■感想 フランク・キャプラ監督『素晴らしき哉、人生!』
It s A Wonderful Life | Official Trailer
フランク・キャプラ監督『素晴らしき哉、人生!』@ Amazonプライム初見。名作とは聞いていたけれど、これはクリスマスのファミリー映画であり、ファンタジーでありノアールであるという絶妙の奇跡の一本ですね。
『バック・トゥ・ザ・フューチャー』『ターミネーター』をはじめ、コーエン兄弟『未来は今』等々、脈々とアメリカ映画にその影響が息づいていることがよく分かりました。まさに偉大なマスター・ピースですね。
ハリウッド映画以外でも『ベルリン 天使の詩』や鴻上尚史の芝居『天使は瞳を閉じて』等々、この作品のイマジネーションは、多くのエンタテインメントにアイディアの核として影響しているようです。
それにしても、SFXもCGも、特殊撮影なしにこれだけ奇想な作品を完成させられるというのは、本当に脚本のアイデアの結晶ですね。日本の映画界も予算がないことで萎縮して、漫画原作や若者向けの恋愛ものを連発するのを辞めて、まだまだ脚本の練り上げでイマジネーション豊かな作品を作れるという可能性をこの映画のDNAとして学ぶといいのかもしれないです、なんちゃって偉そうにすみません。
あと本作のリメイクはされていないわけですが、現時点既にパブリックドメインということで、ポン・ジュノに現代風のリメイクを作ってもらいたいと思いました。この映画の物語とジュノ監督の新たなアイディアが加わったら、さらに素晴らしい映画が出来上がるようなきがします。
■デイヴィッド・リンチ作品への大きな影響
あとデイヴィッド・リンチファンとしては、リンチへの大きな影響をそこかしこに発見できたのも収穫。
町山智浩氏が書かれている『ブルー・ベルベット』への影響以外にも、傑作『マルホランド・ドライブ』の骨格は本作の主題の変奏曲とも考えられるし、『ツイン・ピークス ザ・リターン』の世界が大きく座標をずらすところは本作の現代的パスティーシュに見えます。
果てはリンチが演じたツイン・ピークスのゴードン・コール捜査主任の役の設定、耳が悪く大声で喋るところは、本作の主役ジェームズ・ステュアート演じるジョージ・ベイリーのコピーに見えてきます。
細かいところでは、ジョージの家の住所がシカモア通り、ピーカーの皆さんはニヤリとする名称です。
上で述べた影響を受けた作品群との差は、アイディアの借用レベルでなく、リンチはこの映画の本質的な部分を自身の作品の骨格に導入しているところ。根がずっと深いです。
何にしてもリンチファンが足を向けて寝られないw位に影響を受けた偉大な奇想映画、しかもラストの感動の質はリンチが獲得できなかったもので、いつの日かさらにリンチの幻の進化の一つのイマジネーションを幻視させ、感嘆の一作でした。
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