■感想 黒崎博脚本・演出『容疑者Nと刑事の15年』 NHKスペシャル | 未解決事件 File.07 警察庁長官狙撃事件
NHKスペシャル | 未解決事件 File.07警察庁長官狙撃事件容疑者Nと刑事の15年
"この日は、「実録ドラマ」で描き出す。 執念の捜査で犯人を追っていく刑事役に國村隼さん。別の強盗事件がきっかけで容疑者として浮かび上がった男役にイッセー尾形さん、警視庁トップ、警視総監役に小日向文世さん。日本を代表する名優たちがしのぎを削り合う「実録」にして「本格派」。「未解決事件シリーズ」ドラマの新境地を開く。"
黒崎博脚本・監督『容疑者Nと刑事の15年』、力作でした。
押井守の映画音楽を手がける川井憲次のサントラをバックに描かれる現代警察事件の闇。まるで『パトレイバー THE MOVIE』の帆場暎一のように霧散していく犯人像。
警視庁捜査第一課元刑事・原雄一を演じた國村隼、容疑者N 中村泰を演じたイッセー尾形の熱演と、黒崎脚本による「虚構」と「真実」のせめぎ合い。
昨年の是枝裕和脚本・監督『三度目の殺人』の影響もあるかもしれない。三隅(役所広司)ほどではないが、掴みどころのない中村(イッセー尾形)の描写は影響を受けているような気がする。
で、興味深いのは、このドラマが現実をベースにしていること。まだ謎は明らかになっていない。
先週のドキュメンタリーのラストからは、NHKはまだこの資源を取材し続けている。今後の展開にも期待したいもの。
◆関連リンク
・原雄一『宿命 警察庁長官狙撃事件 捜査第一課元刑事の23年』
・警察庁長官狙撃真犯人「捜査秘録」 原雄一×江川紹子 | 文春オンライン
原雄一元刑事の証言。
これを読むと今回のドラマの各々のエピソードが実際に原氏が警察内部で経験したことを元にしたのがわかる。
それより面白いのは、原視点では中村は思想犯、自分が革命家であるというフィクションを作りたがっている殺人愛好家である、と分析しているところ。
ドラマでは隠し続けた事件当日の共犯者の名前を明らかにしなかったのは、自分の物語を崩してしまう、ただ金が欲しかった共犯者であることが明るみに出るのを恐れてのことだったのではないか、と推定し語っている。
ドラマは、全体として中村の革命家的物語を意図してか意図なしにかわからないが、番組としての強度を高めるために(?)、そうしたフィクションを結果的に補強してしまったように見える。
現実とドラマの関係性が、メタレベルで、この事件が複雑化しているのを地で表現してしまったようでとてもスリリング。
・警察庁長官狙撃事件「真の容疑者」中村泰からの獄中メッセージ(原 雄一) | 現代ビジネス | 講談社
そしてこちらは、獄中の中村泰による、原雄一『宿命 警視庁捜査第一課刑事の23年』レビュー。
この第三者的筆致、すごく面白い。現実は小説より奇なり。
・警察庁長官狙撃事件の真犯人を支援した男の「正体」(原 雄一) | 現代ビジネス | 講談社
事件当日の共犯者について、原氏が自著にあえて変えて記述した仕掛けに、本当の共犯者かもしれない男から連絡が入った経緯。
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