アニメ・コミック

2022.02.21

■感想 堀貴秀監督『Junk Head』


ギレルモ・デル・トロ驚嘆!!映画『JUNK HEAD』予告編
 Amazonプライムで公開された堀貴秀監督『Junk Head』、観ました。

 異様な世界ですが、キャラクタがだんだん可愛く見えてきて、不可思議な世界に引き込まれますね。皆さんが映画館公開時に絶賛されていたのが良く分かりました。

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 一人で7年間、コツコツこうした世界を作り続けた堀貴秀監督のイマジネーションの胆力、素晴らしいです。セットとキャラクターの造り込みはもちろん、カメラアングルとかアクションの組立てとか、見事なショットがいっぱいあって、映像の力の込められ方に感動します。


【公式】映画『JUNK HEAD』本編映像解禁!/3/26(金)公開

 そしてキャラクターの話す、変な言語が面白いです。声もほぼ監督によるものというところも驚異的。時々日本語が混じるけれど、ねじくれまくった言語感覚が、先に述べた映像の異世界と見事にマッチして、この映画にしか存在しない、独特の世界が立ち上がってきてますね。

 この言語とキモ可愛いキャラから作家 酉島伝法氏の描く、やはり唯一無二のSF作品群を何となく想起していました。酉島氏の漢字を使い変容した言語で異世界を描くSF、あのどこにもない世界と堀貴秀監督のイマジネーションはどこか地下世界で通底しているのではないでしょうか。(以下、酉島氏のイラストご参照)
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『JUNK HEAD』堀監督、3部作構想を明かす「次の絵コンテまで完成している」
『JUNK HEAD』3.20異形の人形展示会開催 地底生物の正体を写す画像も一挙公開
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2022.02.14

■感想 マイク・リアンダ監督『ミッチェル家とマシンの反乱』


第49回アニー賞ノミネート作品【本編冒頭10分公開】ミッチェル家とマシンの反乱〈『スパイダーマン:スパイダーバース』の制作チームが再結集!各映画サイトで超好評のSFアニメ映画!〉

 マイク・リアンダ監督『ミッチェル家とマシンの反乱』Netflix初見。

 アカデミー賞長編アニメーション映画賞ノミネートと聞いて、観てみました。これは傑作 ! ソニー・ピクチャーズ・アニメーションは『スパイダーバース』が物語も映像センスも最高だったけれど、今回も物凄くクリエイティブな映像で最高に楽しい映画になっています。

 実は添付したサムネイル画像含め、全然良い感じがしていなかったので、『竜とそばかすの姫』を候補から落としてノミネートされた作品がどれほどのものか、と舐めてかかったら、、、、。

 物語は、娘二人を持つ私としてもいろいろと身につまされつつ、ぐっとくる出来、途中好き嫌いは別れるかもしれないけれど、犬のギャグが結構最高で、これだけ声出して笑ってみた作品も久しぶり。

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 加えて映像のクリエイティビティ、3D-CGアニメなのだけれど、木製のパペット的なキャラクタと、その洋服のクレヨンで塗ったような不思議なタッチ。そしていま風にフォトリアルな画像に手描きされた落書きの数々。これが素晴らしく楽しい映像になっていて、おまけにアニメートのレイアウトや動きの誇張のキレの良さは『スパイダーバース』継承。

 そしてエンドクレジットの趣向の的確で心がざわざわする楽しさ。これは映画史上初めて観る趣向なだけに(たぶん)、そしてテーマと密接に関係していてもう拍手喝采。スタッフリストが流れるところも随所にアナログの魅力的な手描きアニメーションが組み込まれていて、スタッフ陣がとにかく楽しんで作っている様が気持ち良い。

 楽しんでいると言えば、マイク・リアンダ監督、主人公の弟役の男の子の声を自ら演じています。
 下手な声優だな〜、と思っていたら、監督が楽しんでやっていたとは!

