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2018年5月

2018.05.30

■感想 静野 孔文, 瀬下寛之監督、虚淵玄原案,脚本『GODZILLA 決戦機動増殖都市』


静野 孔文, 瀬下寛之監督、虚淵玄原案『GODZILLA 決戦機動増殖都市』予告 - YouTube

  虚淵玄の絶望の破滅が加速。でもって哲学的絶望が進化SFしている。
 ナノメタルという設定でメカゴジラがまさかのSFに。『レディ・プレイヤー・ワン』の同キャラとは随分な違い(両方好きですけど)。

 そして前作の感想でも書いた硬質なCG映像とシャープな音響がこの哲学的絶望に最大限マッチして素晴しい効果を出している。このクールな物語を見事に盛り上げてる。

 CGのどこか非人間的な表現で、ナノメタルとの融合で新らたな進化を選びとる異星人「ビルサルド」と、人間の肉体に拘った地球人キャラクターの苦難。

 ある意味、『アベンジャーズ インフィニティ・ウォー』の絶望を超えている。サノスのシンプルな哲学(^^)と比べると何と深い絶望。人類の進化の到達点にいるゴジラとそれに対抗する、ロジックの神メカゴジラ。

Photo

 諸星大二郎の「生物都市」の描いた進化の恍惚と同類のものを描いた上で、それを否定。テクノロジーのエッジとして描いたメカゴジラの暴走はある意味、東宝メカゴジラの極北の姿として描き出している。見事な魂の継承と思うがどうだろうか。

◆関連リンク
『 彼方より―諸星大二郎自選短編集』
 諸星大二郎の手塚賞入選作「生物都市」が収録されている短編集

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2018.05.28

■詳細レポート(2) 『クエイ兄弟 ーファントム・ミュージアムー』展 スペシャルトーク「クエイ兄弟の夢の世界」滝本誠氏、赤塚若樹氏@ 岡崎市美術博物館

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開催中の展覧会「クエイ兄弟―ファントム・ミュージアム」 | 岡崎市美術博物館ホームページ

"スペシャル・トーク 「クエイ兄弟の夢の世界」
登壇者
赤塚若樹氏(首都大学東京教授) 「ふたりの好きなもの」
滝本 誠氏(映画評論家) 「クエイ兄弟の手作り魔術」
司会 岡崎市美術博物館学芸員 高見翔子氏
日  時  5月6日(日曜日) 午後2時~ 
(当日午後1時開場)
会  場  当館1階セミナールーム
定  員  70名 先着順 ※午後1時から整理券配布 聴講無料"

 スペシャルトーク、後半の滝本誠氏の講演とラストのお二人によるトークのメモ、続きです。iPadのメモと記憶を頼りに書いてますので、記録ミスもあると思います。文責は私ということで、読んで頂く際はご容赦ください。トップに引用した画像は、お二人が用意され会場で配布されたレジュメ(一部)です。

■滝本誠 「クエイ兄弟の手作り魔術」

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・カフ力「変身」のザムザを表現した展示品。ザムサと部屋とベットとドア。クエイが想う形。このセットを、映像として完成させてほしい。スリルを感じた。
・フィラデルフィアでクエイと同時代を過ごしたはずのデイヴィッド・リンチも「変身」をシナリオ化している。2人ともフィラデルフィアでカフ力を発見。
・自分のイマジネーションの中で、クエイヴィジュアルで受けとっていた。
※写真は This Week In New York から引用させて頂きました。

・今買い展示されているドローイング、切断とか奇怪な夢を表現している。ブックデザインとか、噂は聞いていたがやっぱりというビジュアル。「クロコダイル」の頃に届かなかった情報。幻想力が入ってくる。

ジヤン=オノレ・フラゴナールの閂の絵からクエイが影響受けていると『映画の乳首、絵画の腓』に書いた。画家のフラゴナールでなく、解剖学者の従弟のオノレ・フラゴナールの影響であると、17年フラゴナ一ル博物館を初めて訪問して気づいた。クエイとフラゴナールで書き直した方がよい。

・パリ郊外にあるフラゴナール博物館、娘と2人で訪問した。人間の皮を一回はいでなめして頭蓋に張り付けたもの。荒俣宏氏も悲鳴あげた。余計な物を残しはりつけた。馬も凄い。1日楽しめるが、匂いがキツイ。ガラスの中から語りかける。女性に向いてると思う。(フラゴナール博物館については『荒俣宏の裏・世界遺産(3) 衛生博覧会を求めて』参照)

