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2019.08.28

■感想 パク・チャヌク監督『渇き』


映画『渇き』予告編

" 2010年2月27日(土)より。
 人体実験によってバンパイアになった牧師と人妻との禁断の情事を叙情的かつ暴力的に描くスリラー作品。『オールドボーイ』のパク・チャヌク監督がメガホンを取り、2009年カンヌ国際映画祭の審査員賞を受賞。敬虔(けいけん)な神父から一変、血と欲望のとりこになるバンパイアを『シークレット・サンシャイン』の韓国の演技派俳優ソン・ガンホが演じる。人間の業を鋭くえぐり出しながら、ところどころにユーモアなどを織り交ぜた独特の世界観を楽しみたい。"

 前知識なしにWOWOW録画で観たのだけれど、これはなかなかの傑作ですね。
 韓国映画が苦手でパク・チャヌク監督作は『お嬢さん』のみしか観てないので、お恥ずかしい限りなのですが、奇跡 / 神 / 吸血鬼の合わせ技でこのような奇想映画を撮ってしまうとは、並々ならぬ才能ですね。

 猟奇とコメディと宗教というと、日本では園子温監督を思い浮かべてしまうのだけれど、『愛のむきだし』ミーツ『冷たい熱帯魚』みたいな作風ですね。要するに強烈で妙な笑いを誘発する、というか。だけれども人の想いがピュアだったり、、、。その監督には『東京ヴァンパイアホテル』という吸血鬼ものの怪作があるけれど、SF的情景としては、本作のラストシーンの素晴らしい朝焼けシーンには遠く敵わないかも。というくらい、このラストシーンは痺れました。

 ソン・ガンホが『グエムル-漢江の怪物-』『タクシー運転手 約束は海を越えて』での役柄とはかなり趣を変えて(どちらかというと二枚目寄り)、ハードでブラックコメディなバンパイヤ役を見事に演じている。黒でまとめた様相は、ある種、かっこいいとも言える。パク・チャヌク監督の造形力だろうか。

 エンドクレジットにエミール・ゾラ『テレーズ・ラカン』 にインスパイアされたとあるが、以下のようなストーリー。

エミール・ゾラ『テレーズ・ラカン』

"湿っぽく薄汚れたパリの裏街。活気のない単調な日々の暮しに満足しきっている夫と義母。テレーズにとって息のつまるような毎日だが、逃れる術とてなかった。だが彼女の血にひそむ情熱の炎はそのはけ口を見出せぬまま、ますます暗い輝きを増してゆくのだった。そうしたある日、はじめて出会った夫の友人ローランにテレーズのまなざしは燃える。"

 まさにテジュの家族設定に活かされているのですね。
 最後にヒロイン テジュを演じたキム・オクビンの妖しい美しさが本作の白眉、と書いて、本稿を終えたいと思います(ただ好きな女優さんになったというだけですw)。

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