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2018.07.02

■情報 『フランシス・ベイコン・インタヴュー 』『ユリイカ 2018年7月臨時増刊号◎高畑勲の世界』

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デイヴィッド シルヴェスター『フランシス・ベイコン・インタヴュー 』(ちくま学芸文庫)
『フランシス・ベイコン・インタヴュー』解説  保坂 健二朗(ちくま公式)

" フランシス・ベイコンは自分の作品について次のように述べている。「具象的なものを、神経組織に対して、より暴力的に、そしてより鋭くもたらそうという試みなんです」(本書15頁、訳語は一部変更、以下同じ)。

 この短い言葉には大事なポイントが四つ含まれている。ひとつめは、ベイコンが「具象的なもの(figurative thing)」と言うとき、そこには人間像(figure)という意味が含まれていること。ふたつめは、ベイコンが自らの絵画作品の与える感覚は、観者の視覚/網膜にとどまらず、その神経組織(nervous system)まで辿りつくはずだと考えていたこと。"

 96年に単行本として『肉への慈悲 ─フランシス・ベイコン・インタヴュー』というタイトルで出版されていた本が、文庫化された。Amazonのマーケットプレイスで8000円ほどの値段が付きなかなか手が出せなかったので、この文庫化はとても嬉しい。

 豊田市美術館『フランシス・ベーコン展』を観て以来、どういう想い/考え方でこうした絵が描かれたのか、ベーコンの芸術活動に強い興味を持っていたので、読むのが大変楽しみです。

 特に上記引用文にある「観者の視覚/網膜にとどまらず、その神経組織(nervous system)まで辿りつくはずだと考えていた」というのは、まさに本ブログのテーマである「究極映像」そのものであるため(^^;)、心して異才の言葉に耳を傾けたい。

『ユリイカ 2018年7月臨時増刊号◎高畑勲の世界』

青土社 公式ページ

■図版構成 大塚康生のアルバム / 提供=大塚康生
■パクさんと―― パクさんと巡ったイタリアの旅 / 小田部羊一(聞き手・構成=叶精二)
アニメーション作家・高畑勲さんとの特異な出会いと知られざる教育活動 / 池田宏
トコトコ歩く / 竹内孝次
■批評家と実務家
高畑勲の批評性 / 福嶋亮大
すこしものたりないくらいの幸せ / 中田健太郎
五九年世代と「演出中心主義」――高畑勲と東映動画の〈長い六〇年代〉 / 木村智哉
民衆・女性・マイノリティ――高畑勲の映画における戦後民主主義のイメージ / 山本昭宏
■作品を作りながら考える
誰が描いても「高畑さんの作品」になる / 百瀬義行(聞き手・構成=叶精二) 『火垂るの墓』の赤い色は降魔色だった。 / 山本二三 TVにおける高畑勲の仕事 / 五味洋子
■演出という営為
6Pチーズをコンロの火にかざしてみたけれど――「名作文学アニメ」を完成させた高畑勲監督の仕事 / 津堅信之 他者との交渉――『赤毛のアン』『じゃりン子チエ』『おもひでぽろぽろ』 / 石田美紀 高畑勲の描いた「普通」と「理想」 / 藤津亮太 高畑勲と共感の倫理 / 八重樫徹
■高畑勲の“ことばたち”
プレヴェールというリアル――高畑勲訳および注解『ことばたち』をめぐって / 高畑勲+中条省平 躍動するスケッチを享楽する / 高畑勲(聞き手=中条省平)

■高畑勲をかたちづくるもの 人生の宝物――高畑勲を偲ぶために / イラン・グェン 一二世紀から二一世紀へ /土居伸彰 高畑勲のジャック・プレヴェール翻訳『ことばたち』 / 國枝孝弘 日仏におけるポール・グリモーという存在――制作者として、あるいは研究者としての高畑勲の視点から / 雪村まゆみ 高畑勲と今村太平『漫画映画論』 / 佐野明子 高畑勲の遺言 / 萩原由加里

■高畑勲の描いた絵図 絵の代わりに――高畑勲の描いたもの / 奈良美智(聞き手=蔵屋美香) 読み解く身体――『ホーホケキョ となりの山田くん』と『十二世紀のアニメーション』 / 細馬宏通 高畑勲と思考の演出術 / 石岡良治 高畑勲の孤独にしてラジカルな闘い――実写とアニメの境界で / 吉田広明 高畑勲作品の音楽語法 / 有吉末充

■監督の仕事と横顔 高畑勲との交差に至るまで / 片渕須直(聞き手=木村智哉) 草原に寝転ぶ人、あるいは狸。 / 叶精二 みずみずしく自由に / 坂口理子

■「漫画映画の志」に向かって 美しい悪魔の妹たち――『太陽の王子 ホルスの大冒険』にみる戦後日本人形劇史とアニメーション史の交錯 / 鷲谷花 春のほうへ / 髙山花子 『じゃりン子チエ』の心象地図――高畑勲の「ディープサウス」 / 酒井隆史 映画と大地の間にあるもの――『柳川掘割物語』その後 / 中谷礼仁 『火垂るの墓』の葬送するもの――戦争が壊した「大人たち」の権威 / 遠藤正敬 不快感と向き合うこと――『おもひでぽろぽろ』論 / 可児洋介 狸の物言わぬ屍に応答するために――『平成狸合戦ぽんぽこ』論 / 村上克尚 ボブスレーのアニメーション――『ホーホケキョ となりの山田くん』と『ジュラシック・パーク』 / 高瀬司 ■アニメーション監督の軌跡 高畑勲略年譜 / 叶精二

 東映動画からの同僚スタッフ、影響を受けられたアニメ監督各氏、高畑勲・宮崎駿作品研究所叶精二さん他、高畑監督ゆかりの方々による重厚な特集本。

 刊行されたこの週末に、最初から五分の一ほど読み進めましたが、僕が理解していた高畑作品像と別の姿が鋭く分析して語られ、大変興味深い内容になっています。
 読んだ中で特に素晴らしかったのは、文芸評論家 福嶋亮大「高畑勲の批評性」。例えばP36から以下引用する。

"どれだけ日常を精密に捉えていたとしても、高畑を幻想から解き放たれた自然主義的なリアリズム作家と見なすのは誤りである。あえて言えば、人間が常に幻想を伴侶としている現実を、歴史の地層とともに徹底して描こうとする、そこに高畑アニメのリアリズムがあるというべきである。ふ

 幻想を描くことにより立ち現れるリアリズム、この側面で高畑作品を見直してみたくなります。上でご紹介したフランシス・ベーコンと、「伴侶としての幻想」の観点で、まさか高畑勲が呼応するとは。

◆関連リンク
・当ブログ記事 感想(1) 『フランシス・ベーコン展 : Francis Bacon』@豊田市美術館
フランシス・ベーコン 当ブログ関連記事 - Google 検索

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