■感想 黒沢清監督『予兆 散歩する侵略者 劇場版』
映画『予兆 散歩する侵略者 劇場版』予告編 - YouTube
" 「もうすぐ世界が終わるとしたらどうする?」
《概念》を奪う「侵略者」はほかにもいた。 映画『散歩する侵略者』から生まれた恐怖と驚愕の侵略サスペンス。
「侵略者」がやってきたそのとき、別の街では何が起きていたのか? 黒沢のそんな着想から生まれた本作では、新たな設定、キャストでアナザーストーリーが語られてゆく。
黒沢に「神がかった熱演」と言わしめた彼らの演技から目が離せない。 常軌を逸していく世界で、ただひとつ揺らがないものとは― 今、新たな物語が始まる。 "
" ほぼ三人だけのキャストで、侵略の予兆というテーマに挑みました。ごく身近な人間が、家庭や職場が、世界全体がゆっくりと確実に変貌していきます。やがて誰もいなくなった街の中で、夏帆さん演じる主人公は何と直面し、どのような決意を持って先に進んでいくのでしょうか。壮大で身の毛のよだつ出来事が、可能な限りリアルに描写されています。"
同じ黒澤清監督による映画『散歩する侵略者』のスピンオフドラマ(WOWOWで放映)を映画版としてまとめて公開したもの。ドラマでは40分×1回+30分×4回であったものを140分にまとめてある。ドラマ版を先に観ているが、ほとんど内容としては同じと思う。ただし各話の OP, ED がなくなり違和感なく繋がれた連続した140分の作品として、緊迫度と不穏さは増しているように思う。
この作品のポイントは、概念を奪うということの不気味さと、侵略の"予兆"が漂う日本のなんでもない光景の持つ異様さである。
なんどか黒沢清映画の感想で書いている、通常の日本のなんでもない日常を写した映像に付与される不穏な空気感。光と影、そして画面レイアウトで醸し出される黒沢映画独特のそんな空気感が最大限に発揮された素晴らしく、不安さを湛えた侵略の予兆を描いた傑作といえよう。
『ウルトラQ』等のウルトラシリーズで描かれていた侵略の恐怖、それを現代のリアルな空間で最大限再現し、そしてそれを見事にブローアップして見せた黒沢清と脚本の高橋洋の手腕の凄み。
東出昌大のまさに異界から来たような幽玄なサイコ演技はもちろんだけれど、それを受け止める日本の良識的リアルを体現している夏帆の芝居、そしてその狭間で異界へだんだん取り込まれていく様を見事に演じている染谷将太。
この3人の演技と日常の切り取り方だけでここまでの侵略ものの前哨を不気味に描いた映画は、リアルSF映画好きには超お薦めです。
週末に来襲した台風24号が現在我が地方にも迫っていますが、そんな不穏な空気の中、映画を観終わって見上げた空は、まさにこの映画のラストと強く共鳴していました。
◆関連リンク
・前川知大『散歩する侵略者』(Amazon)
"海に近い町に住む、真治と鳴海の夫婦。真治は数日間の行方不明の後、まるで別の人格になって帰って来た。素直で穏やか、でもどこかちぐはぐで話が通じない。不仲だった夫の変化に戸惑う鳴海を置いて、真治は毎日散歩に出かける。町では一家惨殺事件が発生し、奇妙な現象が頻発。取材に訪れたジャーナリストの桜井は、“侵略者”の影を見る―。再演を重ねる人気舞台を、劇作家自ら小説に。黒沢清監督による映画化原作。"
・前川知大『 DVD 演劇 イキウメ 散歩する侵略者』(Amazon)
原案、原作となった演劇のDVD。これは是非観てみたい。演劇の限られた空間であの不気味さがどう表現されているか、観たくてたまらないです。
・黒沢清監督『散歩する侵略者』(Amazon)
・黒沢清監督『予兆 散歩する侵略者』(Amazon)
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