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2021.03.15

■感想 庵野秀明総監督, 鶴巻和哉/中山勝一/前田真宏監督『シン・エヴァンゲリオン劇場版 :||』


『シン・エヴァンゲリオン劇場版』本予告・改2【公式】
 庵野秀明総監督『シン・エヴァンゲリオン劇場版:||』@ イオンシネマ豊田にて観てきました。初めて行った映画館だったんですが、フィギュアやイラストがいっぱい飾られてて、スクリーンもデカくて良かった。
 まずはファーストインプレッションをメモっときます。先入観なくご覧になりたい方は以下感想ですが、御注意ください
 また、ネタバレ感想は、明示した上で、さらに下の方に書くようにします。
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 TVシリーズ第一話本放送をテレビ愛知の木曜朝(確か)に身始めてから、25年以上観続けてきた作品が見事に終幕し、大満足の一本でした。以前から都度都度、各作品の感想はブログで書いてますが、今日は以下の3点で記しておきます。

①エヴァの登場人物内面ストーリーは僕は最初から関心の少ない所なんですが、シンジ君のビルドゥングスロマン的には、見事な終焉だったと思います。TVシリーズで混沌の中、あのようになったラストを、『The End of エヴァンゲリオン』では(僕は傑作と思ってますが...)一応の収拾を図っていたのですが、何だかこの内面ストーリーの視点からはモヤモヤがどうしても残ったのでしたが、今回は父子の関係やシンジ周辺人物との決着も見事だったのではないでしょうか。あまりに見事すぎて少し予定調和的にも見えて、あの混沌が懐かしいという気持ちも湧いたりして、、、w。

②庵野監督の悩み描写とエンタメの抑制が今回も(『シン・ゴジラ』同等以上に)見事な塩梅で作品化されていたと思います。そしてモロに311後の作品だった『Q』に対しても落とし前を付けていて(震災がなかった世界の新劇場版を夢想しないわけにはいかないですが)、その観点でも素晴らしいと感じました。

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③やはり僕にとってのエヴァは奇想映像の先端を切り開く、その姿勢と成果を観るのがいつも楽しみな作品なのですが(^^)、今回も冒頭のパリの描写から超絶特撮&SFX映像のオンパレードで、もう3回位は劇場で観たくなりました。今回、『シン・ゴジラ』で活躍したプレヴィズがエンドタイトルでしっかりとスタッフクレジットされていたところから、最大限の活用がなされているのが感じられましたが、ここは今後のメイキングの公開が楽しみなところ。

 上の画像は、Youtubeの予告等シーンから、コマ送りでなく中をいくつか省いて、ダイナミックな連続アクションを取り出したもの。
 マリのアクションからエヴァ8号機の見事なアクションの連続が心地よい。

 映像的には、庵野監督が学生時代から描いてきた自主制作アニメ、特撮の手法含め、映像技術の集大成として(こう使うかという感嘆とともに)、そしてさらにジブリにも配慮しつつw、CGでまたしても最先端のエッジの効いた映像をこれでもかと見せてくれます。特にCGを用いて特撮の手触りをわざと感じさせる手法は、使い所含めてグッと来つつもちょっと笑ってしまったのでした。

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 上記の画像は、同じく予告のエヴァのカットをコマ送りで4コマ分取り出したもの。
 このシャープなコマ運びが、観客の脳内映像としてクールな動きを生み出している。ちゃんと確認したことはないけれど、ハリウッドSFX大作でもここまで一コマづつのレイアウトに細かく気を配ったアクションシーンは少ないのではないか。

 本気のアクション/奇想映像シーンは、画面のアングルとか構成とか、この切れ味は何百億円の製作費をかけたハリウッド映画でも未だ実現できていないエッジを切り開いていて、米国または中国の映像プロデューサーがスタジオカラーに100億円位の予算で大エンタメ作を依頼しても全く不思議でないと思っているのは僕だけでしょうか(^^)。

 ハリウッドの映像技術に、スタジオカラー的センス・オブ・ワンダーがまぶされたSF大作、皆さん、観たいと思いませんか。

 本作が米国で認められるのに、①の視点がずいぶん邪魔しているんじゃないかな、というのが僕の感想の偏りだったりします(^^;)。

★★★★★★★以下、ネタバレ感想★★★★★★★
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 上記②にも少し関係するけれど、エヴァの中心SFテーマである「人類進化」の観点の感想をネタバレで以下、メモしたいと思います。
 以前、「新世紀エヴァンゲリオン劇場版 Air/まごころを、君に』(というより『THE END OF EVANGELION Air/まごころを、君に』の方がしっくり来ますが)に関連して感想を書いたことがあったけど、やはりA.C.クラーク『幼年期の終わり』との関係は書いておくべきかと、、、。

 『THE END OF EVANGELION Air/まごころを、君に』において、人類意識の集合体化というのを映像で見せて、最後にアスカの「気持ち悪い」で『幼年期の終わり』のオーバーマインド完全否定を描いた庵野秀明総監督、今回はこの「気持ち悪い」という言葉を使わないで、同様の否定的なシーンを描いた。今回はエヴァインフィニティが津波のように人類の魂を飲み込み同化するシーンとして描かれている。ここで津波のいめーじを使ったのは、正に上で述べた②の311後の描写で、「気持ち悪い」に変わる、オーバーマインド的な生命進化(諸星大二郎「生物都市」的というか)を否定的な視点で描いているのだと思う。これはゲンドウのカルト宗教的な描写にも顕著で、冒頭の第3村との対比で、見事に『THE END OF EVANGELION Air/まごころを、君に』で少し未消化に描かれていたテーマが、浮き彫りになっていたと思う。

◆関連リンク
【ネタバレ】シンエヴァ専門用語まとめ
・当ブログ関連記事 『THE END OF EVANGELION Air/まごころを、君に』

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