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2018年2月

2018.02.28

■情報 1963年のチェコSF映画公開! スタニスワフ・レム原作, インドゥジヒ・ポラーク監督『イカリエXB-1』 : Ikarie XB-1


Ikarie XB-1 (1963) - Investigating a Derelict Spaceship - YouTube
映画『イカリエXB-1』デジタル・リマスター版 公式サイト

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奇蹟のSF映画蘇る!『2001年宇宙の旅』『スター・トレック』誕生前―1963年 チェコスロヴァキアで生まれた『イカリエXB-1』劇場初公開! - シネフィル - 映画好きによる映画好きのためのWebマガジン.

"『2001年宇宙の旅』『スター・トレック』誕生前― 1963年 チェコスロヴァキアで生まれた奇蹟のSF映画! イカリエ-XB1 『2001年宇宙の旅』『スター・トレック』誕生前に共産主義下のチェコでつくられた初の本格的SF映画『イカリエ-XB1』(原題:IKARIE XB 1)が、5月19日(土)より新宿シネマカリテほかにて公開が決定しました。

22世紀後半、生命探査の旅に出た宇宙船イカリエ- XB 1は、アルファ・ケンタウリ系へと向かう途上で、漂流中の朽ちた宇宙船を発見する。それはかつて地球から旅立った宇宙船だったが、船内にあるのは謎の死を遂げた乗組員たちの死体。この難破船に積まれた核兵器の爆発により調査員たち数名を失うという悲劇の後、変わらず旅を続けるイカリエ-XB1。だが謎のダークスターによって乗組員たちはみな眠りについてしまい……。

1963年にチェコで初めてつくられた本格的SF映画『イカリエ-XB1』は、密室の中で徐々に狂気に汚染されていく乗組員たちのサスペンスフルな人間ドラマと、近未来のユートピア的世界を、独創的なスタイルで描き出した。
そのオリジナリティ溢れる世界観は、『2001年宇宙の旅』(スタンリー・キューブリック、68)にもインスピレーションを与えたという逸話を持つほど。"

イカリエ-XB1 - Wikipedia.

"インドゥジヒ・ポラーク監督『イカリエ-XB1』(原題:Ikarie XB-1)は、1963年制作のチェコスロバキアのSF映画。 スタニスワフ・レム原作のSF小説「マゼラン星雲」の映画化。欧米でも大ヒットし、後に『スタートレック』などに影響を与えた。"

 レムの影響も受けたというチェコのヌーヴェルバーグにも連なるという本格SF映画!これは観たいです。
 インドゥジヒ・ポラーク監督(Jindřich Polák - Wikipedia)生涯で17作の映画を撮っていて、どうやらSFは一作。後年は子供映画を撮られていた方のようです。

◆関連リンク

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スタニスワフ・レム氏追悼ブックレビュー(Anima Solaris(アニマ・ソラリス))
 非常に丁寧にレムの「マゼラン星雲」について語られています。
 貴重な情報ですので、引用させていただきます。リンク先にレム追悼特集として他の作品についても大変興味深い記事が掲載されていますので、ぜひご覧ください。

栄村(フルネームが記されていないですが、SF関係者で検索すると栄村光哉という方のようです)
" 『金星応答なし』の後に「マゼラン星雲」というSFを書くのですが、これも検閲に引っかかり、しばらくの間出版できませんでした。

 「マゼラン星雲」は、30世紀の社会主義ユートピアを舞台にしています。この時代、人類は太陽系のすべてを植民地化しており、ケンタウルス座アルファ星系に向け、初の恒星間飛行を試みます。「ゲア」という宇宙船に227人の男女が乗り込み、8年間にわたる飛行の後、プロキシマ・ケンタウリを回る惑星のひとつで生命反応を見つけます。三重連星であるアルファ星系に属する惑星のひとつが、知的生命体によって生命が生存できる環境に変えられたのか?