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・今回の展示品で「変身」のデコールに加えて、持ってかえりたいと思ったのは「クロコダイル」のデコールと、アムステルダムで展示されたオプティカルボックス。この三点が特に良い。
・オプチカルボックスはマックス・エルンストに関係。箱の中を覗く展示、既に破棄されたらしいので残念でならない。13個の穴ごとに別の物に見えたかどうか。これは見たかった。
(リンク C3 video archive and media art collection catalogue
 滝本さんが見たいと言われていた「ロプロプの巣」と言われる引用画像のキュレーション。マックス・エルンストの「怪鳥ロプロプ」のための架空の装置。97年にロッテルダムで展示された。)

・人為的な透視図法、またはアナモルフォーシス。バルトル・シャイティスのアナモルフォーシスとしたかった。手紙が届いた日にバルトス・シャイティスが死んだと言われてる。

バルトル・シャイティスアナモルフォーズ 』(国書刊行会)、クエイのアトリエでサインしてもらった。流麗かつ円がどこかへ引きずり込む様なサイン。上がティモシー? 上から下へ見事にひきついで素早く書かれた。カリグラィーの様。アトリエのBBCからエアチェックしたカセットテープの山と彼らのカリグラフィーの筆致は同じ。それらもまたイラストで埋まってる。

・カリグラフィー.、カリカリという昔の極上のエクスタシー。「書道家」。

・アトリエ訪門、1994年、イメージフォーラムのクエイのビデオが1万円x1万本以上売れた。そのご褒美として、イメージフォーラムの富山女史(富山加津江氏)と滝本氏、94年8月にアトリエを訪問した。(ここからアトリエ訪問の写真をスライドで見せながらの講演)

・2 Fがクエイのスタジオで窓が開いてた。2人で同時に顔を出した、ツインズの歓迎。1 Fはハロッズに肉を卸してる解体配送業者。「ストリート・オブ・クロコダイル」のレバーの購入先か。

・当時、クエイはピーター・グリナウェイから、早く実写を撮れ、と言わえてた。そして初めての実写長編『ペンヤメンタ学院』の初号試写。

・アトリエ内、植物系の絵、すべからく枯れている。枯れてこそ造形美を発揮する。枯木もいくつもアトリエにあった。作品の素材として置いてある。枯枝の様なパペットを天上に張り、そこに作品吊るしてある。落ちてくると危険。カバーシーツのカーブの写真、この流れがクエイ。

・テーブルの花も枯れてる。当時、35mmフィルムで、2人で撮っていく。照明、幕を張っている。スタロヴィエイスキの目玉の「砂時計のサナトリウム」。

・コースターもクエイ的、ビニール袋に入れて、穴をあけて、室内の風雨にさらす。粉なごみ、匂い、コースターに浮かび上がる。トイレにカフ力のチェコ版?のペーパバック、つり下げてある。ホコリ等の付着を楽しむ。彼の幻想の中の東欧か。

・変身のセットのリアル、写真を見直していて、20年たって衝撃受けた。

・手作りカセット、BBCエアチェック、手作り快感.。山をなして存在。
・家っぽい造形、エゴンシーレの肖像の様なパペット。映像になってない物、天上にぶら下がってる。ブラっと崩れる夢見に入る様子、写真を見ていて昨日気づいた。枯木の痕跡。人体模型。陰毛、自分たちで貼り込んだ。造形物に加えることで楽しむ。

・DVDのインタビュー、球体人形の陰部に指を入れる所から。映像になってない物、いろいろ。キリストはりつけ、腐敗的描写。フィラデルフィア、ポーランド移民多かった、そこへ向かうDNAか。

・まとめ? クエイを楽しみましょう。

■おまけの30分
 時間を延長して、30分ほどの追加講演

・東欧について話した。この展覧会は葉山、渋谷、ここ、見え方が違う。調べ直した。

・黒の素描。70年代となってるが、ベルギーの資料では74〜77年と記してある。英語じゃなくポーランド語等。モチーフ、街頭、パンタグラフ、電線、高圧線、クエイっぽい。
・この岡崎市美術博物館から見える電線。線にラケットがかかっていればクエイの素描そのまま。

