■感想 テリー・ギリアム監督『テリー・ギリアムのドン・キホーテ』:The Man Who Killed Don Quixote
THE MAN WHO KILLED DON QUIXOTE Official Trailer (2018) Adam Driver, Terry Gilliam Movie HD
ついに待望のテリー・ギリアム監督執念の作品『ドン・キホーテ』(原題 : ドン・キホーテを殺した男)を観てきた。名古屋でも2-3館と極限定的な公開、しかも月曜に僕が観たミッドランドスクエアシネマ名古屋空港では、観客は5人ほどと寂しい状況。Facebook等でもあまり語られていなくて残念なのだけれど、作品にはかなり満足できたので、簡単ですが、リポートします。
映画は、まさにテリー・ギリアム印で、孤高の主人公と周囲の人間たちとの乖離、そして忍び寄る幻覚による幻想的な光景という往年のギリアム映画を彷彿とさせる仕上がり。最近作の薄味に少々物足りなさを感じていたので、濃厚ギリアム味に満足。
★★★★★★★ネタバレ注意★★★★★★★
ジョナサン・プライスの"ドン・キホーテ"と、アダム・ドライバーの演じる映画監督トビーの設定と演技がなかなか素晴らしい。
プライスの惚けたユーモアと、ドライバーのアクの強い演技が、スペインの地のドタバタ幻影劇を分厚いイメージとして描き出している。
欲を言えば、全盛期のギリアムだけに描ける現実に裂け目を穿つ様な独特の強い幻想が、やはり今作でもまだ絶好調とは言い難い。ここはもっとこってり描いて欲しい、というところが少々消化不良になっている感が、、、。こうしたところは、個人の持つ/幼少期から溜め込んだ業の様な頭の中のイメージが、年齢と共に衰えてくる様なことが、やはりギリアムほどの人でもあるのだろうか、と考えてしまう。
制作が紆余曲折して、その間にイマジネーションが他の作品に漏れ出てしまったということもあるかもしれないし、また予算的な問題なのかもしれない。
しかし老境に達したギリアムにしか書けないドン・キホーテの老人描写とか、なかなかの味わい。ジョニー・デップが当初当てられていたというトビーの役も、アダム・ドライバーという個性を得られたことで、オリジナリティの溢れるキャラクターが描出されていた。
観終わったところで、完成しなかった本作の以前の制作過程を追ったドキュメント『ロスト・イン・ラ・マンチャ』をみて、過去のギリアムの構想にも触れてみたいものだ。
ポスターには二人の顔をフューチャーしたものが多い。この役者二人の個性のぶつかりが本作の最大の見どころかもしれない。
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