 物語には、アトラントスというヒューマノイドが出てきますが、これは冷戦下のアメリカと北大西洋条約機構をそれとなく描いたものだそうです。

 この小説は「IKARIE XB 1(邦題:イカロスXB1号)」という題で、1963年に旧チェコスロバキアで映画化されています。63年というと日本で東宝が「妖星ゴラス」を公開した1年後ですね。もっとも話の舞台は30世紀から2163年の22世紀に変更され、物語もかなり変えられています。レムも映画化には乗り気ではなかったそうですが。日本ではNHKの衛星第2チャンネルで「イカリエ-XB1」というタイトルで放映されたことがあるそうで、御覧になった方もいるかもしれません。

 ところで、検閲に引っかかった理由ですが、サイバネティクス(人工頭脳学)を描いていたからでした。MITの数学者ノーバート・ウィーナーのサイバネティクスの研究は、当時、さまざまな分野――機械や、工場、共同体さえもコントロールできると考えられ、その応用が期待されていました。そして、この時代の人に、来るべき思考機械によるパワー・アップされた社会と産業の変化への希望を与えていたそうです。しかし、共産主義下のポーランドでは、サイバネティクスが擬似科学であると解釈され、レムが『金星応答なし』を書いた51年には、誤った資本主義の科学として禁止されていたそうです。"

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The Magellanic Cloud - Wikipedia
 レム「マゼラン星雲」1955年の作品。調べた限りでは邦訳は見つかりませんでした。レムが初期作品を気に入ってなく、翻訳を許していない、とかあるのでしょうか?

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2018.02.26

■感想 ジョン・グエン、リック・バーンズ、 オリヴィア・ネエールガード=ホルム監督『デヴィッド・リンチ:アートライフ』: David Lynch The Art Life


David Lynch The Art Life - Official Trailer - YouTube
映画『デヴィッド・リンチ:アートライフ』公式サイト

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 東京から遅れること約一ヶ月、やっと名古屋で公開された『デヴィッド・リンチ アートライフ』を名古屋シネマテークで観ました。全篇リンチ独白ナレーションが被った、彼自身の視点で語られたドキュメンタリー。

 前半はホームムービー(8mmフィルムと思われる)と写真とリンチの語りによる、子供時代の彼とファミリーを描き出している。ここを見ると良識ある両親と兄弟に囲まれた幸福な子供時代だと感じられ、恐らくハリウッドのカルト映画監督の中で、これだけアメリカの良識ある家庭で育った人はいないのではないか、と思えるほど健全に見える。

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 その光景はまるで『ブルー・ベルベッド』の耳が出てくるまでの芝生のサバービアの光景である。

 前半で描かれたこの光の部分と、思春期の混沌がリンチにもたらした闇。本作品の全体の背骨になっているのは、この光と闇である。

 そしてもうひとつのポイントは、子供視点でリンチが見ていた世界の広さについての描写。彼のこの頃の世界は、周囲数百mほどの小さな生活圏が世界の全てであったという描写がナレーションでなされている。このキーワードも全体のトーンを決定づけている。

 その後に世界が広がったという子供時代と対比されるナレーションは、実はない。

 絵画と映画と音楽の世界に入っていったリンチのハイスクールと大学時代の回想は、現在の老齢のリンチが自らのアトリエでまるで孫娘のような4人目の子供 次女のルーラと過ごす映像を背景にして語られている。

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 世界の混沌を前に、自分の部屋にこもり、物思いとアートに耽溺していくリンチの姿の描写は、子供時代の狭い世界をさらに圧縮していくような光景にみえる。空間も時間も、現実も夢も、そして外界も内界も内在したそのリンチの空間で営まれるアートライフ。その密度の描写が圧倒的である。

 そのキーワードは、下の個展で飾られたらしい一枚の文字と記号で表現された作品 "DaRK Deep Darkness and SPLENDOR" で描写されている。

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‘Dark Deep Darkness and Splendor’: Yaratımın Karanlık Görkemi – Pomegra

 "闇と明るい光が/周りを包んでいる/根の中にあったものは
 やがて木になり/星空の下の家になった
 その家の中で/よく見るための眼と/長い腕を持つ男は
 明るい光に/深い闇にも手を伸ばした/そして自分自身を見た"

 まさに本作で描写されたリンチのアートライフそのもの。
 そこに描写されるのは、闇と光、そして家の中で光と闇の世界を眺め、自分自身の内面に行き着いた人の姿である。

 『ツインピークス』シーズン3 のあの世界は、リンチのこんな経験がまさに投影されたものなんだってところが、"もてと"興味深い。

 特にラストシーンとリンチサウンドが響くエンドクレジットには感動します。
◆関連リンク
・【インタビュー】映画『デヴィッド・リンチ:アートライフ』 ジョン・グエン監督「この映画を撮ることで、若い頃のデヴィッドの不安を知った」 - T-SITEニュース エンタメ[T-SITE]

