■感想 平野暁臣編著『太陽の塔』
"再生を果たした太陽の塔の真髄に迫る
2018年3月に恒久的なミュージアムに生まれ変わる太陽の塔。
既刊『岡本太郎と太陽の塔』とおなじく、貴重なヴィジュアル資料を豊富に収録するとともに、新たに発掘された種々の秘蔵史料を初公開。太陽の塔の制作状況を時系列で追った250枚におよぶ「実録・太陽の塔」をはじめ、本書が備える高い資料価値は、一般読者のみならず図書館や学校、研究者等の期待にも応える内容となっています。また、今回の「太陽の塔再生プロジェクト」を指揮した著者自らが著すプロジェクトの記録は後世に残すべき資料となりました。
さらに建築家・磯崎新、作家・森見登美彦、文芸批評家・安藤礼二の論考も収録。多面的な角度から太陽の塔を読み解くヒントを満載しています。"
平野暁臣編著『太陽の塔』読了。先日の太陽の塔の内部見学の衝撃から、建造当時の様子を知りたくて読んでみた。多数の当時の写真と平野暁臣氏による渾身の長文レポート「実録・太陽の塔」が素晴らしい。
写真で特に興味深かったのは、現在のリビルドで再生されなかった地下空間と空中展示の概要がわかったこと。それぞれ、人の原初的な無意識領域と進歩の先の未来を描いた展示で、中間の太陽の塔と生命の樹をセットで本来の万博テーマ空間が表現されているわけで、見学できた部分に組み合わせてイメージすることで、岡本太郎の構想にちょっとだけ近づくことができた感触。
平野暁臣氏の「実録・太陽の塔」は、岡本太郎の著作や対談、当時の公式記録、新聞記事、岡本敏子さんのメモ等から丹念に時系列でドキュメントとして描き出した労作。コンセプトの誕生から、岡本太郎のテーマ館プロデューサー就任の過程、精力的な組織編成と世界を飛び回ってのプロデュースの生々しい再現。まさに岡本太郎の強い想いの具現化の軌跡がトレースできて、より立体的に太陽の塔の全体像に近づくことができる。
◆関連リンク
・平野暁臣さんに聞く『太陽の塔』と『明日の神話』のストーリー(ほぼ日)
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