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2018.08.15

■感想 ベリンダ・サリン監督『DARK STAR/H・R・ギーガーの世界』


『DARK STAR/H・R・ギーガーの世界』予告編 - YouTube

映画『H・R・ギーガーの世界』オフィシャルサイト

"H・R・ギーガーは、チューリヒの中心部で、自給自足同然のパラレルワールドに住んでいた。それは「ダーク・スター」であるH・R・ギーガーを中心に据えた、別の宇宙であり、他のすべてのものは彼の周りを回っていた。時間からもぎとられ、閉ざされたシャッターの向こう側にあるこの宇宙では、昼と夜が溶け合っている。彼の王国について知る者は家族と親しい友人たち、数名のアシスタントのみである。彼はその世界を、愛するゆえに創ったのではない。人懐っこく控えめでユーモラスな男が恐怖心をコントロールするためにはそうするしかなかったのだ。だから彼は我々の悪夢を図面化し、我々の潜在意識の地図を描き、我々の初源的恐怖の鋳型を作った。"

 ベリンダ・サリン監督『ダークスター H・R・ギーガーの世界』WOWOW録画 初見。スイスのギーガーの自宅を主要撮影場所にして、晩年のギーガーの創作風景と私生活を描いたドキュメンタリー。

 特にギーガーの自宅の庭と室内、そこに置かれた作品群によって独特の「美的感覚」にあふれた情景が素晴らしい。これはギーガーのある意味、脳内世界の顕現だろう。

 特に子供の頃に衝撃を受けたという「幽霊列車」を、胎内道を見立てて描き出したオブジェ群。走る列車に嬉々として子供のような表情で乗っているギーガー。
 創作風景としても鉛筆でのスケッチ、エアブラシで実際のギーガーの手元からあの絵画が生み出される瞬間が記録されている。

 幼少期の姉とミイラを見に行った時の衝撃的な体験、3人のパートナー、特に自殺してしまった初めての妻リーとのエピソード、『エイリアン』撮影時ギーガー自身が自らの手でセットを作っているメイキング映像、晩年に自費を投入して作ったギーガーズバーとギーガー美術館の計画風景等々が生々しくギーガーの人とその脳内風景を描き出している貴重なドキュメンタリー。ファン必見です。

 映画の中で、「自分の中にある不安を絵や造形として表現することで、ギーガーは安心感を得ていたのではないか」というコメントがある。この言葉はすんなりと自分の中に入ってくることはなかった。このあたりのギーガー本人の言葉を映画の中で聴いてみたかったと思う。"Dark Star"ギーガーの闇の光のコアは、たぶん彼の死と共にこの世界から失われたのだと思う。

◆関連リンク
『DARK STAR H・R・ギーガーの世界』(ブルーレイ)
McFarlane Toys『H.R. Giger: LI II Limited Edition Sculpture』
 初めての妻リーをモデルにした絵「LI II」のフィギャア。これ、ほしいですね。
『マケット エイリアン スペースジョッキー』
 映画には、このスペースジョッキーを制作するギーガーの姿も動画で収められています。

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