"この映画を撮ることで、若い頃のデヴィッドの不安を知った。彼が“アートライフ”を、家族との暮らしや友達付き合いとは分けて考えていて、友達や家族をアトリエには寄せつけなかったことをね。

 デヴィッドは3つの生活を切り離していたんだ。全部をごっちゃにするとどうなるか分からなくて怖かったから。デヴィッドは実人生で自分を完全に切り分けているから、映画の人物にもそれを投影する。

 彼の映画のバラバラな感じ、突然切り替わる人物たちを理解するのに、デヴィッドの話が役立った。家族と話す時、友達と話す時、アトリエでジャック・フィスクと話す時のデヴィッドは全く違う。彼の映画の人物も同じだってことがよく分かるよ。

 デヴィッドにこの話をしたら同意するか、“ああ、気づかなかった”と言うかだろうね。いずれ彼とも話すかもしれないけど、僕が考えたことは筋が通ってると思う。彼のファンにも自分で感じ取ってほしい。デヴィッドの映画の観客は、作品と真剣に向き合っている。彼の作品をよく知っているし、僕らが解説しなくても作品を見直して分析するし、そのほうが彼らにとって満足度が高いはずだ。"

 この監督による言葉、僕にはとても興味深かった。
 映画の中では、彼の大学時代の下宿に父親と友人が同席することに対してのリンチの感情、たしか「怖い」と言っていたことが、まさにこの監督の分析につながっているのだろう。
 リンチ映画の、全く違う個性がひとつの身体に宿るような不思議な感覚。この原点が語られたのではないかと感じられる。

UPLINK『デヴィッド・リンチ:アートライフ』劇場パンフレット(Amazon) 
 Amazonで本作のパンフレットが扱われている。
 このパンフ、全63ページに密度の高い以下に記された方々の論評と、映画の中で映し出されたリンチのプライペート写真と絵画/オブジェ作品の写真が満載。リンチミニ絵画展の図録のような素晴らしい完成度なので、ファンは必滞でしょう

"映画『デヴィッド・リンチ:アートライフ』 2018年1月27日(土)より、新宿シネマカリテ、アップリンク渋谷、立川シネマシティほか全国順次公開

原題:David Lynch: The Art Life リンチが紡ぐ「悪夢」はどこから生まれるのか? 『ツイン・ピークス The Return』で再び世界を騒がせる、映画界で最も得体の知れない監督――その「謎」が「謎」でなくなる、かもしれない。

■監督:ジョン・グエン、リック・バーンズ、オリヴィア・ネールガード=ホルム(『ヴィクトリア』脚本) ■出演:デヴィッド・リンチ (2016年/アメリカ・デンマーク/88分/英語/DCP/1.85:1/原題:David Lynch: The Art Life) ©Duck Diver Films & Kong Gulerod Film 2016

【パンフレット内容】
・イントロダクション ・プロダクション・ノート
・監督インタビュー ・デヴィッド・リンチについて
・「イノセント・ミーツ・ナイトメア」滝本誠(映画・美術評論家)
・「“名付けられないむき出しの怖さ"を浮き彫りにするリンチ作品」湯山玲子(著述家、プロデューサー)
・「画家リンチは一言“ハッピー・バイオレンス! "と応えた」飯田高誉(インディペンデントキュレーター)
・「アート、そしてライフ。リンチの幸せな分裂について」高橋ヨシキ(デザイナー、映画ライター)
・「絵画、映画、かすかなしるし」大谷能生(音楽/批評)
・デヴィッド・リンチ絵画作品集
 ★映画オリジナルカード付き!"

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2018.02.21

■感想 ティム・バートン監督『ミス・ペレグリンと奇妙なこどもたち』:Miss Peregrine's Home for Peculiar Children


映画「ミス・ペレグリンと奇妙なこどもたち」予告 - YouTube
 ティム・バートン監督『ミス・ペルグリンと奇妙なこどもたち』WOWOW録画初見。

 ティム・バートンは僕にとって当たり外れの幅が大きい監督。で、本作は◎! とても素晴らしい映画でした。
 『バッドマン』『アリス・イン・ワンダーランド』はNGだけれど、『ビッグ・フィッシュ』『シザーハンズ』はOKな方にはバートンベスト3級の作品です。

 あと見てる間、ティム・バートン版『Xメン』かと思っていたら、脚本は『X-MEN: ファースト・ジェネレーション』『X-MEN: フューチャー&パスト』『キック・アス』のジェーン・ゴールドマンなのですね。原作のランサム・リグズ『ハヤブサが守る家』は未読ですが、映画向けのストーリーはこのジェーン・ゴールドマンの成果なのでしょうか。

