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2022年1月

2022.01.31

■感想 磯光雄監督『地球外少年少女』Mitso Iso's "Orbital Children" "Extra-Terrestrial Boys & Girls"


『地球外少年少女』ティーザー予告編 - Netflix
 『電脳コイル』からはや15年、磯光雄監督の待望の新作『地球外少年少女』が遂に公開された。Netflixで1~6話を一気見してしまいました。
 貴重な新作を一気に、何とも贅沢な気分です。

 こちらも『電脳コイル』に続き近未来SF、商業的宇宙開発が活発に実施されている現在から進化して、まさに近未来にこんな宇宙の光景が登場するのでは無いかという、ワクワクする展開でした。

 作画も色彩も美術も素晴らしく、宇宙映像のセンスオブワンダーを堪能できました。

 リンク先は企画当初のイメージの様ですが、ここにコンセプトが明確に構築されてた様子が伺えます。

 素晴らしいSF映像!しかしここで僕がSFと書いているのに対して、なかなか磯監督のスタンスは微妙な様です。

 「地球外少年少女」磯光雄監督「未知の先にある変化はおもしろい」宇宙を舞台にアニメを作る理由。「電脳コイル」との共通点も【インタビュー】(アニメ!アニメ!)

"磯:2014年頃です。いずれは宇宙を舞台にした作品を作らなければならないと思っており、ついにタイミングが巡ってきたのだと企画を作り始めました。『ゼロ・グラビティ』(※)を見て「『宇宙=SF』ではなくなったんだなあ」と実感したことが大きなきっかけだったと思います。同じようにアニメでも宇宙を舞台にしたアクションドラマを作ることができるのではないかと、、、"

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 磯光雄監督御本人は、この映画をSFとは読んでいない様です。なかなか複雑な気持ちになります。これが商業的アピールのしやすさからなのか、SFに対する想いからなのか、気になるところです。

 商業的には、テクノロジー、産業方面ではSFの空想力は再注目されていますが、日本の映画業界は変な誤解があるのかもしれないですね。米のApple movie trailersページ等ではアクション寄り大作("Moonfall"とか)もジャンルはSFとしっかり謳っているのに対して、あえてSFという言葉を前面に出さないのは、日本の映像制作環境の状況が少し違う様にもみえます。

 あくまでも磯監督は前述のインタビューにある「『宇宙=SF』ではなくなった」というスタンスで、現在の宇宙開発/ハリウッドの近未来の宇宙映画状況をこの様に捉えているということなのかもしれないですが、、、。

 SFで育った世代としては100年に満たない(ガーンズバックのアメイジングストーリーズ創刊が1926年ということですので)SFというジャンルがネーミングとしてだけかもしれないですが、この様にトーンダウンしてしまうのは何とも残念な気持ちでなりません。SFって人類の想像力の飛躍のためにも滅ぼしてはいけない概念の様に思います(^^;)。磯監督の本作も想像力の飛躍が素晴らしいので。

 後半、SFにこだわって考えたことの記述になってしまいましたが、SFかどうかというより、これだけの想像力と素晴らしい映像を見せてくれたことで本作は素晴らしい作品だと思います。Netflixは全世界公開ということなので、海外での評価もとても楽しみです。

◆関連リンク
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2022.01.26

■感想 大友克洋全集『童夢』『Animation AKIRA Storyboards 1』(OTOMO THE COMPLETE WORKS)

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大友克洋全集 (公式HP)

 買うつもりはなかったのに、Facebookのタイムラインの皆さんの勢いに釣られて、本屋で見かけてレジへ2冊とも持って行って知らないうちに買ってました(^^;;)。

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 絵コンテは以前出版されたものを下巻だけ持ってたのですが、前回の上下巻の区切り方とは別で、こちらはA,Bパートを全収録なので、BパートCut 1383〜1517は手持ちの絵コンテ集とダブりになってしまった。

