■感想 山田太一『男たちの旅路』最終話「戦場は遥かになりて」他
山田太一『男たちの旅路』、ちょっと前にNHKで1-3話が再放送された際に観はじめて、録画してあったDVDで全話を十数年ぶりに見直した。
写真は最終話「戦場は遥かになりて」(BS2での再放送録画版)のOPと冒頭部分。このドラマが放映された1982年の4年前にヒットした『さらば宇宙戦艦ヤマト』が10カットほど動画で流される。(しかもノンクレジットなのである。気骨があったNHKということだろうか?)
鶴田浩二演じる特攻隊生き残りのガードマン会社の吉岡司令補が、第一作「非常階段」で若いガードマンに戦争体験を美化して語るのに対して、最終話「戦場は遥かになりて」では戦友に美化してはいかん、あの頃俺たちは…と戦争に突入して行った日本の実情を生々しく語らないといけない、と話すようになり変節している。これは第4部の1話「流氷」で水谷豊演じる杉本陽平が吉岡を北海道から連れ帰る際に、あんたらには戦争がどんな風に起こったのかを語る責任がある、と訴えたシーンの、山田太一の結論と見ることができる。
ヤマトの映像はOPで流されるだけで、当時の世相についてもドラマ中で何も語られないが、この吉岡の発言から、ヤマトの特攻シーン、当時ブームになり好戦的な雰囲気が(特に制作側に)あったこと等から、批判的に引用されてるのは明らか。
よく引用が許されたものだと思う。DVDでは戦争映画のポスターか何かに差し替えられてるらしい。ネットにもこのOPの画像は存在しないようなので、1つの記録として掲載します。
この物語が上記のような吉岡の戦争感の変節を描いたものなのに、なぜかドラマのクライマックスは自衛隊協力のUS-1を使った、このドラマシリーズらしからぬスペクタクルな雰囲気で終わっていく。もちろん自衛隊が救命隊として日本の生活に軍事的でなく有益に働いている、という非戦的な描写と考えることもできるけれど、なんだかこの勇壮な雰囲気でドラマの本筋が鑑賞後に余韻としてあまり残らない感じになっていたのは何故なのだろう、とか考えてしまった。
最後に個人的なこのドラマの影響について蛇足的に書くと、学生時代に熱中して見ていた『男たちの旅路』を今回全篇観直して、本業の会議の時に時々自分の中に沈殿した司令補が熱い発言(もちろん戦争についてではないですw)をしてしまうのを感じたりするのでした(^^;;)。
◆関連リンク
・「男たちの旅路スペシャル・戦場は遥かになりて」(ブログ「フルタルフ文化堂」さん)
上記感想は、リンク先のブログ記事を参考にさせて頂きました。
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