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2020年12月

2020.12.16

■感想 ヒューマニエンス 40億年のたくらみ「“自由な意志” それは幻想なのか?」

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 ヒューマニエンス 40億年のたくらみ「“自由な意志” それは幻想なのか?」@ NHK BSP録画見。

 伊藤計劃他、SFの先端が最近描いているテーマをわかりやすく解説した良番組でした。何と言ってもベンジャミン・リベットの例の実験を映像とグラフで見せてもらえたのはありがたかった。

 出演者のいとうせいこう氏が語るかつて神と考えられていたものを脳科学がこうした形で無意識の意志決定という形で捉えた時に哲学はどう答えていくのかとか、文学者が自動書記することとの関係が興味深く聴けました。

 番組ではあまり触れられていないけれど、じゃあ意識って何なのということがこのテーマの中心なのではと思ってしまう。

 無意識の自動的な決定が人間を駆動しているとしたら、本来の人の本体はそちらで、自由意志と錯覚している意識は実はその従属物である。
 このテーマはそんなふうに考えた時に、正に近代をひっくり返す、大きな哲学的テーマになるのだと思います。

 そこに新しい文学だったり、エンターテインメントが生まれると考えてみるとワクワクするのです(^^)。

◆感想
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2020.12.14

■感想 ジョン・ファヴロー他 監督『マンダロリアン シーズン2』


『マンダロリアン シーズン2』特別映像(字幕版 / 吹替版)| Disney+

 ジョン・ファヴロー他 監督『マンダロリアン シーズン2』6本一気見。

 『エピソード6/ジェダイの帰還』の約5年後、ボバ・フェットが属す兵団の物語で初期SWリスペクトでいい雰囲気と迫力。

 ジョン・ファヴローが多くの脚本と何本か監督してて、ジェットパックで飛ぶシーンはアイアンマン継承で燃えます!

 シーズン1から2はさらにパワーアップしてる感じで、正編レベルの回もあります。
 特に予告にある谷間のスピーダーバイクとのチェイスシーンとか、アクションのレベル、絵づくりとも見事なレベル。あと数回の週末の更新が楽しみです。

 このシリーズのもう一つの楽しみは、エンディングのタイトルバックに流れる各話のイメージアートの素晴らしさ。
 Google イメージ検索 で観られます。いずれも映画本篇と同じくらいの緻密なレベルで描き込まれています。

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The Mandalorian concept art by Christian Alzmann.
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The Mandalorian concept art by Christian Alzmann.
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The Mandalorian concept art by Brian Matyas.

◆関連リンク
StarWars mandalorian 公式サイト
 イメージボードはこちらで観られます。

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2020.12.09

■感想 デイヴィッド・フィンチャー監督『Mank/マンク』&オーソン・ウェルズ監督『市民ケーン』


『Mank/マンク』予告編 - Netflix

 楽しみにしていた久々のデイヴィッド・フィンチャー監督『Mank/マンク』、Netflixの配信が今週末に始まったので、勇んで観ました。
 なかなかの傑作。ゲイリー・オールドマン演じるマンクこと脚本家ハーマン・J・マンキーウィッツが『市民ケーン』のシナリオを書き上げる経緯を描いた物語。

 『市民ケーン』を観ていないのに、こちらから観るのもいささか情けないんですがw、観てなくてもこの映画の描きたかったものは、オールドマンの素晴らしいドンキホーテな表現によって、充分伝わってきます。

 タランティーノ映画かと思う、言葉の機関銃のようにセリフが飛び交う前半。ドンキホーテと劇中のエピソード「オルガン弾きの猿」に共鳴するこれらのセリフ劇のウィットが映画を魅力的なものにしている。

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 そして「ドルシネア」役アマンダ・サフレッドと口述筆記を担うリリー・コリンズの女優陣の充実も本作の見どころ。『ツインピークス ザ・リターン』でエキセントリックな娘を演じたアマンダのギョロ目な表情の魅力が印象的です。

 フィンチャーが『市民ケーン』の再現を狙ったという映像と音響も、見事に30,40年代ハリウッド映画的な佇まいを備えていて、タイムスリップ感が味わえます。

◆オーソン・ウェルズ監督『市民ケーン』

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 オーソン・ウェルズ監督『市民ケーン』@ Amazonプライム 初見。
 昨日観たデイヴィッド・フィンチャー監督『Mank/マンク』にちなんで初めて観た、数々のオールタイムベスト1に輝くマスターピース。