 いやー、参りました。これだと『竜とそばかすの姫』をノミネートから落としたのも納得(というか、テーマ的にアカデミー賞長編アニメ映画賞ノミネートの『未来のミライ』にも少し通じて、こういうの本当にアメリカでは受けるんだな〜ということかも(^^))。

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2022.02.07

■感想 神山健治監督『永遠の831』


「永遠の831」PV 60秒【Youtube】    (WOWOW公式)

 期待の『永遠の831』WOWOW で放映されたので、観ました。

 陰性な『東のエデン』という感じで、あの頃からの日本の時間が、重く作品にのしかかってます。

 厄災と税制、時間を重く止めた様な空気がのっぺりと映画空間を押し包んでいます。

 モーションアクターによる3D-CGによるセルルックアニメの手法、『ULTRAMAN』『攻殻機動隊 SAC_2045』よりもぬるぬる動くキャラクターが少し不気味の谷に寄っていて、作品の空気を助長している様に思う。

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 SF的アイデアも思いっきり重苦しい政治的世界に接触していくツールになっていて、カタルシスなく、これが現在の若者の体感している社会なのかと思うと…。

 キャラクターデザインとか、昨今の青春アニメ映画な路線に見えるけど、底流には神山健治監督の現実認識が横たわっている様でした。3月に劇場公開もあるようです。

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2022.01.26

■感想 大友克洋全集『童夢』『Animation AKIRA Storyboards 1』(OTOMO THE COMPLETE WORKS)

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大友克洋全集 (公式HP)

 買うつもりはなかったのに、Facebookのタイムラインの皆さんの勢いに釣られて、本屋で見かけてレジへ2冊とも持って行って知らないうちに買ってました(^^;;)。

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 絵コンテは以前出版されたものを下巻だけ持ってたのですが、前回の上下巻の区切り方とは別で、こちらはA,Bパートを全収録なので、BパートCut 1383〜1517は手持ちの絵コンテ集とダブりになってしまった。

 あと絵コンテは今回は右とじで、以前出版された手持ちの絵コンテ集とはページの順が逆になってますね。

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 童夢は初版時のえっちゃんの表紙に愛着があって全集買っても手放せないですねw。この表紙の着色イメージは全集未収録で残念。

 今後のラインナップは、公式HPのこちらにありますが、『OTOMO THE COMPLETE WORKS Animation AKIRA 』という22.7/20配本予定の20巻がどういう内容になるか、興味深いです。絵コンテ以外の企画書や設定資料から始まり、注目は大友氏による原画が全収録という可能性があるのではないかということで、ワクワクしてしまいます。楽しみですね。

◆関連リンク いずれも22.1/23現在、売り切れで新刊出たばかりなのに、転売屋によって法外なプレミア価格が付いていますので、本屋で購入するか、増刷されるのを待った方が良いです。ご注意ください。
大友克洋全集『 Animation AKIRA Storyboards 1(OTOMO THE COMPLETE WORKS) 』

"1988年に劇場公開され、漫画の域を超えてアニメの世界までも革新したアニメ映画版『AKIRA』。このアニメは原作者である大友克洋自身が、監督と脚本を務めるという異例の製作体制で作られながら、世界的な評価まで得ているという破格の名作である。本書は、そのアニメ版を製作するにあたり、大友自身が自ら描き上げた膨大な量の絵コンテを全2巻にまとめたものの第1巻にあたる。かつてヤングマガジン編集部から1988年に、同じく2分冊で刊行されていたが、短期間で絶版となって以来、長らくプレミア品となっていたレアアイテムが、「大友克洋全集」の第1期・第1回配本タイトルとして、遂に待望の復刻となる。これは単体の商品としては30年以上ぶりである。絵コンテというと、ラフに描かれた未完成な設計図と思われがちだが、本書のコンテの精密度は桁が違う。それもそのはず、著者がこれを描いたのは、映画版『AKIRA』製作のために漫画版の連載を中断していた1987年頃であり、単行本でいうと5巻の中盤を描いていた時期。連載バリバリ時期のテンションで描かれた絵コンテの緻密さやキャラクターの躍動感は、漫画本編に勝るとも劣らないレベルなのだ。なお本書はA、B、C、Dから成る全4パートの前半A・Bパートを完全収録し、全500ページ近い大ボリュームとなっている。眺めるだけでアニメ版『AKIRA』の映像が脳内に再生される「読む動画」の如き本書ゆえ、熟読すればするほど著者の驚異的なアニメ製作術に触れることができるはずだ。なお、書名の「Storyboards(ストーリーボード)」とは「絵コンテ」の英語表記である。
[OTOMO THE COMPLETE WORKS とは?]
世界的なタイトルを次々に生み出し、漫画家、イラストレーター、映像監督、シナリオライターなどのジャンルに囚われない創作者の顔を持つ大友克洋。その多様な「全仕事」のすべてを、作者である大友克洋自身が時代順に俯瞰、総括、そしてリ=プロデュースするのが「OTOMO THE COMPLETE WORKS」(大友克洋全集)です。日本から世界中に衝撃をもたらした表現方法の集積は、一人の作家のパーソナルな仕事集というだけでなく、1970年代から現代までの漫画、アニメ、映像までをも含む、現代文化の冒険を愉しめる作品集とも言えるでしょう。時代によって何が生み出されたか。作家は時代に何を見て、考えてきたのか。そして作家は、次に何を試みていくのか。──作品から発言までを網羅することで、作家としての進化を明らかにし、次の世代の創作者へその姿勢を伝えていく。この全集は作家自身が自らを「作品化」し、手触りも含むモノとして記録する、まったく新しい全集となります。(編集室より)"

