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2021年7月

2021.07.21

■情報 ヨハン・ヨハンソン監督『最後にして最初の人類』


『最後にして最初の人類』予告編 公式サイト

"『メッセージ』などの音楽を手掛けた作曲家、ヨハン・ヨハンソンの監督作。オラフ・ステープルドンのSF小説を原作に、16ミリフィルムの映像とヨハンソン監督による音楽を織り交ぜながら、過去の記憶やユートピアについて語られる。ナレーションを務めるのは『フィクサー』などの女優ティルダ・スウィントン。『アウトロー』などの製作に携わってきた、ソール・シグルヨンソンが製作を担当する。
作品情報:https://www.cinematoday.jp/movie/T002...
配給: シンカ
(C) 2020 Zik Zak Filmworks / Johann Johannsson
劇場公開:2021年7月23日"

 どんな映画なんだろう。ステープルドンの小説の朗読とスポメニックの映像とヨハンソンの音楽だけで構成されてたら、凄いかもしれない。
 予告篇見ると、かなり実験的にもみえるけれど、ワクワクします。愛知県でも2館で上映予定ですね。この手のでここまで拡大公開される映画って珍しい様な、、、。
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『最後にして最初の人類』原作 アーサー・C・クラーク(「2001年宇宙の旅」)にも大きな影響を与えた絶版中のSF小説の序文が期間限定で特別公開! ヤマザキマリによる特別イラストと寄稿も一部掲載

"ヤマザキマリから原作に寄せられたテキストとイラストも公開される。ヤマザキは、原作と映画を評して「オラフ・ステープルドンによる原作は、1ページの中に綴られた文字数の100倍以上の情報が織り成されていると言っていい、壮大な叙情詩である。その圧倒的な世界観を、わずか70分の映像は余計な負荷も虚勢もまとうことなく、堂々と、そして飄々と顕していた」と記し、高く評価した。"

 原作を読んだ時の感動を思い出させる文章ですね!

◆関連リンク
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Jóhann Jóhannsson’s sci-fi opus: Last and First Men
 2020年ベルリンのインターナショナルフィルムフェスでの上映/上演風景
『最後にして最初の人類』(国書刊行会) オラフ・ステープルドンの原作。

"世界終末戦争、火星人との闘争を経て、進化の階梯を登り始めた人類は地球を脱出。金星や海王星に移住するが、ついに太陽系最後の日が……20億年に及ぶ人類の未来史を神話的な想像力で描いた伝説的作品。"

・当ブログ記事 ■感想 オラフ・ステープルドン『最後にして最初の人類』 浜口稔訳 (国書刊行会刊)

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2021.07.19

■感想 細田守監督『竜とそばかすの姫』


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 細田守監督『竜とそばかすの姫』観てきました。今日はこちらも36℃とついに夏本番ですが、まさに細田作品らしい、真っ青な空に伸びる入道雲がとても似合う素晴らしい作品でした。劇場からの帰り道の空と雲が映えること映えること。また自転車の高校生とかなりすれ違ったのですが、普段はそんなこと滅多に思わないのに、細田作品を見た後、自分にとってはもううん十年も過ぎ去った高校生の姿がとても眩しく見えるのが印象的。

 『バケモノの子』『ミライの未来』と実は続けて自分には低調な作品が続いていたので、今回、劇場で観るのを少し迷ったのですが、予告篇に感じるところがあり、映画館へ脚を運んで本当に良かったです。壮大なスケールで、映像と音のシャワーを、まさにスクリーンで浴びるのが最適な映画作品でした。

 今回、音楽が重要な要素を占める作品なのですが、CGによる壮大な空間の完成度の高さ、そして音楽映画ともいえる伸びやかな音響。映画の贅沢さとはこうあるべきという、ある意味、世界レベルの作品を見せて頂いた気分です。

 そしてこの映画の物語は一見『アナと雪の女王』『美女と野獣』等を思い出すファンタジーですが、実は現在の技術の延長で実現出来る近未来世界です。電脳空間の可能性を描いたそこが、この細田作品の凄さ。これは“現実”の物語ですね。
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★★★★★★ネタバレ注意★★★★★★ .
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 クライマックスが特に涙腺を刺激してやばかったですが、この現実とヴァーチャルでの人の存在の姿の描き方、まさに新しいネットとリアル空間からなる、現実世界のクロスする様相を見事に結晶化して描いたところが、傑作になっているところなのでしょうね。

