■感想 マーク・ロマネク監督『わたしを離さないで』:Never Let Me Go
マーク・ロマネク監督、アレックス・ガーランド脚本/制作総指揮、カズオ・イシグロ原作/制作総指揮の映画『わたしを離さないで』をWOWOW録画見。
先日観た『エキス・マキナ』が傑作だったため、アレックス・ガーランドが脚本/制作総指揮を務めた本作を観てみた。
こちらも期待に違わぬ傑作だった。静かなトーンで描かれた、残酷な物語を丁寧な描写で粛々と観せていく。
全体的に静謐な雰囲気が画面を覆い、本来溌剌としている子供達の快活なシーンですら、どこか陰鬱なイメージが満ちている。
物語はカズオ・イシグロの原作とほぼ同じようだ(読んでいないため、wikipediaの粗筋より判断)。異質な英国の物語としてさらっと語られる時代背景と徐々に観客に提示されていく物語のコア。不安が満ちている画面が、ひしひしとこの異質な世界の恐怖の実像を観客に提示している。
たとえば、子供達が壊れたオモチャを嬉しそうに選ぶシーン。この子供達の育てられてきた環境を的確に描き出している描写。
ラストで流れる映像。どこかのうらぶれたイギリスの片田舎の農地。風に吹かれたビニール屑が鉄格子にひっかかって風に揺られるという心象的な風景がこの映画の全体を見事に表象している。
"イシグロは『わたしを離さないで』は平行世界のイギリスを舞台にしているにもかかわらず、2015年までの自身の作品のうちでもっとも「日本的」な小説だと考えており、それまでに接してきた日本の映画や書籍の影響が登場人物のふるまいなどに反映されているという。"
小説が「日本的」なものを狙ったとのことで、つい日本映画として制作されていたら、と想像してしまう。
多くの日本映画監督の作風を想い出してしまうが、たとえば黒澤清監督が撮っていたらと思うと、さらなる傑作が生まれていたのではと妄想が膨らむ。子供達が育つ「ヘールシャム」と名付けられた施設の佇まい。彼らの周りの空気感がこの物語をさらに鋭いものに変えていたのではないだろうか。
◆関連リンク
・わたしを離さないで (映画) - Wikipedia
・わたしを離さないで - Wikipedia
こちらの原作あらすじによると、映画はほぼストーリーは原作通りのようです。
・映画「わたしを離さないで(Never Let Me Go)」の劇中校歌の恐ろしい歌詞
"校歌の歌詞は小説には出てこないみたいです"
校歌の独自訳を書かれていて、なかなか深いです。
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