■感想 富野由悠季の世界展@ 静岡県立美術館
昨年、福岡をスタートに全国巡回で開催されている富野由悠季の世界展ですが、一番家から近い静岡県立美術館での開催が始まったので、勇んで観てきました。まさに富野ワールドにどっぷりな展示でした(^^)。
今回の展示は、基本絵描きではない(富野監督は絵コンテ、イメージボード、メカデザイン、美術設定、原画修正等いろいろな絵を描かれてはいますが、本職は)監督、演出家、原作、脚本という職域の方の美術展示というのは、展示の先頭/図録の最初のページに富野氏の言葉として書かれいるように、概念の展示にならざるを得ません。
概念の展示であるところは、昨年観に行った高畑勲展とかなり近いものがありますが、富野展は高畑展よりは、アニメーターの原画展示、イメージボードが少なく、絵はどちらかというとアニメーターのポスター原画中心だったので、アニメーション全体のメイキングで美術展として見せるトーンは高畑展の方が強かった。
自分の鑑賞時間が高畑展より短くしかいられなかったため、駆け足で観てしまったが、図録が高畑展の256ページに対して、こちらは416ページと大部。概念の展示としては、絵の大きさは僕にとってはそれほど問題でなく、駆け足で観た分、帰宅後にじっくり読み込んでみたい。
観賞後、もちろん帰りには、静岡市の隣、キングビアルの母港 焼津港に寄り、ガルンゲが火球で焼いた山波を眺めながら、神ファミリーの冥福を祈りました。
今回、家内と行ったんですが、吃驚したのは「富野由悠季って誰?」と出掛ける前に言われたこと。何たること!サンアタックだ!(^^;)
富野由悠季の世界展、スナップ写真です。今回、会場内は残念なことに撮影禁止だったので、会場入り口に立っていたダイターン3と、ミュージアムショップに飾られていた60,500円(税込)の全高73cmのイデオン。
またショップには、いろんな書籍とグッズが並んでいましたが、イデ発動Tシャツは、ギリギリ我慢しました(^^;)。
静岡県立美術館は、初めて行った美術館ですが、ロダン他、彫刻も楽しめました。

富野由悠季の世界展@静岡県立美術館、図録も416頁とずっしり。展示は残念ながらなかったが、図録には金田伊功作画シーンの原画とセル画が掲載されている。
あと展示されていた富野メモが、入れ込んで見ていた2作品に新たな奥行きを与えてくれた。
◆ザンボット3のラストに関するメモ

ガイゾック(このメモ時点は「カイザック」となっている)という存在の邪悪が、生物知能の行き着く先の遊戯である、というのは、テレビで述べられたことよりも絶望としては深い。放映後、映画として構想されたこともあったとのことであるが、ガイゾックについて、さらに透徹したこの視点まで描かれていたら、と想像を禁じ得ない。
◆イデオンに関するメモ

「混沌の前宇宙(第一宇宙)の創意とすることは易しいが、その前宇宙さえもイデが創出したと、言えなくもない。
が、物事をそこまで虚無の中には押しやりたくはない。
イデの実在にこだわっていくと、前宇宙はイデの“母たるイデ”によって創られたということにまで拡大して、ゆきつく先、虚無に陥るのだ。」
ここでも描かれる虚無。この前段にもこの概念に続く、深遠な視点が入っているため、イデオンファンは必見です。
残念ながら、この図録、キネ旬社が観光しているのに、今のところAmazon等に通常の新本としては売られていない。なので現時点は高い値段を付けた中古本ばかりである。
今、調べてみたら、キネマ旬報社の通販ページでは、定価で新本が売られていました。ご興味のある方は是非、この通販ページから。

最後に図録の中から、僕の好きな金田伊功氏のアニメートシーン。
Facebookで氷川竜介さんから教えて頂いたが、この動画とセル画、各美術館の展示会場に飾られていたという。
残念ながら、僕は静岡美術館でザンボットコーナーを探したので、見つけることができなかった。
下は、金田伊功氏自身が動画も担当されたシーンとのことで、あの筆致の生の絵を観られなかったのは残念でならない。
"キネマ旬報社より好評発売中の展覧会「富野由悠季の世界」公式図録が、美連協大賞の「優秀カタログ賞」を受賞した。
美術館連絡協議会(美連協)は、美術展の企画ならびにカタログの質を高め、学芸員の能力向上を図ることを目的として、美連協主催展および加盟館の自主企画展の中から、優れた展覧会の企画やカタログ、論文を顕彰する美連協大賞を実施している。中でも「優秀カタログ賞」は、開催館の学芸員が協力して製作した優秀なカタログに贈られている。
「富野由悠季の世界」公式図録は、各美術館の学芸員による豊富な解説のほか、この図録のためだけに新規取材を行った約3万字にもおよぶ富野由悠季監督のロングインタビューも掲載されるなど、大ボリュームの“読める図録”となっている。
展覧会会場のほか、書店やKINEJUN ONLINEでも購入可能なので、この機会にぜひともチェックしてみよう。"
| 固定リンク
コメント