・77年、ポーランドヘ74年に初めて行ってる。8mmカメラで映画撮ってる。そのスチル、後のモチーフ、市電、電線.。チェコの写真家にインスパイア、大聖堂のなかを走る、路面電車。人工の夜景に出てくる。映画のモチーフヘ痕跡が出ている。こうした見方も美術展の楽しみ方。

・クエイと東欧のつながり、フィラデルフィアは欧からの移民が多くいた。

・74年のワルシャワ訪問、東へ入りにくかった、鉄のカーテン、身ぐるみはがさえたり。
アンジェイ・クリモフスキ。クエイが東欧へ目を向けるきっかけ。イギリスの別の美術学校にいた。両親が東欧の役人(?)。卒業制作展で意気投合。文通。
・クリモフスキ、ワルシャワでポスターとアニメ学んだ、トマシェフスキに学んだ、レンツェとかの上の世代。アニメはカジミェシュ・ウルバンスキに学んでいた。この人を通してワルシャワへ。クリモフスキのポスター、『オーメン』とか、女の背中。アニメ「 死せる影」。密接に結び付いてることがわかった。

ウルバンスキPlaythings
・レンツェ、ボロフチク「家:The House」。電子音楽。シンセ。実験的。コラージュ、髪の毛アニメ。

Surrealism/Experimental/Avant-garde Art Cinemaの動画 | VK
 クリモフスキ「Dead Shadow : 死せる影」バレエ、階段のぼる人、撃たれる。
ポーランド最近も元気。


Nine Inch Nails - Closer (Director's Cut) - YouTube
 マーク・ロマネク:Mark Romanek監督のナイン・インチ・ネイルズ「クローサー Closer」PV。ターセムの『ザ・セル』と合わせて、「クエイエフェクト」と名付けられる様な映像の強い影響が現れている。もしくは「クロコダイルエフェクト」。肉、心臓、ほこり、そして蜘蛛の巣。


The Cell: The Demon King (2000) - YouTube.

◆関連リンク
滝本誠『映画の乳首、絵画の腓 AC 2017』
leeds canvas quay - Google 検索
 リーズ市の地下水路をアート化したもの。暗闇の光が素晴らしい。
The Hourglass Sanatorium (1973) ♦ A film by Wojciech Has ♦ - YouTube
 監督ヴォイチェフ・イエジー・ハス原作者ブルーノ・シュルツの「砂時計サナトリウム」。クエイに影響を与えた。まるでパペットのように見える人間の実写映画。
C3 video archive and media art collection catalogue
 滝本さんが見たいと言われていた「ロプロプの巣」と言われるキュレーション。マックス・エルンストの「怪鳥ロプロプ」のための架空の装置。97年にロッテルダムで展示された。
Max Ernst loplop - Google 検索
Un lieu d'exception(フランス フランスでのフラゴナール博物館 公式HP)
【閲覧注意】パリの「フラゴナール博物館」に世界最高傑作といわれる「人体標本」を観に行った!|健康・医療情報でQOLを高める~ヘルスプレス/HEALTH PRESS
【完全解説】マックス・エルンスト「コラージュ・ロマン」 - Artpedia / わかる、近代美術と現代美術

"1929年、最初のコラージュ・ロマンのエルンストの代表作となる『百頭女』を刊行。エルンストの鳥キャラクターのロプロプが現れる。絵の中の鳥はエルスント自身(エゴ)を表している。ロプロプとは鳥と人間の初期の混乱から起因する自分自身の延長のもので「分身」あるいは「守護霊」のようなものといっている。"

「砂時計サナトリウム」ヴォイチェフ・J・ハス - Credo, quia absurdum
・メカニカルインファクタ
 参考出品で展示。図録にも載っていないので検索してみたが、ネットには画像なし。とても残念。

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2018.05.21

■詳細レポート(1) 『クエイ兄弟 ーファントム・ミュージアムー』展 スペシャルトーク「クエイ兄弟の夢の世界」滝本誠氏、赤塚若樹氏@ 岡崎市美術博物館

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開催中の展覧会「クエイ兄弟―ファントム・ミュージアム」 | 岡崎市美術博物館ホームページ

"スペシャル・トーク 「クエイ兄弟の夢の世界」
登壇者
赤塚若樹氏(首都大学東京教授) 「ふたりの好きなもの」
滝本 誠氏(映画評論家) 「クエイ兄弟の手作り魔術」
司会 岡崎市美術博物館学芸員 高見翔子氏
日  時  5月6日(日曜日) 午後2時~ 
(当日午後1時開場)
会  場  当館1階セミナールーム
定  員  70名 先着順 ※午後1時から整理券配布 聴講無料"