 そこにはネット空間の持つ精神的な連帯と共感と誹謗中傷、そして現実空間の持つ/肉体で地面に縛り付けられたヒトの関係の暖かさと鬱陶しさみたいなものを、数々想起させて融合し表出させ、入道雲の様に清々しい景色が存在していました。

 特にネット空間の匿名性で、大袈裟に言えば精神の自由と趣味の世界の追求を何というか現実の会社員生活とは全く切り離すことでちょっとだけ昇華させてきた自分のブログ活動とかを、全然規模も到達点も違うけれど、ダブらせてみてしまったので、何というか感無量な感慨でした。

 物語としては、もちろん『美女と野獣』が下敷きにされていますが、こちらは野獣だけでなく「Belle」も仮の姿と実の姿が描かれています。これをミュージカルとして仕立て上げて、見事に『美女と野獣』のあの名シーンをある意味超えてディズニー映画を凌駕したところも特筆すべきかと。

 加えて、テーマ的には『アナと雪の女王』でエルサが氷の城で初めて自分の自由を手に入れるあの歌のシーンにも肉薄するミュージカルシーンになっていて、意識的にディズニーをその超える目標においていることがよくわかり、しかも超えている部分がしっかりあるという傑作になっていると思いました。

 そしてそうした骨格に対応して、映像としても手描きとCGの両方を融合して描かれた現代的手法の見事さが映えます。
 東宝公式のメイキング映像で細田監督が語られている「CGでも手描きでも、CGは血が通っていないということを言う人もいるが、どちらも人によって描かれていると言うことでは同じ」という視点で融合して描かれたヒトの営みとしてのネットとリアル。テーマにまさに適合したこの手法も素晴らしい。デジタル映像としては、細部をとことん描きこんで、映像圧縮技術の破綻寸前wの映像だったが、デジタルにしかできない映像の可能性を切り開いている様に思う。

 ヒトの有り様として、これからも人類はリアル空間とネット空間の両方の現実世界の中を往還しながら過ごしていくことになるのでしょうが、その一つの結晶化した姿をこの時点で描いた最高傑作の映画なのかもしれません。凄いものを見せてもらいました。

◆その他 メモ
・本作で描かれたリアルと幻想は、ネットを使うことによって、実は今現在の現代にも非常に近いものが存在している現実的な存在であるところが凄い。ネットというもののある意味の本質、ヒトの幻想を"現実化/実体化"するものとしてのネット。このあたりの本質を描き出している点でも本作は鋭いと思います。

・仮想空間 <U> に存在する"正義"を守るチーム「ジャスティス」の隊員たちのユニフォームと身体のフォルムが、何故か手塚治虫風に見えたのは、僕だけでしょうか。もしくは石ノ森章太郎というか、昭和の時代の漫画を思い起こさせます。どんな意味を持たせているのだろう。

◆関連リンク
東宝公式Youtube 「Making of 竜とそばかすの姫」#1〜10
 大変、興味深いメイキングです。これはファン必見。こういう企画、素晴らしいです。
・特に #6「Making of 竜とそばかすの姫:細田守とクリエイター~Uの発想~」
 ボディシェアリング研究者 玉城絵美 琉球大 教授のインタビューは興味深い。

竜とそばかすの姫:公開3日間で興収8.9億円突破 動員60万人 すず、ベルの夏空ビジュアルも
 公開の週末8.9億円。『シン・エヴァンゲリオン劇場版』が初週11.8億円。『竜とそばかすの姫』の方が一般家族層には受け入れられやすい感じなので、これは相当のヒットが期待できそうですね。

 それにしても上記ポスター画像の左、すごく良いですね! やはり細田映画は夏空が似合う!

