■感想 ドゥニ・ヴィルヌーヴの長編第2作『渦』Maelstrom 2000
Maelstrom 2000 trailer - YouTube.
ドゥニ・ヴィルヌーヴの長編第2作『渦』WOWOW初見。
なんの予備知識もなく観始めたのですが、なかなか重厚な傑作。
冒頭のまるでアレクセイ・ゲルマン『神々のたそがれ』のような陰鬱な映像、沼地の木造建築の中で奇怪な魚をさばく男。そして映画はパリの街のひとりの20代の娘について、その魚が語り出すところから始まる。
その主人公マリ=ジョゼ・クローズ、その影のある姿は、どこかナオミ・ワッツに似ているというか『マルホランド・ドライブ』後半のあばずれ状態のワッツに酷似して眼の周りの隈がその陰鬱な状況を顕現。そして主人公の堕胎した胎児はまるで『イレイザーヘッド』の悪夢の再現。
物語にここかしこで登場する魚の姿。
魚と水が画面のトーンを昏く煌めかせ、ある男の事故死とその息子と主人公の恋。そうです、この映画は実は恋愛映画だったのです。二人の運命の奇想は、クライマックスでの恋愛感情の高まりをそのまま盛り上げて終わるのだけれど、その未来に横たわる気味悪い魚の姿。
これだけ陰鬱な恋愛映画はそうそう出会えません。
クローネンバーグを継ぐようなスタイルでこの長篇を撮ったカナダの秀英監督、やはりただ者ではありません。
今回WOWOWで初期代表作を放映したので、録画したそれら作品を紐解くのが楽しみでなりません。
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