 ということでかなり構えて観た。結果は、面白い映画ではあったけれど、僕には残念ながらオールタイムベスト10級の作品とはとても思えなかった。

 「ザナドゥ城」から始まる冒頭は素晴らしいと思った。映画の構成、画面のアングル等、確かにこの時代にここまでという革新は感じられて面白いのだけれど、如何せん、オーソン・ウェルズの不自然な演技がどうもしっくりこない。そして単調な人物描写。

 ストーリーと人物の繊細さとダイナミックさが、どうしても感じられなくて、ちょっと残念なマスターピースでした。
 (先週観た『素晴らしき哉、人生』が素晴らしかったので落差を感じたのかもしれないです)

 『Mank/マンク』と比べると、これは後出しの有利さもあるけれどw、フィンチャーの勝利かと。ゲーリー・オールドマンとアマンダ・サフレッドでリメイクしたら、素晴らしい映画になるでしょうね(^^)。

 2作の連環、フィンチャーの描いたマンクによる脚本執筆が、そのまま『市民ケーン』になるような感じはあまりしなくって、その点は『Mank/マンク』の難しさなのかもしれない。あのマンクの呻吟する執筆シーンの描写と『市民ケーン』の物語がダイレクトに繋がるような構成/エピソードになっていたら、『Mank/マンク』は凄い高みに行っていたかもしれない(充分面白いんですがw)。

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2020.12.07

■感想 フランク・キャプラ監督『素晴らしき哉、人生!』


It s A Wonderful Life | Official Trailer
 フランク・キャプラ監督『素晴らしき哉、人生!』@ Amazonプライム初見。名作とは聞いていたけれど、これはクリスマスのファミリー映画であり、ファンタジーでありノアールであるという絶妙の奇跡の一本ですね。

 『バック・トゥ・ザ・フューチャー』『ターミネーター』をはじめ、コーエン兄弟『未来は今』等々、脈々とアメリカ映画にその影響が息づいていることがよく分かりました。まさに偉大なマスター・ピースですね。

 ハリウッド映画以外でも『ベルリン 天使の詩』や鴻上尚史の芝居『天使は瞳を閉じて』等々、この作品のイマジネーションは、多くのエンタテインメントにアイディアの核として影響しているようです。

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 それにしても、SFXもCGも、特殊撮影なしにこれだけ奇想な作品を完成させられるというのは、本当に脚本のアイデアの結晶ですね。日本の映画界も予算がないことで萎縮して、漫画原作や若者向けの恋愛ものを連発するのを辞めて、まだまだ脚本の練り上げでイマジネーション豊かな作品を作れるという可能性をこの映画のDNAとして学ぶといいのかもしれないです、なんちゃって偉そうにすみません。

 あと本作のリメイクはされていないわけですが、現時点既にパブリックドメインということで、ポン・ジュノに現代風のリメイクを作ってもらいたいと思いました。この映画の物語とジュノ監督の新たなアイディアが加わったら、さらに素晴らしい映画が出来上がるようなきがします。

■デイヴィッド・リンチ作品への大きな影響
 あとデイヴィッド・リンチファンとしては、リンチへの大きな影響をそこかしこに発見できたのも収穫。

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 町山智浩氏が書かれている『ブルー・ベルベット』への影響以外にも、傑作『マルホランド・ドライブ』の骨格は本作の主題の変奏曲とも考えられるし、『ツイン・ピークス ザ・リターン』の世界が大きく座標をずらすところは本作の現代的パスティーシュに見えます。

 果てはリンチが演じたツイン・ピークスのゴードン・コール捜査主任の役の設定、耳が悪く大声で喋るところは、本作の主役ジェームズ・ステュアート演じるジョージ・ベイリーのコピーに見えてきます。

 細かいところでは、ジョージの家の住所がシカモア通り、ピーカーの皆さんはニヤリとする名称です。
 上で述べた影響を受けた作品群との差は、アイディアの借用レベルでなく、リンチはこの映画の本質的な部分を自身の作品の骨格に導入しているところ。根がずっと深いです。

 何にしてもリンチファンが足を向けて寝られないw位に影響を受けた偉大な奇想映画、しかもラストの感動の質はリンチが獲得できなかったもので、いつの日かさらにリンチの幻の進化の一つのイマジネーションを幻視させ、感嘆の一作でした。

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