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2021年12月

2021.12.30

■感想 前田弘二監督、高田亮脚本『まともじゃないのは君も一緒』


成田凌&清原果耶 『まともじゃないのは君も一緒』

 前田弘二監督、高田亮脚本『まともじゃないのは君も一緒』WOWOW録画初見。

 先週末のアトロクの年間映画ベスト企画で、ライムスターマネージャー小山内円さんがベストに入れていた作品。清原果耶主演というのとストーリー紹介に惹かれてWOWOWで録画してあったので、観てみました。

 これ、かなり傑作です。コメディ/恋愛/青春映画というか、一つの普通のジャンルに入らない、そしてとにかく多くのシーンで笑わせられる佳作。リンク先の予告篇はかなり偏った内容紹介になっていて、この映画の魅力を十分表現できていないため、ご注意くださいw。

 成田凌の数学マニアの予備校講師もとても良いけれど、清原果耶が素晴らしいです。今までも映画もドラマも何本か観ているのだけれど、それらの印象から大きくイメージを変えて、見事なコメディエンヌの才能を見せてくれます。

 そしてここが最もこの映画を好きになったところなのですが、清原果耶の演じる高校生 秋本香住が何というか『ライ麦畑でつかまえて』の主人公 ホールデン・コールフィールドなんですね(^^;)。成田との会話劇も絶妙ですが、高校の仲間との会話、突然ある高校生カップルに話しかけるところ、そしてバーでそこの常連客に絡みつつ恋の悩みをぶっちゃけるところ、、、ホールデンからこの辺りは逸脱しつつも絶妙の演技で物語をクライマックスへ駆動していくこの演技力、素晴らしいです。

 アトロクの21年映画ベストでは、(同じ清原が後半でとても印象的な純粋な女の子を演じていた)『花束のような恋をした』が上位にランクインしていたけれど(この番組のカルチャー寄りの視点からはすごくよくわかるが)、僕はこちらの方が大好きな映画になりましたね(^^ ニコニコ)。


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2021.12.16

■感想 土井裕泰監督、坂元裕二脚本『花束みたいな恋をした』


『花束みたいな恋をした』Special PV
 土井裕泰監督、坂元裕二脚本『花束みたいな恋をした』WOWOW録画初見。評判通りのオタク(サブカル?)心をくすぐるボーイ・ミーツ・ガールな前半と苦い後半、そしてある意味、それら映画の定番から突き抜ける部分のあるラスト。とても気に入る佳作でした。素晴らしい!

 脚本の坂本裕二は近作『anone』『カルテット』が傑作で今回も脚本の骨格と丁寧なディテイルの積み上げがさすが。冒頭の"某神"の出演、主人公 麦の本棚の小説と漫画(『AKIRA』と『おともだち』はオールドファンにも嬉しい)、ラジオ番組「粋な夜電波」のエピソードは上がります(^^)。

 途中出てくるブログ「恋愛生存率」からの引用と海岸の二人のシーンが出色でした。この辺りの坂本裕二脚本は他の追随を許さない、オリジナリティがあるような気がします。

 本作の土井裕泰監督はTBSのディレクターで、今までほとんど意識していなかったのですが、『ストロベリー・オン・ザ・ショートケーキ』『マンハッタンラブストーリー』『逃げ恥』『重版出来!』『カルテット』『凪のお暇』とかどれも記憶に残るドラマの演出を手掛けられている方。
最新作は、あのw『日本沈没-希望のひと-』。本作が傑作だっただけに、その次の作品であるはずの、『日本沈没-希望のひと-』の低迷ぶりはどうしてしまったのでしょう。

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 夢想したのは、坂本裕二はNHKプロフェショナル仕事の流儀で、仕事場の本棚の中心に『零號琴』『オブジェクタム』『ケルべロス 第五の首』『デス博士の島その他の物語』『異形の愛』『オスカー・ワオの短く凄まじい人生』『モナドの領域』『ジ・アート・オブ・シン・ゴジラ』等が置いてあるのが映っているのを見た事があり(ほぼうちの本棚じゃん!)、SFファンとは軽々に言えないけれどこれら書作が並ぶところからSF好きなのは間違いないので、本作の延長で土井裕泰監督が坂本裕二に『日本沈没』の脚本を依頼して、この方の脚本でドラマ『日本沈没』が作られていたら、、、ということ。

