■感想 デイヴィッド・フィンチャー監督『Mank/マンク』&オーソン・ウェルズ監督『市民ケーン』
楽しみにしていた久々のデイヴィッド・フィンチャー監督『Mank/マンク』、Netflixの配信が今週末に始まったので、勇んで観ました。
なかなかの傑作。ゲイリー・オールドマン演じるマンクこと脚本家ハーマン・J・マンキーウィッツが『市民ケーン』のシナリオを書き上げる経緯を描いた物語。
『市民ケーン』を観ていないのに、こちらから観るのもいささか情けないんですがw、観てなくてもこの映画の描きたかったものは、オールドマンの素晴らしいドンキホーテな表現によって、充分伝わってきます。
タランティーノ映画かと思う、言葉の機関銃のようにセリフが飛び交う前半。ドンキホーテと劇中のエピソード「オルガン弾きの猿」に共鳴するこれらのセリフ劇のウィットが映画を魅力的なものにしている。
そして「ドルシネア」役アマンダ・サフレッドと口述筆記を担うリリー・コリンズの女優陣の充実も本作の見どころ。『ツインピークス ザ・リターン』でエキセントリックな娘を演じたアマンダのギョロ目な表情の魅力が印象的です。
フィンチャーが『市民ケーン』の再現を狙ったという映像と音響も、見事に30,40年代ハリウッド映画的な佇まいを備えていて、タイムスリップ感が味わえます。
◆オーソン・ウェルズ監督『市民ケーン』
オーソン・ウェルズ監督『市民ケーン』@ Amazonプライム 初見。
昨日観たデイヴィッド・フィンチャー監督『Mank/マンク』にちなんで初めて観た、数々のオールタイムベスト1に輝くマスターピース。
ということでかなり構えて観た。結果は、面白い映画ではあったけれど、僕には残念ながらオールタイムベスト10級の作品とはとても思えなかった。
「ザナドゥ城」から始まる冒頭は素晴らしいと思った。映画の構成、画面のアングル等、確かにこの時代にここまでという革新は感じられて面白いのだけれど、如何せん、オーソン・ウェルズの不自然な演技がどうもしっくりこない。そして単調な人物描写。
ストーリーと人物の繊細さとダイナミックさが、どうしても感じられなくて、ちょっと残念なマスターピースでした。
(先週観た『素晴らしき哉、人生』が素晴らしかったので落差を感じたのかもしれないです)
『Mank/マンク』と比べると、これは後出しの有利さもあるけれどw、フィンチャーの勝利かと。ゲーリー・オールドマンとアマンダ・サフレッドでリメイクしたら、素晴らしい映画になるでしょうね(^^)。
2作の連環、フィンチャーの描いたマンクによる脚本執筆が、そのまま『市民ケーン』になるような感じはあまりしなくって、その点は『Mank/マンク』の難しさなのかもしれない。あのマンクの呻吟する執筆シーンの描写と『市民ケーン』の物語がダイレクトに繋がるような構成/エピソードになっていたら、『Mank/マンク』は凄い高みに行っていたかもしれない(充分面白いんですがw)。
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