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2021.07.12

■ケイト・ショートランド監督『ブラック・ウィドウ』


Marvel Studios' Black Widow | Official Trailer
 ケイト・ショートランド監督『ブラック・ウィドウ』@ 関シネックスマーゴで 観てきました。

 スカーレット・ヨハンソンは相変わらずカッコ良く、『ミッドサマー』主役のローレンス・ピューもなかなかだし、冒頭のシーケンスから始まるストーリーの骨格もグッと来るし、コメディタッチ部分も最高に笑えるし、クライマックスのアクションもとびきりなのでなかなか満足な仕上がりなのだけれど、後ほどネタバレで述べる様なシナリオの不徹底が何とかされていれば傑作になったと思わせるだけに、僕にはちょっとそこが残念な映画でした。

 新しいMCUのスタートとしては、あ、こういう形で再スタートするのか、と新鮮な気持ちにもなるのでした。ブラック・ウィドウ リスペクトとしては面白い切り口かもしれない。

 それにしてもクレジットからはStereo D社等が担当した3D版があるはずなのに、日本の劇場で上映されていないのは、寂しすぎる(4D版は上映館があるが、立体映像で上映されているのでしょうか)。ついに3D映画低調時代が本格化した様で、寂しくてならないです。







★★★★★★以下、ネタバレ注意★★★★








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 脚本的な欠陥としか思えないところ。『ゴジラvsコング』も書いたエリック・ピアソンは『インフィニティ・ウォー』『エンドゲーム』のスクリプトドクターでもあったということだけれど、以下は何とかならなかったのだろうか。冒頭や家族コメディシーン、そしてアクション他が良いだけに、残念でならなかった。

・ナターシャとエレーナが再開するところで何故いきなり戦うのか。
・お母さん、やってることが超極悪。なぜあの流れで良い話にもっていけるか。もう少しケアしても良いのでは。
・敵役ドレイコフが感情を露わにするところ、あれだけの巨悪のはずなのに小者感が半端ない。また空中浮遊基地も唐突感と最後のフェールセーフゼロのシステム設計が何だか残念。
・世界の虐げられてきた女性の解放というテーマは良いのだけれど、ストレートすぎるというか、例えば『ブラック・パンサー』等にあった政治的な改革の視点が弱い様な気がした。もしもう少しそこが配慮されていたら、本当に素晴らしい映画になったのではないかと残念至極。

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2021.07.07

■感想 マイケル・ベイソン『2001:キューブリック、クラーク』

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 マイケル・ベイソン『2001:キューブリック、クラーク』読了。
 公開50周年の2018年に出版された575頁のメイキングの大著。キューブリックとクラークの邂逅から始まる4年間の映画制作とその公開までを関係者の証言とメモから再生し、まるでその現場にいる様な臨場感で描き出した傑作ドキュメンタリー。

 あの映画のあのシーンはどの様に着想され、具体化されていったかを、微に入り細を穿つ描写が素晴らしい。

 例えば、HALの読唇術シーケンスは、フランク・プール役のゲイリー・ロックウッドの発案がきっかけで作られたとか、デイヴ・ボーマンの食事シーンでワイングラスを割るシーンは、キア・デュリアの着想だったとか…意外と現場でのスタッフ、キャストの発想で、ある意味即興的要素を取り入れながら、作られていった様子が生々しい。セリフを排したタッチだけでなく、ドキュメンタリー的な風合いが感じられるこの映画の一つの秘密に近づけた様な感覚が感じられた。

 もちろん特撮シーンについても、ダグラス・トランブルはじめ、スタッフの証言含めて、リアルに現場が語られている。特に興味深かったのは、ディスカバリー号の重力区画を描いた巨大な円形ホイールのセット。当時はもちろんLEDも液晶ディスプレイもなく、巨大な重くて熱い照明が時々落っこちてきて危険な職場であったとか、あの優雅なディスプレイの裏には16mm映写機が画面の数だけ巨大ホイールに括り付けられてセットされていたとか、まさに想像を絶する力技で、2001年の未来が構築されていたことが証言されている。

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 若かったダグ・トランブルが現場でキューブリックに認められてどんどんSFXの中核スタッフになっていく描写も心地良いが、主な担当シーンとして、モニタに映る各種アニメーションとスリット・スキャンが代表的だけど、ムーンバスの模型にリアリティを付け足すのにも貢献していたり、かなり幅広くタッチしている様子も窺い知れて良かった。またキューブリックのみがアカデミーの特殊撮影部門の受賞者であった顛末、後年のトランブルのみが2001の特撮を作ったのではないというキューブリックがだした新聞広告について、そしてそのエピローグとしてトランブルがキューブリックの葬儀に参列している感慨深いシーンも本書のクライマックスの一つである。