大友克洋全集『 童夢(OTOMO THE COMPLETE WORKS) 』

"11983年に刊行された瞬間、既存の漫画表現のレベルを一挙にアップデートし、文字どおり「漫画を革新」した歴史的傑作『童夢』。その後20年以上、60刷を超える増刷を重ねながらも、現在絶版状態となっていた本作が「大友克洋全集」の第1期・第1回配本タイトルとして、超待望の復刻刊行。原画から新たに起こした版により画質も向上、厳選された紙質によって印刷のクオリティも格段にアップ。また単行本では未収録となっていた幻の連載時の扉や、2色カラー原画も復刻し再現。さらに著者が単行本カバー用として構想していたイラストをカラーにて完全再現し収録。巻末には著者自身による解説も収録したコンプリート(全集)仕様です。判型は従来の単行本よりもひと回り大きいB5変型サイズ。第15回「星雲賞コミック部門」および「第4回日本SF大賞」受賞作品。漫画史を語る上で避けては通れない記念碑的作品が遂に再臨!(編集室より)"

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2022.01.24

■感想 ディーン・デュボア脚本・監督『ヒックとドラゴン 聖地への冒険』


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 冒頭10分がYoutubeに公開されています。

 ディーン・デュボア脚本・監督『ヒックとドラゴン 聖地への冒険』WOWOW録画初見。

 これ、前2作に引き続き傑作ですね! シリーズ物にありがちな2,3作目での劣化が見られず、特に映像の素晴らしさに関しては、3作目はさらにパワーアップして、緻密にそして幻想的に見事なバイキングとドラゴンの世界を描いています。

 物語については原作にどの程度、寄っているのか知りませんが、2010年から9年に渡り、一貫して脚本と監督を務めたディーン・デュボアの力量なのでしょう。Wiki見ると、批評家の評価も高く、興行成績も世界で500億円越えという素晴らしい成果を出しているみたい。日本では地味な公開だったけれど、幅広く観てもらいたい傑作だと思います。(2019年末の日本公開作を今頃、すみません)

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 特にバイキングたちの住む島の絶景と、聖地の幻想的な描写は素晴らしい。雲の中の竜たちの飛翔とか海の描写は、宮崎作品へのインスパイアもあるだろうけれど、3D-CGによって絶妙のリアリティと幻想味が表現されていて絶品。宮崎駿はきっと観ていないだろうけれどw、これを観たら自身が3D-CGの進化した現在に若手だったら、、、と嫉妬するレベルでないかと思う(^^;)。

 僕は今回、4K録画して2Kプロジェクタ 120インチ画面で2D映画として観たけれど、この飛翔シーンや異世界描写はある意味、『アバター』の現時点でのアップデートでもあるわけで、その真価を体感するためには、本来の3D立体視映画として大画面で是非観てみたいと強く思った。もうこれは海外版しか出ていない3Dブルーレイを購入するしかないですw。

 ということで購入しました。まだ鑑賞できていないため、観終わったら改めて立体視レビューを実施します。

『3D blu-ray』
 海外版です。リージョン等、ご確認ください。コメント欄では問題なく日本のブルーレイプレイヤで再生できているようですが、まだ僕も未確認のため、ご自身の判断でお願いします。

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2022.01.17

■予告篇 古川日出男原作・湯浅政明監督『犬王』


映画『犬王』新特報映像(60秒ver.)
 湯浅政明監督『犬王』の新しい予告篇!
 TV放映がはじまった『平家物語』に続き、古川日出男小説世界の香りと、湯浅政明監督作品タッチが絶妙な感じです。
 野木亜紀子脚本、大友良英音楽にも期待!