 あと絵コンテは今回は右とじで、以前出版された手持ちの絵コンテ集とはページの順が逆になってますね。

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 童夢は初版時のえっちゃんの表紙に愛着があって全集買っても手放せないですねw。この表紙の着色イメージは全集未収録で残念。

 今後のラインナップは、公式HPのこちらにありますが、『OTOMO THE COMPLETE WORKS Animation AKIRA 』という22.7/20配本予定の20巻がどういう内容になるか、興味深いです。絵コンテ以外の企画書や設定資料から始まり、注目は大友氏による原画が全収録という可能性があるのではないかということで、ワクワクしてしまいます。楽しみですね。

◆関連リンク いずれも22.1/23現在、売り切れで新刊出たばかりなのに、転売屋によって法外なプレミア価格が付いていますので、本屋で購入するか、増刷されるのを待った方が良いです。ご注意ください。
大友克洋全集『 Animation AKIRA Storyboards 1(OTOMO THE COMPLETE WORKS) 』

"1988年に劇場公開され、漫画の域を超えてアニメの世界までも革新したアニメ映画版『AKIRA』。このアニメは原作者である大友克洋自身が、監督と脚本を務めるという異例の製作体制で作られながら、世界的な評価まで得ているという破格の名作である。本書は、そのアニメ版を製作するにあたり、大友自身が自ら描き上げた膨大な量の絵コンテを全2巻にまとめたものの第1巻にあたる。かつてヤングマガジン編集部から1988年に、同じく2分冊で刊行されていたが、短期間で絶版となって以来、長らくプレミア品となっていたレアアイテムが、「大友克洋全集」の第1期・第1回配本タイトルとして、遂に待望の復刻となる。これは単体の商品としては30年以上ぶりである。絵コンテというと、ラフに描かれた未完成な設計図と思われがちだが、本書のコンテの精密度は桁が違う。それもそのはず、著者がこれを描いたのは、映画版『AKIRA』製作のために漫画版の連載を中断していた1987年頃であり、単行本でいうと5巻の中盤を描いていた時期。連載バリバリ時期のテンションで描かれた絵コンテの緻密さやキャラクターの躍動感は、漫画本編に勝るとも劣らないレベルなのだ。なお本書はA、B、C、Dから成る全4パートの前半A・Bパートを完全収録し、全500ページ近い大ボリュームとなっている。眺めるだけでアニメ版『AKIRA』の映像が脳内に再生される「読む動画」の如き本書ゆえ、熟読すればするほど著者の驚異的なアニメ製作術に触れることができるはずだ。なお、書名の「Storyboards(ストーリーボード)」とは「絵コンテ」の英語表記である。
[OTOMO THE COMPLETE WORKS とは?]
世界的なタイトルを次々に生み出し、漫画家、イラストレーター、映像監督、シナリオライターなどのジャンルに囚われない創作者の顔を持つ大友克洋。その多様な「全仕事」のすべてを、作者である大友克洋自身が時代順に俯瞰、総括、そしてリ=プロデュースするのが「OTOMO THE COMPLETE WORKS」(大友克洋全集)です。日本から世界中に衝撃をもたらした表現方法の集積は、一人の作家のパーソナルな仕事集というだけでなく、1970年代から現代までの漫画、アニメ、映像までをも含む、現代文化の冒険を愉しめる作品集とも言えるでしょう。時代によって何が生み出されたか。作家は時代に何を見て、考えてきたのか。そして作家は、次に何を試みていくのか。──作品から発言までを網羅することで、作家としての進化を明らかにし、次の世代の創作者へその姿勢を伝えていく。この全集は作家自身が自らを「作品化」し、手触りも含むモノとして記録する、まったく新しい全集となります。(編集室より)"