 スペシャルトーク、貴重な御二人の話をたいへん興味深く聞かせて頂いたので、その一端をご紹介します。iPadでメモを採ったのですが、正確に記録できていない部分も多いと思うので、あくまでも文責はメモを採った私ということで、ご容赦ください。

■赤塚若樹  「ふたりの好きなもの」
・東欧関係とクエイの関係は、80年代終わりから。
・滝本誠氏『映画の乳首、絵画の腓』は恐らくクエイについて本格的に取り上げた日本で初めての書籍。
・赤塚若樹氏はシュヴァンクマイエル、クエイほかを『夜想』のパペットアニメ特集でとりあげた。ブルーノ・シュルツについても、雑誌「REAR」で、ポーランドのアニメーション他と合わせて文章を書いた。
・公式図録の主要参考文献には、この二人の著作は掲載されていない。高見氏の慧眼か、はたまた節穴か?、というのがこの講演でわかるはず(笑)。
・90年代ビデオ、イジー・バルタ、ヤン・シュワンクマイエルと合わせてクエイも発売された。イメージフォーラムフェス、シネヴィヴァンのレイトショーとか貴重な機会だった。パンフに滝本氏が書かれていた。その後90年に『映画の乳首、絵画の腓』が発行された。
・(滝本氏) クエイに30年おぼれ続けてるのでなく、最近、浮上してまた戻ってきた。

・(ここで参考上映 「ストリート・オブ・クロコダイル」) ポーランドのカフ力と呼ばれているブルーノ・シュルツの原作。平凡社ライブラリで翻訳が出ている。シュルツは作家であり、画家。
・デビューは偶像讚美の書。シュルツは小説より前に画家だった。(ここでシュルツの絵を紹介(参考リンク : Bruno Schulz - Google 画像検索)) シュルツの絵はクエイに影響。
・シュルツの絵を東大の講演で「足フェチ」と言っていたら、講演録で「足への愛好」と直された(笑)。
「ストリート・オブ・クロコダイル」の原作「大わに通り」と同じ舞台の連作に「肉桂色の店」。
ヴォイチェフ・ハス『砂時計サナトリウム』(72年)、この映像からクエイヘ影響しているのがよく分かる。人間がパペット的。(以下の動画参照)。


The Hourglass Sanatorium (1973) ♦ A film by Wojciech Has ♦ - YouTube.

・滝本『映画の乳首、絵画の腓』に、クエイへの東欧の影響について、すでに書かれている。ヤナ一チェク、ミランクニデラ、シュヴァンクマイエルの部屋。
・同じくシュルツの「砂映計サナトリウム」も現在、作ってる。そしてスタニスワフ・レムの「マスク」、バルトーク、カフカ「変身」。ロシアのアニメ作家 ヴワディスワフ・スタレーヴィチ等々が影響している。

・東欧、鉄のカーテンの標式が今もある。チェコ、ポーランド、スロバキア、ハンガリー、、、、以前はオーストリアから東へ行けなかった。世界の果てという認識があったころにクエイは東欧を訪問。
・REARに書いたポーランドのポスター。クロコダイルにも出てる。多くの東欧の作家がクエイに影響を与えている。ヤン・レニツァヴァレリアン・ボロフチク。ポーランド派の代表。
レニツァのアニメーション。ポーランドアニメーションの黄金時代。

チャーリー・バウアーズ「It's abird」レニツァ「A」 、AのあとBが来るというアニメーション。
・東欧、ファンタスティックな映像は西欧と違う。周縁、陰り、深みにひかれる。トルンカ、ノルシュテイン。そしてレニツァとボロクチク。
・ボロズウィック「再生」(1963年)。フクロウ、トランペットの再生、クエイが好きな作品として挙げてる。人形の再生、顔と頭、クエイの人形そのもの。最後、手榴弾。
・クエイ新作「砂時計サナトリウム」でも、ボロクチクにオマージュ捧げてる。
・クエイのドローイングもポーランドアートの影響受けている。