 こどもたちの異能ぶり、その造形と能力の奇想がとても心地いい。こどもたちの造形から能力の描きかたがとってもティム・バートン。特にイーノックの降霊術による無生物生物化で描かれたストップモーションによる怪物の戦いとか、キッチュで不気味な映像はバートン監督の独壇場。

 海底のあるものが復活したり、まるでニューヨークのコニーアイランドのような遊園地で描かれるクライマックスなど、見どころ満載。
 劇場の3Dで観なかったことを悔やむことしきり。3Dブルーレイが中古で値落ちしてきたら是非とも購入したいものです。

 ティム・バートンの次回作は2019年の実写『ダンボ』らしいけれど(Dumbo (2019 film) - Wikipedia)、どんなにサイケでシュールなダンボが観られるか今から楽しみです。シナリオは再びジェーン・ゴールドマンにお願いしたいものです。『アリス』『ダンボ』とディズニー作の実写化を進めているわけですが、このあとは是非とももう一つのバートンの原点である『ゴジラ』の映画化も手がけてほしい。観たくてたまらないバートン版『ゴジラ』。どんな奇妙なゴジラ映画になるのか、観たくてしょうがない(^^;)。

◆関連リンク
『ミス・ペレグリンと奇妙なこどもたち 3枚組3D・2Dブルーレイ&DVD(初回生産限定)』


Miss Peregrine's Home for Peculiar Children, Making of...ScanlineVFX - YouTube
 リンク先、ネタバレです、ご注意を。あの素晴らしい船のシーンのメイキング。

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2018.02.19

■感想 宮部みゆき原作 松浦善之助演出『荒神』


スペシャルドラマ『荒神』予告篇 - NHK

 松浦善之助演出『荒神』NHK BSPリアルタイム視聴。
 予告ビジュアルと宮部みゆきということで、かなり期待して観たけれど、NHKのCGスタッフによって描き出されたらしい怪物の映像以外はいまひとつでした(正式なスタッフ構成はネット検索でも不明ですが、CGに『シン・ゴジラ』の白組とかのクレジットはなかったです)。

 物語の構成は割と面白いのだけれど、脚本の細部が弱い。そして役者の演技が方に力が入りすぎで気になって仕方なかった。あと実写の映像がなぜか白っぽく映像の締まりがなく、ハイビジョンが得意とする自然の鮮明な風景描写が台無しで残念で仕方がなかった。

 一方の怪物造形はあきらかに『シン・ゴジラ』以降のCG怪獣を見事に描写していた。一部、テクスチャの荒いところもあったけれど、テレビドラマでこのレベルのVFXが観られるのは眼福です。
 動きのリフリティ、表面の質感。素晴らしい完成度であると思う。CGスタッフによるメイキング談義が是非とも聴いてみたいものです。 

 役者では、住職役 品川徹が素晴らしかった。『野のなななのか』での熱演を思い出させるいぶし銀の演技。クライマックスの迫力への貢献は何と言ってもこの役者さんあってのものだったと思う。

◆関連リンク
荒神 宮部みゆき こうの史代 - Google 検索
 新聞連載時のイラストは『この世界の片隅に』のこうの史代。上のリンクでいろいろとイラストを見ることができるけれど、すずさんが、怪物と戦っていたのか、という感じ。怪物の姿は以下の引用画のようなものらしい。

Eva_yugenn

NHK初の怪獣時代劇!宮部みゆきさん原作『荒神』 人間の怨念や愛憎が生み出す巨大な怪物と人々との死闘 : 変身速報 上記画像はこのリンク先から引用しました。
こうの史代, 宮部みゆき『荒神絵巻』
 新聞の挿絵403点についてはこの本に掲載されているとのこと。一度、しっかり見てみたいものである。

・荒神 - Wikipedia

"家庭の台所で祀る三宝荒神と、地域共同体で祭る地荒神とがある。地荒神の諸要素には三宝荒神にみられないものも多く、両者を異質とみる説もあるが、地荒神にみられる地域差はその成立に関与した者と受け入れ側の生活様式の差にあったとみて本来は三宝荒神と同系とする説もある。ただし地域文化の多様性は単に信仰史の古さを反映しているにすぎないとも考えられるので、必ずしも文化の伝達者と現地人のギャップという観点を持ち出す必要はない"