 ここへ来て、古川日出男作品の映像化は、素晴らしいスタッフが続き、とても恵まれてますね!
 この勢いで、『アラビアの夜の種族』も是非アニメ化を!!

犬王:新映像公開 琵琶の音と力強い歌声に熱狂 古川日出男「これは映画のモンスターである」 湯浅政明監督の劇場版アニメ

“「これは映画のモンスターである。スクリーンがこれほど怪物的にうごめき出すのを、私はおそらく初めて見た。しかも、それらの『うごめき』はポップで、悲劇的なはずなのに徹底して楽天的で、要するに痛快な『しいたげられた者たちの反撃』なのだ。映像だけではない。音楽も、それからキャラクターたちの声も全部蠢動(しゅんどう
)している。私は、原作の小説を書いたはずなのだけれども、そうした事実はすっかり失念してしまって、スクリーンに映し出される『世界』に唖然とさせられている。にもかかわらず、身体は反応してしまっていて、揺らされている。私はシェークさせられている。
一体これはなんなのか、と私は素直に思った。そして、回答はこのコメントの最初に記した。これは映画のモンスターである。これはアニメーションのモンスターである。これは音楽アニメーションのモンスターである」“

 古川日出男のこのコメント、湯浅政明監督らしい鮮烈な映画が観られそうです!

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2021.10.25

■感想 富野由悠季,矢立肇原作、村瀬修功監督『機動戦士ガンダム 閃光のハサウェイ』


機動戦士ガンダム 閃光のハサウェイ|冒頭15分53秒(Aパート)

 『ガンダム』シリーズには、最近全く薄い僕ですが、評判の映画がAmazonプライムに入ったので、観てみた。
 何とファーストガンダムと『逆襲のシャア』に続く、富野由悠季原作小説の映画化ということで、薄い僕でも着いていく事がなんとかできました。結構、見知らぬ人物の話も出てきていたけれど、、、。

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 まず冒頭の小説とほぼ同じテロシーンのストーリー展開と、その後のハサウェイと不思議な少女 ギギ・アンダルシアの会話が、もろに富野節で痺れます。そして結構エキセントリックな展開でその二人がホテルの空爆に遭うシーン。

 このモビルスーツによる市街地爆撃シーンがとにかく素晴らしい。
 夜間シーンで画面が暗すぎるという批判もあるようだけれど、人物を丁寧に追っていった後、そこに現れる異物としてのモビルスーツ。生身の人がロボットに襲撃される緊迫感をこれだけ迫真のアクションで描いた映画、なかなかないんじゃなかろうか。重力下の空中戦と、人視点の地上戦に痺れました。
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 僕はもうここまでで、この映画、大好きになりました。富野節の不思議な会話もセットで(^^)。

 ずっと観てなかったガンダムだけど、『ジ・オリジン』のルーム戦役の凄まじい宇宙艦隊戦に度肝を抜かれて、今回のモビルスーツテロ戦闘の迫真に触れ、この日本アニメーションの進化を体感しておかないともったいないと反省したのでした。


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2021.09.08

■情報 TVアニメ「平家物語」


TVアニメ「平家物語」PV 2022年1月よりフジテレビ「+Ultra」ほかにて放送開始&9月15日(水)24時よりFODにて先行独占配信!

" TVアニメーション「平家物語」は、2016年に河出書房新社より刊行された古川日出男訳を底本に採用。主人公であり、物語の語り部である琵琶法師としてアニメオリジナルキャラクターの「びわ」(CV. 悠木碧)を据えました。平清盛(CV. 玄田哲章)の長男・重盛(CV.櫻井孝宏)や、その妹・徳子(CV.早見沙織)をはじめとする平家の人々とびわの交流を軸に、叙事的な史実にとどまらず、時代に翻弄されながらも懸命に生きたひとびとの群像劇としての「平家物語」を展開します*。