◆関連リンク
滝本誠『映画の乳首、絵画の腓 AC 2017』
The Hourglass Sanatorium (1973) ♦ A film by Wojciech Has ♦ - YouTube
 監督ヴォイチェフ・イエジー・ハス原作者ブルーノ・シュルツの「砂時計サナトリウム」。クエイに影響を与えた。まるでパペットのように見える人間の実写映画。
「砂時計サナトリウム」ヴォイチェフ・J・ハス - Credo, quia absurdum

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2018.05.16

■感想 『クエイ兄弟 ーファントム・ミュージアムー』展 @ 岡崎市美術博物館

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 『クエイ兄弟 ーファントム・ミュージアムー』展 @ 岡崎市美術博物館、観てきました。東京渋谷区立 松濤美術館に続き(当ブログレポート記事)、2回目だけれど、展示会場が異なり雰囲気はずいぶんと違って感じる。

 今回の最大の目的は、イベントのスペシャルトーク「クエイ兄弟の夢の世界」滝本誠氏と赤塚若樹氏講演の聴講。
 用意されたレジュメ(滝本氏のA4 3枚と赤塚氏のA3 2枚)とPCプレゼン資料と多くの映像。2時間(90分本篇。30分おまけ)に及ぶ深くて最新情報に満ちたクエイトークを堪能できました。
 会場の観客レベルをクエイマニアに設定されたような濃いトピック満載で素晴らしい講演でした。

 赤塚氏は主に東欧、特にポーランドアートのクエイへの影響について最新情報と関連作の動画等紹介。滝本氏は御自身のフランスでのフラゴナール博物館体験からクエイへの影響について、そして94年の渡英時のクエイ兄弟のアトリエ訪問写真紹介、フィラデルフィア近郊に育ったクエイと同時代にそこで青年時代を送ったディヴィッド・リンチとの共通性について。

 そして後半30分で、おふたりからのトレント・レズナーのナイン・インチ・ネイルズ PV Mark Romanek監督 "Closer" 、ターセム監督『ザ・セル』へのクエイのダイレクトな影響について。超ダイジェストに映像を見せつつの、とても濃くって興味深い話でした。


Nine Inch Nails - Closer (Director's Cut) - YouTube
 クエイ兄弟の映像に大きく影響されているナイン・インチ・ネイルズのPV"クローサー"。こちらのPV、冒頭他に刺激的なシーンがありますので、試聴は自己責任で

 詳細はいつものメモ魔で(^^;)、情報満載に記録したので、次の記事に掲載します。

 展示は松濤美術館になかったもの、そして前回も素晴らしく何度もその前に佇んでしまった撮影用のセットとパペットからなるデコールという立体展示、のべ4時間ほど会場にいて、じっくりと観覧させて頂いた。

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 特によかったのはデコール「この名付け難い小さなほうき」(右引用写真)と「変身」。特に後者はベッドの下で蠢く昆虫になってしまったザムサを描いたものだけれど、その部屋の雰囲気、蟲の造形等、素晴らしい闇の輝きである。滝本氏の発言にもあったけれど同様に持って帰りたい(^^)。
※写真は三菱地所アルティアムの記事から引用させて頂きました。

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 2012年の「変身」の映像ではこの造形の見事さが充分に表現されてないように見えて、これは造形物と合わせての鑑賞が必要かと。とにかくクエイの手になる創造物の存在感に溜息が出るばかり。
 「変身」は以下の動画作品だけれど、映像にはこのデコールの人形と部屋の造形が断片的にしか使用されていないため残念でならない。
※写真は This Week In New York から引用させて頂きました。

Metamorphosis - Mikhail Rudy / Brothers Quay - YouTube

 最後のコーナーにあった映画化企画中で、テスト的に作られているブルーノ・シュルツ原作『砂時計サナトリウム』の冒頭映像6分ほどが観られたのも嬉しかった(たしか松濤美術館にはなかったような記憶)。なかなか映画に恵まれていない最近のクエイ、なんとか実現することを祈りたいと思います。

◆関連リンク
・赤塚若樹氏twitter (@wakagi_akatsuka) 2018年5月6日

フランツ・カフカ  Quay Brothersの「変身 」 Google 翻訳.