 宮部みゆきの創作とは別の話だろうけれど、wikiには荒神は台所の神とあったりする。

 

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2018.02.14

■動画 ロッテルダム映画祭 ヤン・シュヴァンクマイエル インタビュー IFFR Big Talk - Jan Švankmajer


IFFR Big Talk - Jan Švankmajer - YouTube

 ロッテルダム映画祭でヤン・シュヴァンクマイエル監督への、1時間23分に及ぶ長尺のインタビューが動画で公開されている。
 残念ながら内容は理解していないため、ぜひご自身の眼と耳と脳でお楽しみください。(本業で忙殺状態のため、最近、手軽な紹介ばかりで申し訳ないです)

◆関連リンク
The last film by Jan Švankmajer: Insects | Indiegogo
 クラウドファンディングのページ。

情報 ヤン・シュヴァンクマイエル監督の最新作『蟲』完成
Jan Švankmajer - Hmyz ヤン・シュヴァンクマイエル監督の最新作『蟲』 関連記事 当ブログ Google 検索

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2018.02.12

■動画 アンドリュー・トーマス・ホワン監督「肉の巣」Andrew Thomas Huang "Flesh Nest"

FLESH NEST from Andrew Thomas Huang on Vimeo

Video Art Visions: Flesh Nest | NOWNESS

 どこか『シン・ゴジラ』第5形態を想像させる世界。

 以前「SOLIPSIST:唯我論者」という短篇作品をこちらで紹介したことのあるアンドリュー・トーマス・ホワン監督の新作。

 異様な舞台で繰り広げられるアンドロイドの恋愛、といったところだろうか。
 それにしても周囲に蠢く小人群体とか異様なビジョンが素晴らしいです。

◆関連リンク
■動画 Andrew Thomas Huang : アンドリュー・トーマス・ホワン監督「SOLIPSIST:唯我論者」
andrewthomashuang.com (公式HP)
Andrew Huang on Vimeo
 他も含めて、計8本のショートムービーが公開されている。
 この作家、御本人のVIMEOのページには、バリ島のバロンの写真が使われている。こうした民俗学的な意匠のデジタル映像化も進められているようで、今後も期待である。

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2018.02.09

■情報 滝本 誠『映画の乳首、絵画の腓 AC 2017』刊行記念 滝本誠トークイベント

20100220_853460checker滝本 誠『映画の乳首、絵画の腓 AC 2017』

"エロスか死か! 美の動体視力があなたの価値観を転覆+震動させる…。若き町山智浩、中原昌也、菊地成孔に衝撃を与えた伝説の評論集が新世紀増補究極版(21 CENTURY ULTIMATE EDITION)として再起動!"

 「美の動体視力」! まさにこの名著を表すのに、適切な素晴らしいコピーである。
 装幀は小沼宏之さんによるものということだけれど、元作に比べて今回も魅力的なノワールに昏い光を放っている。

蘇る「映画の乳首、絵画の腓」滝本誠トークイベント | 誠光社

"開催日     2018年3月10日(土)
時間     19時-21時 会場     誠光社
参加費     1500円+1ドリンクオーダー
定員     30名さま
ご予約方法     E-mail:s-contact@seikosha-books.com
    (参加ご希望イベント名、お名前、お電話番号をご記載ください)      または店頭、お電話にて承ります。

『映画の乳首、絵画の腓』増補新版刊行を記念、著者の滝本誠さんをお招きし、当時のこと、四半世紀を経た新版、そしてその助走距離を経て今年秋に刊行予定の新刊についてお話を伺います。リンチ、シュールレアリスム、ノワール、そしてデヴィッド・ボウイ。独自の美意識に貫かれた滝本ワールドを是非ご堪能ください。

同書で「ディックとの和解、オバノンの脅迫」と題し、その制作背景に触れられた『ブレードランナー』は同じく昨年続編が公開され話題を呼び、ブラザーズ・クエイの回顧展が東京に巡回、初版刊行直後、著者を熱狂させることになる『ツイン・ピークス』も2017年に待望の新シーズンが放映、『カイエ・デュ・シネマ』の同年ベスト1として選出されるなど、同書にまつわる不思議な因果関係が生じています。”

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2018.02.07

■感想 モルテン・ティルドゥム監督『パッセンジャー』:Passengers


Passengers Best Scenes full HD 2017 - YouTube

 モルテン・ティルドゥム監督『パッセンジャー』WOWOW録画初見。
 あまり良い評判を聞かなかったので、劇場はスルーしていたのだけれど、期待していなかったからか、かなり楽しめた。