監督を務めるのは山田尚子、シリーズ構成・脚本は吉田玲子。漫画家の高野文子が、自身初のアニメーションキャラクター原案を担当します。音楽は牛尾憲輔。アニメーション制作は、「映像研には手を出すな!」で第24回文化庁メディア芸術祭アニメーション部門大賞を受賞し、2022年初夏には劇場アニメーション『犬王』(原作:古川日出男、監督:湯浅政明)の劇場公開も控えるサイエンスSARUが手掛けます。"

 TVアニメーション『平家物語』、古川日出男訳を底本に採用。監督は『映画 聲の形』の山田尚子、シリーズ構成・脚本は『映画 聲の形』『夜明け告げるルーのうた』『きみと、波にのれたら』『若おかみは小学生!』他の吉田玲子。アニメーションキャラクター原案が『絶対安全剃刀』『おともだち』等の漫画家 高野文子が初のアニメキャラクターを担当。とりわけ高野文子のキャラクタは、80年代の高野ファンとしては、嬉しい。

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 そして制作は『犬王』(原作:古川日出男、監督:湯浅政明)の劇場公開も控えるサイエンスSARU!!
 これがヒットしたら、サイエンスSARUによる古川日出男作品のアニメ化が続くかも。『アラビアの夜の種族』を是非!!

◆関連リンク
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2021.07.19

■感想 細田守監督『竜とそばかすの姫』


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 細田守監督『竜とそばかすの姫』観てきました。今日はこちらも36℃とついに夏本番ですが、まさに細田作品らしい、真っ青な空に伸びる入道雲がとても似合う素晴らしい作品でした。劇場からの帰り道の空と雲が映えること映えること。また自転車の高校生とかなりすれ違ったのですが、普段はそんなこと滅多に思わないのに、細田作品を見た後、自分にとってはもううん十年も過ぎ去った高校生の姿がとても眩しく見えるのが印象的。

 『バケモノの子』『ミライの未来』と実は続けて自分には低調な作品が続いていたので、今回、劇場で観るのを少し迷ったのですが、予告篇に感じるところがあり、映画館へ脚を運んで本当に良かったです。壮大なスケールで、映像と音のシャワーを、まさにスクリーンで浴びるのが最適な映画作品でした。

 今回、音楽が重要な要素を占める作品なのですが、CGによる壮大な空間の完成度の高さ、そして音楽映画ともいえる伸びやかな音響。映画の贅沢さとはこうあるべきという、ある意味、世界レベルの作品を見せて頂いた気分です。

 そしてこの映画の物語は一見『アナと雪の女王』『美女と野獣』等を思い出すファンタジーですが、実は現在の技術の延長で実現出来る近未来世界です。電脳空間の可能性を描いたそこが、この細田作品の凄さ。これは“現実”の物語ですね。
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★★★★★★ネタバレ注意★★★★★★ .
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 クライマックスが特に涙腺を刺激してやばかったですが、この現実とヴァーチャルでの人の存在の姿の描き方、まさに新しいネットとリアル空間からなる、現実世界のクロスする様相を見事に結晶化して描いたところが、傑作になっているところなのでしょうね。

 そこにはネット空間の持つ精神的な連帯と共感と誹謗中傷、そして現実空間の持つ/肉体で地面に縛り付けられたヒトの関係の暖かさと鬱陶しさみたいなものを、数々想起させて融合し表出させ、入道雲の様に清々しい景色が存在していました。

 特にネット空間の匿名性で、大袈裟に言えば精神の自由と趣味の世界の追求を何というか現実の会社員生活とは全く切り離すことでちょっとだけ昇華させてきた自分のブログ活動とかを、全然規模も到達点も違うけれど、ダブらせてみてしまったので、何というか感無量な感慨でした。

 物語としては、もちろん『美女と野獣』が下敷きにされていますが、こちらは野獣だけでなく「Belle」も仮の姿と実の姿が描かれています。これをミュージカルとして仕立て上げて、見事に『美女と野獣』のあの名シーンをある意味超えてディズニー映画を凌駕したところも特筆すべきかと。

 加えて、テーマ的には『アナと雪の女王』でエルサが氷の城で初めて自分の自由を手に入れるあの歌のシーンにも肉薄するミュージカルシーンになっていて、意識的にディズニーをその超える目標においていることがよくわかり、しかも超えている部分がしっかりあるという傑作になっていると思いました。

