■感想 原將人監督『初国知所之天皇』
『初国知所之天皇』予告編
2021年2月14日(日)初国知所之天皇復活ロードショー
"日本/カラー/1973-2021/108 分
監督・撮影・編集・音楽・脚本・主演:原 將人
自宅焼失というアクシデントで燃えてしまった伝説のフィルム『初国知所之天皇』が、 2020年12月に京都市主催のクラウドファンディングで復活した。イマジカラボに保管されたネガから、16㎜フィルムニュープリント、デジタルリマスター版がリプリント<復活>された『初国知所之天皇』の世界は、より透明感を帯び,「映画 とはなにか? 」という命題に寄り添いながら創造性を激しく刺激する。"
2/13-14にネット配信された原 將人監督『初国知所之天皇』激生ライブを4時間観ました。
「『初国』以上の映画体験を未だに経験していない」(以下に引用した瀬々敬久監督の言葉)と世に言われている伝説の映画、そしてその2021年バージョンを体感できたのはとても貴重な映画体験であった。
多分初めてこの映画のタイトルを聞く方は、タイトルに含まれる「天皇」という言葉が観る際の一つの障壁になるような気がします。まず最初に書いておきますが、本作は政治的な偏向は特になく、むしろここから述べるように映画の可能性に挑戦した、映像詩ならぬ音楽のような映画なので、映画の持つ可能性の先端を気にしている映像ファンは是非とも鑑賞されることをお薦めします。
◆感想
以前僕は、8mmで撮られて16mmにブローアップした映像で構成された2画面マルチ映像、1993年に作られた16mmマルチヴァージョン 1Hour48Min版というのをDVDで観て感想を書きました。大きくはその感想は変わらないですが、今回、配信版は21.1月にコロナ禍でライブが無観客で実施され、その様子をカメラで撮って、原監督自らの手で再構成されたもので、2面マルチというよりは、過去の8mm/16mm映画映像と今回の生ライブ映像を二重映しに合成した新たな2021年版の"新たな"『初国』である。
前後篇、ほぼ4時間の大作だが、47年前に撮られた映像が夢幻な雰囲気で、さらにそこに生の音楽が被って詩的な空間が広がる。そしてさらに映像も47年前のロードムービーが手前と奥に、時に時間をずらして、さらには二重映しで重層的に描かれている。
ここまでが正に劇中で述べられている通り、ミュージカル映画というよりは、映画の/映像のミュージカルというか、音楽のように映像がその空間に揺蕩い、そして舞い踊る独特の新しい映画を構成している。
さらに特筆すべきは、特に前篇の冒頭に顕著な、今の原監督によるナレーション。
詩的な言葉というよりか実はかなり哲学的な論考が映画にかぶせて語られる。ここが凄みを出している部分ではないかと今回思った。
原監督の著作『見たい映画のことだけを』を遅ればせながら最近入手して読み始めたのだけれど、ゴダールとハイデッカーとメルロ・ポンティ等を引用しながら、未来の映画について語る原監督の言葉が、今なお生ライブの形で語られている。
原監督に一昨年、映像短歌というのを教えて頂いたのだけれど、本作は映画/映像ミュージカルであると同時に、映像短歌ならぬ、映像論考というどこにもない映画を現出させているのが、今回の劇生ライブ版は感じさせた。
以下に瀬々敬久監督の言葉を引用したが、まさしくどこにもない映画体験が本作の魅力なのだと思う。47年間に渡って原監督が育ててきたこの映画が、今も正に成長しているということで、今後も眼が離せません。
◆以下関連リンク
当ブログ感想 原將人監督『初国知所之天皇(はつくにしらすめらみこと)』DVD
【上映会 21. 3/13 】初国知所之天皇復活ロードショー 上映会
"コロナにより延期になっていた、待望の 劇生ライブ上映会!
1970年代、国家と社会に全面的に異議を申し立てた全共闘運動が終焉した。当時、映画を志す22歳の原 將人は、既成の映画に対して全面的に異議を申し立て、国家を根底から考える 映画『初国知所之天皇』を製作した。8㎜と16㎜フィルムを併用し、2 台の映写機を切り替えながら自ら映写する8時間に及ぶ長編作品は、同世代、とりわけ映画を志す若者たちに熱狂的に支持され、伝説のフィルムと呼ばれるに至った。その 後、摩耗する8㎜を16㎜に引き伸ばした4時間のリフレイン版を、その20年後には4 時間を左右に切り分けた2時間の2面マルチバージョンが完成した。"
【上映会:3/14】初国完成47周年記念 原 將人 激生ライブ上映会 2021-03-14
"激生ライブ上映は『初国知所之天皇』の誕生から47年間ずっと変わらない、原監督の生演奏付きの映画上映である。このライブ映画の上映スタイルで、会場をまるごと映画空間へと昇華させる「映画体験」を実現させる。今年70歳になる原は、上映会場でナレーションを読み上げ、歌をうたい、ピアノを弾く。至高の仕方で、既成の映画概念を見事に突き破る。日本映画界において『初国知所之天皇』が、伝説と称される所以である。クリエイターたちにも絶大なファンを持つ。これだけのハイクオリティーの映画のライブ上映は、世界中見回しても、原にしかやれない。初国完成47周年を記念する今回の激生ライブ上映会では、2人のミュージシャンとスペシャルセッション。ハイクオリティーの音響設備を備え、6台のカメラ、7チャンネルで世界へ向け、リアル動画ライブ配信される。
遠藤 晶美 (ミュージシャン・コンポーザー)
島田 篤 (ピアノ・キーボード演奏・作編曲家・弾き語り)"
"『おかしさに彩られた悲しみのバラード』を高校生の時に見て以来、8ミリで映画を撮り始めた。それほど原將人信者だった。大学生の頃、原將人全作品上映の企画をして上映会を行った。その大きな理由は、噂に高い『初国』が見たかったからだ。『初国』は遥かにその伝説を超えていた。映写機と見る者、その空間、それらが混然一体となったまさに映画体験だった。上映という行為でしか成しえない作品、それでしか享受できない感動。あれ以来、僕は『初国』以上の映画体験を未だに経験していない。
瀬々敬久:映画監督『64ロクヨン』『最低。』『友罪』『楽園』『糸』"
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