 特に前半は秀逸と思う。コールドスリープで90年かかって他恒星系への移住を目指す5000人の乗客という、SFのみでしか描くことができる特殊な状況下で起こるアクシデント。そしてその結果として生まれた異様な恋愛関係。

 秘密を知られた後の主人公とヒロインの関係性というギリギリの極限状況下の恋愛設定が秀逸。さてここからどういう二人の関係が描かれるのかと、ある種とても哲学的な気分に観客を誘う前半の手腕は見事と思う。ドキドキして続きを見守ると、、、。

 残念ながら後半は、ハリウッドお得意のアクションクライマックスへと展開の舵が切られてしまう。そして、SF設定としてもアクションシーンへの展開としてもかなり無理があるクライマックスが凄く残念。絵的に面白かったプールが無重力になる映像も、重力が復帰するスピードが速すぎるだろうとか、突っ込みどころはいろいろあるが、舞台設定を活かそうとした展開は上手かったので細部が残念。

 ラストは割と好きな終わり方になったけれど、前半の哲学的緊張感のある恋愛を、あのままギリギリと詰めて行ってくれたら、SFのみが描ける究極恋愛ものの1本が出来上がっていたのではないかと思わず妄想してしまった。
 『冷たい方程式』ならぬ、宇宙もののひとつの方程式が出来上がっていたかも(^^;)。

 監督はノルウェー出身で、『イミテーション・ゲーム/エニグマと天才数学者の秘密』でアラン・チューリングを主人公にした恋愛ものを映画化したモルテン・ティルドゥム。今回も理系的センスで独特の恋愛ものを描いていて、なかなか楽しめました。

 それにしても『パッセンジャー』(原題:Passengers)とは何とも安直でひねりもなく詰まらないタイトル。まだ『コールドスリープの恋愛』とかSFチックにしても良かったのに(これもダサいですねw)。

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■感想 パク・チャヌク監督『お嬢さん』


【音出し注意!】『お嬢さん』本編映像 - YouTube
 パク・チャヌク監督『お嬢さん』WOWOW録画初見。

 噂に違わぬ変態的ミステリーw。
 日本統治下の韓国を舞台に描かれる韓国語と日本語の入り乱れる淫蕩古書ノアールフィルムとでも表現しようか、、、。

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 そうしたディレッタントでデカダンな雰囲気もだけれど、映像が特に見事です。
 表面で進む作り物っぽいブラックコメディにもみえる物語(しかし三部構成で実はそれなりに丁寧に構築されている)を、画面構成の素晴らしく整った映像が、見事にイメージ喚起に優れた映画世界として下支えしている。

 原作はサラ・ウォーターズの『荊の城』。原作未読だけれど、おそらくその物語の仕掛け部分が原作からで、その他、退廃的な淫蕩な世界部分は、パク・チャヌクの創作ではないかと思われる。

 そして現出するクライマックスの光景。パク・チャヌク監督、初見ですが、他の作品も今更ながら追いかけてみたくなった。

 WOWOWでは、残念ながら浮世絵他シーンでのぼかし範囲が広すぎて何が描かれているかわからないところが、、、。あそこまで隠す必要は全くないのではないか。

 主人公のふたりのうち、お嬢さん 秀子役のキム・ミニの少し病的な風貌。スッキ、珠子役のキム・テリのどこか純朴な泥棒娘演技。こうしたキャスティングも絶妙だった。

◆関連リンク
滝本 誠さんtweet

"『お嬢さん』見て来た。満席。日本の変態にリスペクトをささげた<夢の映画>であった! いろいろ思うところあり、ある本の増補として書き下ろすことにした。まず思ったのは義父の小宮卓(河出文庫の秘本監修)の書斎である。パク・チャヌクには橘外男の画家小説『双面の舞姫』の映画化をぜひとも!。"

""幻戯書房でお世話になる、新版『映画の乳首、絵画の腓』のための、4万字書下ろし(『お嬢さん』、『エクス・マキナ』、『ネオン・デーモン』、『ウィッチ』)がようやく。現在、図版を再構築中。"

滝本 誠『映画の乳首、絵画の腓 AC 2017』
 滝本さんの『お嬢さん』評が新版『映画の乳首、絵画の腓』で読める! やはり買わねば!!

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