大友克洋全集『 童夢(OTOMO THE COMPLETE WORKS) 』

"11983年に刊行された瞬間、既存の漫画表現のレベルを一挙にアップデートし、文字どおり「漫画を革新」した歴史的傑作『童夢』。その後20年以上、60刷を超える増刷を重ねながらも、現在絶版状態となっていた本作が「大友克洋全集」の第1期・第1回配本タイトルとして、超待望の復刻刊行。原画から新たに起こした版により画質も向上、厳選された紙質によって印刷のクオリティも格段にアップ。また単行本では未収録となっていた幻の連載時の扉や、2色カラー原画も復刻し再現。さらに著者が単行本カバー用として構想していたイラストをカラーにて完全再現し収録。巻末には著者自身による解説も収録したコンプリート(全集)仕様です。判型は従来の単行本よりもひと回り大きいB5変型サイズ。第15回「星雲賞コミック部門」および「第4回日本SF大賞」受賞作品。漫画史を語る上で避けては通れない記念碑的作品が遂に再臨!(編集室より)"

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2022.01.24

■感想 ディーン・デュボア脚本・監督『ヒックとドラゴン 聖地への冒険』


First 10 Minutes of HOW TO TRAIN YOUR DRAGON: THE HIDDEN WORLD
 冒頭10分がYoutubeに公開されています。

 ディーン・デュボア脚本・監督『ヒックとドラゴン 聖地への冒険』WOWOW録画初見。

 これ、前2作に引き続き傑作ですね! シリーズ物にありがちな2,3作目での劣化が見られず、特に映像の素晴らしさに関しては、3作目はさらにパワーアップして、緻密にそして幻想的に見事なバイキングとドラゴンの世界を描いています。

 物語については原作にどの程度、寄っているのか知りませんが、2010年から9年に渡り、一貫して脚本と監督を務めたディーン・デュボアの力量なのでしょう。Wiki見ると、批評家の評価も高く、興行成績も世界で500億円越えという素晴らしい成果を出しているみたい。日本では地味な公開だったけれど、幅広く観てもらいたい傑作だと思います。(2019年末の日本公開作を今頃、すみません)

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 特にバイキングたちの住む島の絶景と、聖地の幻想的な描写は素晴らしい。雲の中の竜たちの飛翔とか海の描写は、宮崎作品へのインスパイアもあるだろうけれど、3D-CGによって絶妙のリアリティと幻想味が表現されていて絶品。宮崎駿はきっと観ていないだろうけれどw、これを観たら自身が3D-CGの進化した現在に若手だったら、、、と嫉妬するレベルでないかと思う(^^;)。

 僕は今回、4K録画して2Kプロジェクタ 120インチ画面で2D映画として観たけれど、この飛翔シーンや異世界描写はある意味、『アバター』の現時点でのアップデートでもあるわけで、その真価を体感するためには、本来の3D立体視映画として大画面で是非観てみたいと強く思った。もうこれは海外版しか出ていない3Dブルーレイを購入するしかないですw。

 ということで購入しました。まだ鑑賞できていないため、観終わったら改めて立体視レビューを実施します。

『3D blu-ray』
 海外版です。リージョン等、ご確認ください。コメント欄では問題なく日本のブルーレイプレイヤで再生できているようですが、まだ僕も未確認のため、ご自身の判断でお願いします。

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2022.01.17

■予告篇 古川日出男原作・湯浅政明監督『犬王』


映画『犬王』新特報映像(60秒ver.)
 湯浅政明監督『犬王』の新しい予告篇!
 TV放映がはじまった『平家物語』に続き、古川日出男小説世界の香りと、湯浅政明監督作品タッチが絶妙な感じです。
 野木亜紀子脚本、大友良英音楽にも期待!

 ここへ来て、古川日出男作品の映像化は、素晴らしいスタッフが続き、とても恵まれてますね!
 この勢いで、『アラビアの夜の種族』も是非アニメ化を!!

