■感想 スパイク・リー監督『ドゥ・ザ・ライト・シング』
スパイク・リー監督『ドゥ・ザ・ライト・シング』 Amazonプライム初見。
実に恥ずかしいことにスパイク・リー作品は初めて。この映画のVHSソフトをパッケージのカッコ良さでレンタル落ちのものを買ってあったのに、何と積読になっていたという、、、。
で、今回のアメリカの事件と運動に関連して、初めて観てみたという訳です。
まず思ったのが、高城剛監督が深夜ドラマ『バナナチップス・ラブ』(1992)において全篇ニューヨークロケで描いたいろんなシーンが、『ドゥ・ザ・ライト・シング』(1989)にインスパイアされた(パクリとも言うw)ものだったんだ ! ということ。
当時、あのドラマの斬新さに凄く刺激を受けてしばらく高城剛をネットとかテレビで追いかけていたことがあるんですが、そのルーツが『ドゥ・ザ・ライト・シング』だったとは !
画像は『バナナチップス・ラブ』より。
『バナナチップス・ラブ』にはスパイク・リーの弟 サンキ・リーがレギュラーで出ていたので、まさにインスパイアということなのだろうけれど、今回、僕が観た印象は、高城剛の演出の方が、スパイク・リーよりもエッジが効いていたんじゃないか、ということ。
ここは一度、録画してある『バナナチップス・ラブ』を再見して確認してみないと。
◆ 本篇感想
というわけで、ここからまずこの映画の感想です。
ブルックリンの黒人街の、街の人々の個性が素晴らしい。
「市長」と呼ばれるホームレスの老人とおばあちゃんとの掛け合い。街をたむろするラッパーたち。日がな一日ダベっている3人の中年。ラジカセを大ボリュームで流す若者。そして一日12時間話し続けるDJ。
こうした魅力的な黒人たちの生活と、対比して描かれるピザ屋のイタリア系アメリカ人の親子。間を往還するスパイク・リー演じるピザ屋の不良アルバイト ムーキー。
ラップとジャズの軽快な音楽とともに、コミカルにそして斬新な映像と独特のリズムある編集で描かれるブルックリン。所々に挟まれる白人との緊張感。そして迎えるクライマックスの悲劇。
ここで描かれているのは、2020年の現実にミネアポリスで起きた警官による黒人殺人事件と比べると、明らかな差別による殺人というよりは、もう少し日々の小さなヘイトの積み重ねによる、ある意味偶発的な悲劇である。それは映画冒頭から描写されている異常なNYの暑さが人を狂わせた結果でもあるかの様に、この映画では描かれている。
こうした描写は、もしかすると現実のシビアな迫害を映画というエンターテインメントの中に格納するためにスパイク・リーが選んだ手法なのかもしれない。
この当時と今を比べた時の差別の度合いがどの程度、温度差があるのか、僕にはそうした知識はないが、当時ここまで描いたことは、相当な勇気を伴った行動だったのだと思う。
以降、現在まで続けられている警官による殺害。
スパイク・リーが今回の事件でどういうコメントを出しているのかも知りたいと思った。
◆関連リンク
・スパイク・リー監督、白人警官の黒人殺害事件を受けてショートフィルムを発表「歴史は繰り返されている、今の出来事は新しいものではない」
『ドゥ・ザ・ライトシング』の感想を書いたのだけれど、調べてみたら、今回のミネアポリスの事件に関して、スパイク・リーのコメントが以下のページにまとめられていました。
・Spike Lee (twitter)
そしてtwitterでスパイク・リーが編集したショートフィルムが、以下の言葉とともに公開されています。
"3 Brothers-Radio Raheem, Eric Garner And George Floyd."
ラディオ・ラーヒムは『ドゥ・ザ・ライトシング』の登場人物です。
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