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2018.08.20

■感想 細田守監督『未来のミライ』


「未来のミライ」予告3 - YouTube

監督メッセージ |「未来のミライ」公式サイト

"子供と、その親の子供時代は、時代こそ違えども、
じつはきれいな相似形を成していることに気づく。
  あれだけ反発した親と全く同じ言葉を、
親になった自分が子どもに言ってしまっていることにハッとなる。
  果てしない子育ての苦労は、実のところ、
自らの子供時代の視点を変えた生き直しなのかもしれない。"

 細田守監督『未来のミライ』@各務原イオンにて観てきた。

 僕には、残念ながら細田作品としてはつまらない部類の作品でした。丁寧な描写、コメディシーン、幻想的シーン等々、確かに見せるシーンは多々あるのだけれど、とても眠い出来。

 要するに、細田監督の子育ての記憶のディテイルを映画として定着させたいの? って思ってしまうようなモチーフがプンプン。うちも子供二人、映画の家族と同じ位の歳の差だったので、いろいろと想い出す諸処の描写は懐かしい。でもなぁ〜。かつての細田作品のエンタテインメントとしての映画の結構がないのが残念でならない。





★★★★以下ネタバレ注意★★★★





 映画冒頭で2回、この家族の住む港に近い街が俯瞰で映る。このシーンで家と海との距離に不穏さを感じたのは僕だけだろうか。

 主人公くんちゃんが前半でトリップする街に薄く溢れている水。ここで僕はもしかしてこの映画の舞台はクライマックスで津波か何かで水に沈む街なのか?と感じてしまった。

 後半駅のシーンで、海抜3mとかの看板が描かれていたり、そうしたほのめかすようなディテイルもそんな気持ちをフックする。

 なんでもない日常、過去から未来への連綿と繋がる人と人の連鎖。それらのかけがえのなさを描いている映画は、幻想シーンで色々な不穏なイメージが描かれることで、そうしたカタストロフを迎えるのか、と思ったのは僕だけの誤解だったのか。

 もちろんそのまま描けば、映画の骨格は、あまりに安直な構成と感じられるだろう(震災後映画とも呼ばれるアレやコレにあまりに似てしまう)。もしかしてそれを醸し出しつつ、最後でそこにまとめるのを避けたのか?? と考えるとクライマックスのカタルシスのなさは合点が行くが、、、、。

 『未来のミライ』と津波のキーワードで検索しても、そうした邪推に触れている感想はひとつも見つからない。なので、たぶん僕だけの妄想だったのでしょう。もしそんなラストを臆面もなくやっていたら、どういうイメージの映画になっていたか、想像してしまうのでした。

 以上から、これはもしかしたら、ひとつの震災後映画なのかもしれない。

 なんでもない日常、過去から未来への連綿と繋がる人と人の連鎖を断ち切る、関東圏、横浜での震災の予感を描いているのかも。ということは、ミライの未来は実は来ないのかもしれない。時空が交差するシーンは、そうした災害により失われてしまった過去と未来の走馬灯なのかもしれない。

 と考えると、細田監督があえて、私小説的にディテイルを描いたのもある程度納得できる気がしてきました。

 とはいえ、僕はこの映画、あまり「好きくない」ですが、、、(^^;)。

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