犬王:新映像公開 琵琶の音と力強い歌声に熱狂 古川日出男「これは映画のモンスターである」 湯浅政明監督の劇場版アニメ

“「これは映画のモンスターである。スクリーンがこれほど怪物的にうごめき出すのを、私はおそらく初めて見た。しかも、それらの『うごめき』はポップで、悲劇的なはずなのに徹底して楽天的で、要するに痛快な『しいたげられた者たちの反撃』なのだ。映像だけではない。音楽も、それからキャラクターたちの声も全部蠢動(しゅんどう
)している。私は、原作の小説を書いたはずなのだけれども、そうした事実はすっかり失念してしまって、スクリーンに映し出される『世界』に唖然とさせられている。にもかかわらず、身体は反応してしまっていて、揺らされている。私はシェークさせられている。
一体これはなんなのか、と私は素直に思った。そして、回答はこのコメントの最初に記した。これは映画のモンスターである。これはアニメーションのモンスターである。これは音楽アニメーションのモンスターである」“

 古川日出男のこのコメント、湯浅政明監督らしい鮮烈な映画が観られそうです!

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2022.01.12

■映像研究メモ 映像記憶の謎 VAEを用いたConvolutional Neural Networks

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Variational Autoencoder: An Unsupervised Model for Modeling and Decoding fMRI Activity in Visual Cortex
 有限な脳の記憶容量で、昔観た映画やテレビの映像を、これだけの量どうやって覚えているのかという長年の疑問についての回答の糸口かも。

 VAE を用いた convolutional neural networksで1024のパラメータで添付のような画像を生成できるらしい。上の引用図にあるように、左側の実際の画像で学習したあと、1024のパラメータを入れるとその学習されたネットワークの出力として右側の画像が得られたということ。要は1024の数を記憶して置いて、脳内の視覚ニュートラルネットが構成されてれば(遺伝/学習?)、この幅の映像を思い出せるということかと理解。

 我々が膨大な映像記憶を持っているのは、脳内にもニューラルネットワークに似たような仕組みがあって、少ない記憶容量で多くの画像、映像情報を持っているのかもしれないです。

 AIの専門家にこの辺り、詳しく聴いてみたいものです。

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2022.01.10

■感想 ラナ・ウォシャウスキー監督『マトリックス レザレクションズ』


THE MATRIX 4 RESURRECTIONS "Behind the Scenes" (2021)

 ラナ・ウォシャウスキー監督『マトリックス レザレクションズ』観てきました。前3作を見直してから行ったんですが、これは観てないと敷居が高い感じ。

 1作目大好きなんですが、それに次ぐ出来で満足しました。2-3作目がサイバーパンクからアクション重視に移行していたのが残念だったので(スミス嫌いだしw)、今作が1作目寄りに回帰したようでSFっぽい感じでした。

 日曜に行ったのですが、関市の劇場は6人しか入ってませんでした。この敷居の高さは若者に入ってもらうには確かに難しいですね。
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★★★★★★ネタバレ注意★★★★★★★
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 冒頭、2-3日前に見直した1作目と同じシーンから始まるのですが、ここの映画的描写は(わざとかもしれないですが)、1作目の革新的映像には程遠く、これはウォシャウスキー監督の退化なのか撮影監督の違いなのか、、、。この辺りで少し不安になったのですが、物語展開が自分の好みでなかなかワクワクして見られました。

 前半特に前作のパロディ的なところ、かなり笑って見られました。ここらは監督の年齢的な余裕ある描写でしょうか。いい感じで肩の力が抜けていて、そしてメタフィクション的でSFチックさに貢献していたかな、と。

 今作で、やはりマトリックスが斬新で刺激的だったのはアクションだけでなく、現実/仮想の鬩ぎ合いだったことを再確認。2-3作目がそこをほぼ外して描いていたのが残念でならなかったので、そこの回帰はファンとして嬉しいものがありました。(特に現実側でネオがセンチネルを超能力で倒すシーンの決着が、現実/仮想テーマとしてキーポイントになったはずなのに放置ですから、、、。)

 あとしょうもない話ですが、バッグス船長役のジェシカ・ヘンウィック、映画見ている間、あれ二階堂ふみに似ているな、、、え、本人に間違いない、、、と思って、パンフのキャスト見て、違っていたので吃驚。ネットでもいくつかそうした書き込みがありましたが、僕はまだ二階堂ふみ本人だと信じていたり、、、、。そんなシミュラクラ現象もまたマトリックス的なのでしたw。

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