"クエイ・ブラザーズの回顧の一環として現在ダン・ギャラリーで見られている一連の図を通し、1970年代半ばにカフカの最もよく知られた物語を映画化することを思いついた。 昨年、彼らはパリのシテ・デ・ラ・ムジークとロシア生まれのフランスのピアニスト、ミハイル・ルディにアプローチし、「変身」の適応に取り組んだ。 その結果、2012年3月に初演されたシンセシス作品は、 'アニメーションとライブアクションの組み合わせ、LeošJanáčekによるRudyの音楽パフォーマンスは、一緒に、Kafkaの物語に敬意を表する一方で、話題の全く新しい経験を生み出しています。"

オープニングイベント 上映会 & 講演会「映像作家クエイ兄弟の今昔」レポート(2) | 三菱地所アルティアム
 神奈川県立近代美術館 籾山昌夫氏の詳細な解説。深い話が掲載されているので、是非ご一読を。
■感想 双子がつくる悪夢的ビジョン「クエイ兄弟 ー ファントム・ミュージアム」展 The Quay Brothers Phantom Museum|松濤美術館

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2018.05.14

■感想 アンディ・ムスキエティ監督『IT/イット “それ”が見えたら、終わり。』


IT Trailer 2 (2017) - YouTube.

 アンディ・ムスキエティ監督『IT/イット “それ”が見えたら、終わり。』ブルーレイ初見。

 『スタンド・バイ・ミー』ミーツ ホラーというか、とてもキングらしいストーリーである。

 実は原作を20年以上前に読んだのだけれど(翻訳が出たのが1991年とのことで既に27年前! 期しくも本書で重要なキーワードになる「27年」と同じ年月である)、すでにほとんど忘れてしまっている。ので、とてもワクワクして全体を見終えた。

 まず青春映画としてよくできている。青春というか、子供から青年に移行する直前の年代の登場人物たちの心の動きを活写している。

 『キャリー』にもつながる、スクールカースト(嫌な言葉だ)的に言えば下層の、いじめられている少年少女の物語。それぞれが抱えている課題をそれとなく見せ、その7人の仲間が集まって戦いの体制を整えていくところの描写がなかなか見事。

 ホラーシーンも、ピエロのペニーワイズの持つ恐怖感。幻想性とリアリティのせめぎ合い。大人には見えていない描写等、ホラー映像の物語との拮抗も的確。

 原作を想い出してみると、この27年後の主人公たちグループの姿が描かれていたはず。続篇で描かれるだろう、彼らの姿も期待したいものである。

◆関連リンク
IT/イット "それ"が見えたら、終わり。 原作と映画の違い | MOJIの映画レビュー
 丁寧にしかもchpter2のネタバレも避けつつ、映画と原作との違いを分析されている記事。
IT (映画) - Wikipedia.

この作品の公開後、ピエロの存在を怖がる人々(道化恐怖症)が少なからず現れるようになったという。

道化恐怖症 - Wikipedia
 かならずしもこの作品だけが原因でないようですが、こういう病気が出てきているのはある意味凄い。映画によって精神的病が発症したというのは興味深い。
Andy Muschietti監督 - IMDb
Stephen King's IT (1990) - Georgie - YouTube.
 1990年の映像化作品、ペニー・ワイズが側溝から現れる冒頭のシーン。2017年作品とほぼ同じ展開を描いているが、恐怖感が映像によってパワーアップしていることがよくわかる。

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2018.05.09

■写真レポート 福井県立恐竜博物館

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 ゴールデンウィークに福井恐竜博物館へ行ってきました。
 前から行きたかったので、やっとという感じですが、44体の恐竜の全身骨格と千数百点の標本、そして大型復元ジオラマ、、、さすがに「国内最大」(よくある「最大級」でなく「最大」)と謳われているだけのことはある豪華さです。

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 未来的な宇宙船のような館内に展示された恐竜たちは、さながらノアの箱舟で未来へ連れてこられたような演出。10mに及ぶ巨大な「フクイティタン」ほか、この福井の地で発掘された復元模型も素晴らしいものでした。

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31648450_1985882771741307_625338193 そして中子真治さんが協力されたという(関連リンク参照)「ダイノギャラリー」と名付けられた恐竜イラストの展示コーナー(ここは残念ながら撮影禁止)。『超恐竜 恐竜アートの世界』で紹介されたイラストを直に見ることができて、これも感激でした。

 特にこの本の表紙に使われた右のイラスト。
 古代の息吹を感じさせるリアリスティックイラストに感嘆。
 今回、3Dハンディカムで、しっかり恐竜たちの立体映像を撮ってきたのでいつかYoutube等で公開したいものです。

◆関連リンク
・FPDM: 博物館バーチャルツアー - ダイノギャラリー
 (福井県立恐竜博物館 公式HP)