 そしてそうした骨格に対応して、映像としても手描きとCGの両方を融合して描かれた現代的手法の見事さが映えます。
 東宝公式のメイキング映像で細田監督が語られている「CGでも手描きでも、CGは血が通っていないということを言う人もいるが、どちらも人によって描かれていると言うことでは同じ」という視点で融合して描かれたヒトの営みとしてのネットとリアル。テーマにまさに適合したこの手法も素晴らしい。デジタル映像としては、細部をとことん描きこんで、映像圧縮技術の破綻寸前wの映像だったが、デジタルにしかできない映像の可能性を切り開いている様に思う。

 ヒトの有り様として、これからも人類はリアル空間とネット空間の両方の現実世界の中を往還しながら過ごしていくことになるのでしょうが、その一つの結晶化した姿をこの時点で描いた最高傑作の映画なのかもしれません。凄いものを見せてもらいました。

◆その他 メモ
・本作で描かれたリアルと幻想は、ネットを使うことによって、実は今現在の現代にも非常に近いものが存在している現実的な存在であるところが凄い。ネットというもののある意味の本質、ヒトの幻想を"現実化/実体化"するものとしてのネット。このあたりの本質を描き出している点でも本作は鋭いと思います。

・仮想空間 <U> に存在する"正義"を守るチーム「ジャスティス」の隊員たちのユニフォームと身体のフォルムが、何故か手塚治虫風に見えたのは、僕だけでしょうか。もしくは石ノ森章太郎というか、昭和の時代の漫画を思い起こさせます。どんな意味を持たせているのだろう。

◆関連リンク
東宝公式Youtube 「Making of 竜とそばかすの姫」#1〜10
 大変、興味深いメイキングです。これはファン必見。こういう企画、素晴らしいです。
・特に #6「Making of 竜とそばかすの姫:細田守とクリエイター~Uの発想~」
 ボディシェアリング研究者 玉城絵美 琉球大 教授のインタビューは興味深い。

竜とそばかすの姫:公開3日間で興収8.9億円突破 動員60万人 すず、ベルの夏空ビジュアルも
 公開の週末8.9億円。『シン・エヴァンゲリオン劇場版』が初週11.8億円。『竜とそばかすの姫』の方が一般家族層には受け入れられやすい感じなので、これは相当のヒットが期待できそうですね。

 それにしても上記ポスター画像の左、すごく良いですね! やはり細田映画は夏空が似合う!

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2021.06.15

■感想(ネタバレなし) 諫山創『進撃の巨人』18-34巻 ( 最終回 )

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 諫山創『進撃の巨人』18-34巻読了。

 もともと一昨年までは毎巻新しいのが出ると読んでいたのですが、年3冊ペースでストーリー展開に付いていけなくなってw、28巻で挫折していたため、最終巻が発売されたこの機に、遡って後半18巻から一気読みしてみました。

 すると(当たり前ですが)物語展開のスピードと時制が入り乱れる構成も何なくw、骨太の後半ストーリー展開を楽しむことができました。

 ネタバレなしで書きますと、前半17巻くらいまでのどうしようもない閉塞感に対して、後半は大きく物語が広がっていくのですが、その世界でもまた巨大な人の悪意の閉塞感に囚われていくという、出口のなさ感/徒労感が後半でもヒシヒシと登場人物たちの群像劇とともに体感させられます。

 最初の頃の絵のタッチに対して、シャープさを増した絵のタッチが、スピード感と迫力をダイナミックに表現していて、クライマックスの大きな奇想イメージに感嘆。広大なシーンの連続で、ここまであの巨人たちの物語がたどり着いたんだ〜という感慨もひとしおです。

 物語展開は、かなり広範囲に時間も空間も拡大したわけですが、当初からこの全体像は存在していた感じで、伏線も見事に回収されていて、作家の骨太の構想がここまで来て、全貌を読者に開示されたこと、素晴らしいと思いました。

 巨人たちのビジュアルは、これからアニメ化される29巻からの展開が映像の一大絵巻になっていく予感で、秋からの放映がまた楽しみになりました。
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 この写真撮った後、猫が気に入ったらしくこのまま1時間ほど本の上に居座りました。猫の寝床にもなる『進撃』w。

◆関連リンク
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