 プレヴュー上映での酷評と、公開直前でのキューブリックによる冗長シーンのカット(間に合わず各劇場でフィルムカットして)公開、その後若者中心に大ヒットして68年の全米No.1ヒットというくだりも臨場感があって興味深く読めた。

 あとスリランカとイギリスを行き来して携わったクラークの当時の生活、特に当時のパートナー マイク・ウィルスンの制作していた007のパロディ映画『ソルンゲス・ソル (ジェーミス・バンドゥ)』の資金繰りに苦しむクラークの様子は、傑作映画と並行して今は全く語られないC級作品の、資金繰りに苦心する巨匠の生々しい人間的な姿がリアルに立ち上がって好きなシーンだった。(ウィルスン監督のパトロンという位置づけだったらしい)

 そして本書のラストは、クラークの死の数時間後に、75億光年という、観察可能な宇宙の年齢の約半分の時間をかけて太陽系に到達したガンマ線バーストについて語る著者マイケル・ベイソンの筆で閉じられる。クラークらしい宇宙的詩的なシーンに感激して読者は本を閉じることができる。素晴らしい名著をありがとうございました。うちのニャンコも感謝して本を齧っておりましたw。

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Sorungeth Soru Trailer マイク・ウィルスン監督『ソルンゲス・ソル (ジェーミス・バンドゥ)』(予告篇)
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 マイク・ウィルスン『Sorungeth Soru』の予告篇。
 名作の影に存在したこうした映画も観てみたいというのは相当の屈折でしょうか(^^;)。ちなみにスタッフリストにA.C.クラークの名前はありません。

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2021.07.05

■感想 アダム・ウィンガード監督『ゴジラvsコング』

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 アダム・ウィンガード監督『ゴジラvsコング』@シネックスマーゴで観てきました。

 ネタバレ感想は後半書きますが、この映画、予告篇は事前に観ない方が良いですね、随分ネタバレしている様な気がします。

 感想としては『シン・ゴジラ』はやはり凄い映画だったw、というのが偽らざるところ。本作も怪獣バトルのアングルとかアイデアとか、未知の舞台のビジュアルとか、映像は素晴らしいものがあります。特にゴジラとキングコングの細かな表情の描写、ビルの作り込み等ディテールは白眉という他ないでしょう。凄い。

 とはいえ、観終わった後に何も残らない、この空洞感は何なのでしょうか。全体としてはとても駄目な映画でした。映画館を出る時のこの高揚感のなさは特筆すべきw。
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★★★★★以下ネタバレ有★★★★★
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 やはり問題はシナリオと監督の姿勢でしょうね。

 陰謀論的な話を構築しておきながら、陰謀論を揶揄する主要登場人物。物語の骨格から逆算されて配置されたキャラクターとエピソード。要するにエモーショナルを無視した映画のための強引な物語がこの空洞感の正体であると考えます。

 可哀想なのが小栗旬。白目を剥いた捨て身の演技までしているのに、「芹沢」というゴジラシリーズにとって重要な名前を付けたのに、まるで使い捨ての扱い。悲痛でしたね〜。

 このシリーズ、ゴジラの登場理由が地球の王者というモチベーションで描かれているけれど、その人間臭さも大きなマイナスですね。円谷英二がやってしまった「シェー」と同じくらい、安直で罪深い設定と思うのは僕だけでしょうか。

 この監督と脚本家には、映画の神を舐めてもらっちゃあ困る! ときつく言いたいものです。あまり悔しい出来で脚本家出てこい!と調べてみたら、エリック・ピアソンという『マイティ・ソー バトルロイヤル』のシナリオライターで、何とアベンジャーズシリーズの『インフィニティウォー』『エンドゲーム』他のスクリプトドクターを担当した"大物"とのこと。まさに医者の不養生というやつでしょうか。自分の身体を診る事は出来なかった様です。

 脚本次回作は『ブラック・ウィドゥ』ということで来週の公開を楽しみにしていたのですが、どうしようかな、と悩むレベルですね。

 それにしても上でも書きましたが、素晴らしいSFXが泣いています。
 あの微細な表情/ワクワクする映像が描けているのに、それをドブに捨てられたSFXスタッフ陣は無念でしょうね。

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