■感想 古川日出男『平家物語 犬王の巻』
"時は室町。京で世阿弥と人気を二分しながらも、歴史から消された能役者がいた。その名は犬王――鳴り響く琵琶は呪いか祝福か。窮極の美を求めた異貌の男の一生が物語られる。平家物語異聞。"
古川日出男『平家物語 犬王の巻』読了。
湯浅政明監督による映画化の報に触れてから読んだという、古川奇想小説ファンとしては恥ずかしい状況ですがw、能と琵琶の物語世界を、古川独特のスピード感ある文体で堪能できる傑作でした。
ここでも、古川日出男の朗読を聴くと顕著に分かる演劇的な文体と、いにしえの物語を語る物語の絶妙な適合が、他にない小説空間を作り出しているのですが、犬王という呪われて能の家庭に生まれた若者が、自ら兄たちを観て必死に舞を覚えることで霊を祓い浄化していく様が、この小気味好いリズムの文体で清々しく体感できることで、読者の何かも浄化されるような気持ちのいい小説になってます。
先日観た湯浅監督最新作『きみと、波にのれたら』 が、やはり気持ちのいい空間を提示してたので、ますます楽しみなコラボになりました(^^)。
"映画『犬王』
公開時期:2021年予定
原作:「平家物語 犬王の巻」古川日出男著/河出書房新社
監督:湯浅政明
脚本:野木亜紀子
キャラクター原案:松本大洋
アニメーション制作:サイエンスSARU古川日出男コメント
私が書いたのは芸能についての小説だ。芸能とは歌であり演奏であり、感情、感動である。私は文字だけでその物語化を成し遂げようと試みた。今回、それらは一冊の本の内側から解き放たれる。すなわち音が、声が、色彩が。それから感情が、もちろん感動が。その監督やその脚本家やそのキャラクターの設計家や、音楽家や、その他その他によって、それらはついに放たれるのだ。湯浅政明コメント
歴史にはわずかにしか書き記されていない、「犬王」という猿楽師を大胆に解釈された古川さんの物語。野木さんの脚本。松本さんのイメージ。・・・これは面白くなるしかないですね。楽しみにしててください!"
そして映画情報は現在のところ以上です。
松本大洋と湯浅政明のコラボレーションというのも興味深いですが、ミュージカルというのが最大の期待。
『きみと、波にのれたら』の歌のシーンが素晴らしかっただけに、この能と琵琶を主題にした物語で、その音楽劇がどのようなものになるか、楽しみでなりません。2年先というのは首が長くなりますが、まずは湯浅監督の『映像研には気をつけろ!』を20.1月からテレビシリーズとして楽しみながら待ちたいと思います。あ、その前に早くNetflixに入って『DEVILMAN crybaby』を観なきゃ(^^;)。
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