 いつもの脚本とテーマが随分違うので食指は動かないでしょうが、本作を観て、ありえないそんな空想の傑作ドラマを思わず想像してしまったのです。

 あと、最後に同じ菅田将暉の恋愛映画では『糸』がありますが、恋愛映画としては僕は『糸』の方が実は好み(^^)。中島みゆきのファンだしw。

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2021.12.13

■紹介 ビジュアル アーティスト エアロン・アルフリー : Aeron Alfrey

Diorama from Aeron Alfrey on Vimeo
エアロン・アルフリー : Aeron Alfrey (公式HP)
 Facebookで知ったAeron Alfreyの衝撃的なイラスト(下図)。検索してみたら、上のような立体作品の動画も公開されていました。なかなか素晴らしいインパクトです。

 悪夢方向に振っていますが、タッチが似ているユーリ・ノルシュテインみたいな、セルロイドに緻密に描き込んだ切り絵アニメーションになったら悪夢観そうなレベルです。いつかそんな作品を見て観たいものです。

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◆関連リンク
ホラーアンソロジー『Madhouse』
  John Palisano ,
Miss Mandible , Cyrus Wraith Walkerらによるアンソロジーのカバーをエアロン・アルフリーが描かれています。
Madhouse ホラーアンソロジー (公式HP)
 その公式HP、アルフリーの絵が少しだけアニメーションで動いています。

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2021.12.06

■感想 ピーター・ウェラー, ポール・ホラハン他監督『ザ・ラストシップ』シーズン3,4,5 (#29-56)


The Last Ship S02E05 - Missile Scene

 なかなかバトルシーンの良いダイジェスト動画がアップされていないため、ご興味がある方は、以下をご覧ください。
Faceboog Move Zone

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 『ザ・ラストシップ』season5の最終話まで、amazonプライムで3週間ほどで全56話観終わりました。いや〜充実のドラマ体験でした。
 若干、シーズン3のアジア篇で中弛み感があったけれど、毎回緊迫したドラマを観せてくれて大満足。多少キーとなるウィルスが物語の万能ツールとして使われている感は減点だけれど、人物描写、アクション等々、丁寧に練られていて、ポストアポカリプスの世界をある意味、悪夢巡りするような展開でここまで掘り下げて描いたのはなかなか画期的なのではないでしょうか。

 (ファンの方には大変申し訳ないけれど) 地球滅亡の危機をたった一隻で救う「ラストシップ」というと、某国産アニメを思い出すわけだけれど、その第一作から昭和時代の作品で、ドラマ部分、戦闘部分(SF的設定は別にして)に対して、リアリティとしては不満があったご都合主義的な部分をかなりこちらはクリアしているように思うw。

 特に毎回スリリングだったのは、海洋戦、地上戦、政治ドラマ等がそれこそ敵味方が知力を尽くしている感があって、見応えがあった。シーズン5で『羅生門』みたいに混沌としている、というセリフがヒロイン役の女戦士サーシャから出てくるけれど、黒澤明のシナリオ技巧としてよく説明されている敵味方に二人以上の脚本家が分かれて、それぞれの立場で難題を提示し、相手側が知力を絞って突破アイデアを出していく、というのを実践していたのではないだろうかと思えるハラハラさ。

 あと素晴らしかったのがシーズン4の後半からラスト。
 ネタバレに注意して書くと、宮崎駿の某傑作作品を少し下書きにしてシナリオが描かれているような描写がいくつかあった。まさか庵野秀明が映像化する前に、あのシーン(に近いもの)を映像として観られるとは。(もちろん舞台が現代なので宮崎作品とは大きく違います。テーマ的なものが一部トレースされている感じです)

 ここは監督としても本作で7作を担当している、ロボコップのピーター・ウェラーが見事なマッド・サイエンティストを演じていて、そのシーンのリアリティを担保する一助になっていた。

 またシーズン4ではホメロス『オデッセイア』を引用する下りもあり、その辺りの関連性も感じてしまった。
 ネットで英語のキーワード検索して、宮崎駿作と本作の関連性を検索してみたが、何もヒットしない。もしかしたら僕の思い込み過ぎかもしれないけれど、そんなことも感じさせるシーズン4だったのでここに記しておきます。どなたか観られた方、ご意見頂けると嬉しいです(^^)。

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