■感想 アルフォンソ・キュアロン監督『ROMA/ローマ』 と メイキングドキュメンタリー『ROMA/ローマ 完成までの道』
アルフォンソ・キュアロン監督『ROMA』@Netflix初見。
『ゼロ・グラビティ』の宇宙に続き、キュアロン監督が選んだ映画の舞台はメキシコシティ。『ゼロ・グラビティ』もドキュメンタリータッチではあるが、一人称的だったのに比べ、本作はメキシコシティの医者の家族に視点を据えて、この街の人々と雑踏を描き出している。
前作よりもドラマ性を排した(?)、日常を淡々と描くタッチが魅力的。特に保育学校を出て俳優としての修行なしに主役クレオを演じているヤリッツァ・アパリシオの普通の演技が素晴らしい。ドラマ的にならずドキュメンタリーとして見れる要因の大きな部分を占めていると思う。
『ローマ』予告編|Roma - Trailer HD
そして映像/演技とともに素晴らしかったのが、雑踏を立体的に描き出している音響。5.1chの音響で本当に雑踏360度からメキシコの街が体感できる様な立体的な音が伝わってくる。その威力たるや、一緒に観ていた2匹のうちの猫が、物音に警戒してスクリーンと別の方向を凝視するレベル。
まさに音響の360度VRというべき映画であったので、映像も360度のVRにより撮られていたらと思わざるを得ない。もしそうした映画がネット配信とともに実現していたら、、、。いつも映像の臨場感を追求するキュアロンならば、次作はそうしたアプローチも期待できるのではないか。まさにその場にいる様な臨場感のあるドキュメンタリー的VR映画。そうしたものを大いに期待したいと思わせるタッチの映画でした。
『ROMA/ローマ 完成までの道』(Netflix)
"2020年 1時間12分 中南米映画
子供の頃の思い出とその時代を忠実に再現するために、アカデミー賞受賞映画「ROMA/ローマ」で貫いた妥協を許さぬこだわりをアルフォンソ・キュアロン監督が語る。"
メイキングドキュメンタリー『ROMA/ローマ 完成までの道』@Netflix。アルフォンス・キュアロンがこの中で語るのは、自分の幼少期の町を記憶から細部に至るまでセットとして再現したとか。
そして更には近所の住人も似ている人を探したらしい。これは黒澤もやったことのない徹底的な完全主義かもしれない。凄い。
そんなキュアロンの記憶がモノクロの映像に結晶化した凄みがあの映画には宿ってたんですね。脚本もなしで、自身の記憶と対話しながら作られた映像世界。独特の空気感はこの制作方法によって構築されたものだったのですね。不思議な仮想空間感覚はそんなところから醸し出されていたのかもしれません。
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