ハリーの兄のフランク・トルーマン保安官の登場と、保安官助手(?)になっていたボビー。ひさしぶりに捜査の対象として写真がテーブルの上に立てられたローラ・パーマーの顔を見て、いろいろなことがこみ上げてきて泣き出すボビーの姿が、バダラメンティのローラ・パーマーの曲と相まって、ファンの涙を誘います。このシーン、俄然本来のツイン・ピークスの世界観を思い出させます。やはりこの町の中心には空虚なローラの顔がよく似合う。

 ボビーが、父親であるブリッグス少佐が生前最後に会ったのがクーパーで、会った次の日に基地の火事で死んだ、と語る。ブリッグス少佐はブルーブックに関係していたり国家機密である何かに絡んでいて、今回のキーになるような気がするので、興味深い。

 保安官事務所に現れるアンディとルーシーの息子 ウォリー・ブランド。なぜに息子の名字がブレナンでないのかが気になりますが、息子の詩人的な言葉が『ツイン・ピークス』の底流に流れるビートニク的な雰囲気を醸し出していて、渋いです。アンディとルーシーが息子を誇らしく眺めているシーンも好きです。にしてもこの若者は本当にアンディの子供なのか(ルーシーをめぐる恋敵のデパートマン、リチャード・トレメインの子供なのか...w)。
 この後も
ウォリーは物語に絡んでくるように思えます。

 サウスダコタに収監されているワイルド・クーパーとゴードンの面会。
 クーパーの語りの異常さは何なんでしょう。噛み合わない会話の妙も今シーズンの特徴的なポイントですね。にしてもゴードンとアルバートと同行するタミーのプロポーションw。腰をクネクネさせて醸し出されるセックスアピールは強烈です。これもリンチ趣味なのだろうな〜ww。

 数年前のフィリップ・ジェフリーズ捜査官にまつわる件でアルバートが語る言葉。
 コロンビアの男の名前をアルバートがクーパーに伝え、その後一週間でその男が死んだ、というのは、今後の謎にかかわるポイントかも。

 ゴードンはアルバートとの会話で補聴器のレベルを上げて小声で話す。そんなところへコンクリート路面を擦るアルバートの靴の音。ゴードンの脳に突き刺さる鋭い音。ここらは音響設計も担当しているリンチのこだわり。

 アルバートが語る「ブルー・ローズ」という言葉も、FWWMにつながるキーワード。ブルーブックとの関係も気になります。

 今回は、奇想シーンはグッと少なくなっていた(ダギー家での片腕の男マイクの幻影だけか...?)。いよいよドラマは前作までのツイン・ピークスの物語にリンクし始め、ソープドラマ部分の、ファンには嬉しいあのドラマが帰ってきた雰囲気。

 

◆関連リンク
感想『ツイン・ピークス The Return』(Season 3) 第3話
動画『ツイン・ピークス』ペンデレツキ「広島の犠牲者に捧げる哀歌」
感想『ツイン・ピークス The Return』(Season 3) 第2話
感想『ツイン・ピークス The Return』(Season 3) 第1話

| | コメント (0)

« 2017年8月 | トップページ | 2017年10月 »