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2020.04.01

■感想 キース・フルトン, ルイス・ペペ監督『ロスト・イン・ラマンチャ』


『テリー・ギリアムのドン・キホーテ』【1月24日(金)公開】特別映像&『ロスト・イン・ラ・マンチャ』予告映像

 キース・フルトン, ルイス・ペペ監督『ロスト・イン・ラマンチャ』WOWOW録画初見。

 公開された『テリー・ギリアムのドン・キホーテ』を観てから随分と間が空いてしまったが、2000年に頓挫したギリアムの映画制作を追ったドキュメンタリーを観た。

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 61歳のギリアムの映画にかける姿が克明に見られる貴重なドキュメント。考えたら、ほとんどギリアム映画のメイキングは観たことがなかったので、この映画の中盤で描かれている、才気あふれ、稚気丸出しで自らのイマジネーションを膨らませて映画を構想するギリアムの姿はとても眩しかった。中盤の撮影直前の引用した写真辺りが特に素晴らしい。

 ドン・キホーテの衣装合わせでのジャン・ロシュフォールの目を讃えるギリアムの言葉。「最高だ 大傑作になるぞ。表情が実に素晴らしい、特に目が印象的だ。見事な演技、衣装、セット、ロケ。並外れた映画になる。美しく、そして同時に恐るべき作品となる」。

 ドキュメントでここまでに描かれていた巨人のカット、ギリアムのイメージスケッチ等を見ている僕の頭の中に、確かにギリアムが幻視していたイメージが少しだけ垣間見えて、その「並外れた映画」が瞬間、立ち現れる。この役者とこのタイミングでのギリアムとそしてスタッフのみで撮れたであろう幻の映画がここで解凍され観客の頭の中に展開される。

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 2020年の日本の現実に現れた『テリー・ギリアムのドン・キホーテ』は、ストーリーもここからは大きく変貌し、役者もジャン・ロシュフォール、ジョニー・デップから、ジョナサン・プライスとアダム・ドライバーに変化し、そして監督したギリアムも70代後半になって、そのイマジネーションと制作モチベーションも変化している。

 ジョナサン・プライスとアダム・ドライバーによる新しいドン・キホーテも現実が捻れる幻想性を獲得し、なかなか素晴らしい映画であったけれど、今回少しだけ幻視した「並外れた映画」ではなかった。この映画が完成しなかったのは残念でならないが、ここで描かれた苦難の末に完成したとしても、ギリアムのイマジネーションはかなり制限されたものになっていただろうことが想像できるため、今となっては完成しなかったのが良かったのか、悪かったのかは正に映画の神のみぞ知るである。

◆関連リンク
テリー・ギリアムのドン・キホーテ(wiki)
 こちらにギリアムのチャレンジの歴史の全体像が、書かれています。

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