■感想 原將人監督『双子暦記・私小説』ver. 2.5
" 『双子暦記(れっき)・私小説』 上映時間110分 12月6日(木)19:00 上映
63歳にして双子の姉妹の父となった映画監督原將人。
双子誕生を紀元とし、双子暦の世界に分入った原は、自ずと「新たなる宇宙と地球の歴史」を辿り直すことになり、21世紀を生きてゆく地球人、とりわけ日本人にとって必要な世界観が、<双子暦記>シリーズで展開される。
本作では、古都京都を舞台に、双子を育てる生活費を稼ぐため、原が人生初めてのフリーター生活を送り、現代日本のブラックな労働現場を点々とした<苦難の旅>が、私小説、プロレタリア文学へ傾斜しながら描かれる。
さらに、原が詠んだ八十首の和歌が、平安以来の日記文学の伝統と交差しながら全編を織り成す。新生児の映像に重ねられる、4歳になった姉妹による和歌の朗読は、運動イメージとしての映像から、テキストと音の厚みのなかで時間イメージを生成させ、至福の映画体験をもたらす。
本作は、<メタフィクション>として、真にエポックメーキングなドキュメンタリーの最尖端をさぐる。
2018年/110分/カラー/日本"
【予告編16本 一挙見!】東京ドキュメンタリー映画祭2018最終選考作品 - ニコニコ動画
リンク先に予告篇があります。『双子暦記・私小説』は一番最後の部分 31'36"からです。
原將人監督の東京ドキュメンタリー映画祭 長篇グランプリ受賞作『双子暦記・私小説』をYoutubeの限定公開で全篇拝見しました。 今回は支援者への限定公開、制作プロセスを公開されているもので、バージョン2.5 (19.1/19,20 シネマハウス大塚でのライブ音源ミックスの音楽有バージョン)(グランプリ受賞は音楽なしのver.1.5とか)。
限定公開版を観るには、以下のサイトで火災に遭われた監督への支援の呼びかけを読まれ支援された上で、原監督のtwitterもしくはFacebookで限定公開版の希望のメッセージを送られると、URLを原監督より教示頂けるはずです。
原監督からのご返事にあるテキストを一部紹介させていただきます。
"『双子暦記』は、『双子暦記・私小説』と『双子暦記・星の記憶』の2部作を 予定しておりますが、『双子暦記・私小説』の方から、編集過程をオープンに することにいたしました。現代美術ではWIP (Work In Progress)という完成 までのプロセスを作品とみなす、展示方法が登場していますが、その映画版で す。"
映画は、2013年に誕生した原監督の双子の娘さん マミヤちゃんとカリンちゃんの誕生から約半年間を中心に描かれている(一部4歳の御二人も登場)。
そして前半は、原監督が古都京都を舞台に初めてのフリーター生活を経験された、現代日本のブラックな労働現場が語られている。特にその一部、「現代の蟹工船」として描写されている部分は、大変に過酷な内容。まさに現代の日本に生きていくということの重さを生々しく描きだされている。
後半、時間が遡って2013年の双子ちゃん誕生シーンからの成長の記録になるが、ここは映画で語られている通り、原監督の傑作『20世紀ノスタルジア』のラストで主人公チュンセとポウセの間に生まれた双子のその後を描くという、『20世紀ノスタルジア』続篇の趣もある。
特に素晴らしいのは、双子の記録に挟まれる原監督による80首の和歌と、日本の美しい自然の風景。
この三重県名張市,津市シーンは、『20世紀ノスタルジア』で都市と対比して瑞々しく描かれたポウセ(遠山杏)による身の回りの自然の光景を捉えた映像の数々を思い出させる。自主映画を撮るチュンセ(片岡徹)の姿で象徴的に描かれた、人類の脳の進化の果ての姿とその苦悩。
まるで地球のアウフヘーベンの様な、ポウセの撮った映像で、回復していくチュンセの姿が映画の映像の力を見事に描いていたように、本作でもこれらの三重県の山村の映像が、双子ちゃんの生き生きした姿とともに地球の希望の姿として描き出されている。
『20世紀ノスタルジア』の続篇として、ファンとしてはこうしたシーンに胸躍らせながらも、前半含む原監督の家族が遭遇する過酷な現実に、日本の現在の辛い姿をいろいろと想起しながらいろんな複雑な思いで観終える、1時間47分の地球の旅の記録となっていました。
◆関連リンク
・21世紀を音楽の世紀に! 『20世紀ノスタルジア』の原 將人監督の最新作「双子の星」始動! - クラウドファンディングのMotionGallery
・【News】自宅が火災! 原將人監督への支援の呼びかけ | neoneo web
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