"恐竜アーティストも世界的に高い評価を受けている方ばかりです。画材も作風もさまざまで、油絵からアクリルや水彩さらにグアッシュやパステルといったものを使って描かれています。マーク・ハレット、ジョン・シビック、グレゴリー・ポールらの精巧な作品、パステルだけで植物食恐竜マイアサウラの生態を情感たっぷりに描いたダグラス・ヘンダーソンの作品、カナダの人間国宝の称号が与えられたエレノア・キッシュの遺作など、恐竜ファンだけでなく、芸術ファンの方にも十分な見応えがあるものです。さらに、しっぽを地面に着けたゴジラ型の姿勢をした恐竜を描いたウィリアム・シーリーの1960年代の作品など、その時代での恐竜研究により恐竜の背格好や風貌が異なってきていることがわかります。これらの作品は芸術的価値もさることながら、恐竜研究史的にも高く評価されるものです。

また、彫刻には映画「ジュラシック・パーク」(1993)で頭角を現したマイケル・トーシックの作品や「ジュラシック・パーク」でアカデミー賞特殊効果賞を受賞したスタン・ウィンストンが、この映画のために最初に基本制作したブラキオサウルス、ディロフォサウルス、ベロキラプトルが展示されています。何でここに展示されているのか!と目を疑いたくなるようなお宝です。"

ネオン集め その4 我が倉庫へ。 : 下呂温泉 留之助商店 店主のブログ

"1985年に恐竜画家ウィリアム・スタウトからプレゼントされた1枚の絵がきっかけで集めた恐竜復元画と復元彫刻のコレクションは、トヨタの池袋アムラックスホールで開催された『超恐竜展』のあと、福井県立恐竜博物館のダイノギャラリーという最高の環境で第二の人生を送っている。"

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2018.05.07

■感想 スティーヴン・スピルバーグ監督『レディ・プレイヤー 1』


'Ready Player One' Behind The Scenes - YouTube

 スティーヴン・スピルバーグ監督『レディ・プレイヤー 1』109シネマズ名古屋 IMAX 3D 字幕、観てきました。

 スピルバーグの子供心に満ちた楽しい1本。あれやこれや自分達が興奮した映画やテレビ作品のキーイメージのオンパレードで心地よい。物語はシンプルな、良くも悪くもスピルバーグ。主人公の想いと、仲間がだんだんとそろってきて、イッキに戦いに突入する心地よさは健在。

 映像はまさにIMAX 3Dの没入感がVRのジャックイン感覚を疑似体験させてくれて最高。一番前の真ん中席、取って良かった(^^) (名古屋ではE19席)。

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 VR世界OASISの映像は、わざとCGっぽいキャラクターだったけれど、2045年だったら、あと27年先なので、生々しいくらい人間っぽいキャラクター造形になっているだろう。そうするとラストの重要な「リアル」に関わるセリフとかが空疎に感じられる危険があってわざとCG的にしたのかもしれない。

 ここで描かれた体感スーツは別にして、2025年と言われても納得できてしまうくらいには現在に近いCG空間の映像。あと20年近く先の2045年だったら、どの程度進化しているか、と考えると空恐ろしく感じる。

 とはいえ、ここで描き出された3D IMAX空間の広がりは素晴らしく、こんなVR世界にジャックインできたら、それでもしばらく出て来たくなくなるなぁの出来w。

 3Dのメインスタッフとして最初にクレジットされていたのは、Stereo D社のYoichiro Aoki氏。IMAXとの相性も良く、快心の立体感。立体映画オタクには必見です。

 3Dで特に素晴らしかったのは、最初のOASISへ入っていくところの臨場感、各種ガジェット、そして「作家が気に入らなかった映画」(^^)の3D化、クライマックスの戦闘シーンの広大な空間感、どれも3Dによる大迫力に手に汗握らせて頂きました。
 今回の3Dシーンは、VR空間についてはCG映像で元から3D映像として作られたかと想像。実写シーンは2D-3D変換かと思われる。

 青木 洋一郎氏は、立体映像ブログ「3D3D3D」に時々コメントされているため、この映画について、お話ししてみたいものです。(と書いたFacebookの僕の書き込みにコメントを頂きました。恐縮です)

◆関連リンク
レディ・プレイヤー1 - Wikipedia
Yoichiro Aoki - IMDb

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