映画・テレビ

2022.12.19

■感想 ジェームス・キャメロン監督『アバター ウェイ・オブ・ウォーター』3D(Real D) 吹替 HFR


 IMAX 3D Teaser • Avatar 2: The Way of Water • Dolby 5.1
 このYoutubeの3D予告篇、画質も良くて素晴らしい3Dが楽しめます。うちの3D視聴環境(2K 三菱DLPプロジェクタ+3D液晶メガネ)で観ると、映画館のRealD版より美しいw。

 ジェームス・キャメロン『アバター ウェイオブウォーター』イオンシネマ3D吹替 HFR RealD版を昨晩観てきました。

 HFRは違和感なく、3Dの水の表現、異世界の生物描写等、没入感が素晴らしい。特に霧が水辺にたゆたい、水面と砂浜の透明感を幸せそうに体感する様な何でもない情景シーンの佇まいに息を飲みます。

 物語は、公開されたばかりなので、まだ多くは語れないですが、、、映画全体では前作の方が好きですが、パンドラの自然と一体となる体感映像として、この充実度は凄いです。

 字幕が邪魔しない3D吹替、そしてイオンシネマのリアルDは冒頭等、画面がメガネで暗くなるので(うちのプロジェクターより数段暗い)、IMAXレーザー、ドルビーレーザーがお薦めかも(観てないのにw。キャメロンがそう言ってる様なので間違いないでしょう(^^;))





★★★★★★★★★★★以下、ネタバレ注意★★★★★★★★★★★









物語展開的に解せないところ。このあたりが前作に軍配を上げる理由です。今後、2作目に続く、連作の物語でどうストーリーが昇華していくか、キャメロンのお手並み拝見というところでしょうか。

・大佐があの方法でアバター化できるなら、前作でジェイクの兄も同様の方法が取れたはず。
・希少鉱物アンオブタニウムの鉱床の件はどうなったのでしょう。いつの間にかトゥルクンの脳髄液(不老不死の妙薬)の話に置き換わっている。
・捕鯨船ならぬ捕トゥルクン戦での戦いのシーンで、最初一緒に攻撃したメトケイナ族の民がその後、戦いに参加していない。
・ネイティリが本作では精彩がありません。彼女、ヒステリックに叫んで戦っているだけに見えてしまう。前作では良いキャラクターだっただけに、丁寧さのない描写が残念でなりません。

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2022.08.28

■感想 ジョーダン・ピール監督『NOPE/ノープ』


『NOPE/ノープ』予告編

 ご無沙汰しています。久々の記事になりすみません。本業もちょっと忙しくついサボってしまっています。
 ジョーダン・ピール監督『NOPE/ノープ』観ました。

 ネタバレしない様に感想まとめてみます(添付予告篇の範囲のネタバレは許して下さい)。

 今までのピール作品と比べると社会問題的な視点は後退し、今回は正面からエンタメしています。それにしても日常の組立てとか、映像と音と音楽が今回もとても効果的に映画を盛り上げています。

 特に、この予告の冒頭にある速射砲の語りに代表されるキキ・パーマーの快活さと音楽センスがとても気持ち良かった。これは今までのピール監督作にあまりなかった要素で、もともとのコメディアンとしての本領なのかもしれない。

 そしてさらに予告冒頭にあるエドワード・マイブリッジによる世界初の連続写真動画、ここに代表される様に本作は映画の原初的な撮影の姿にも肉薄する、映画撮影の映画でもある。ここが映画ファンの心をくすぐるところ。
いずれにしても端正な映像と的確な演出で(多少の物語展開の理屈的ないつもの無理があっても)ハラハラワクワクと映画ファンを存分に楽しませてくれる。

 何かと比較されることもあるシャマランと比べて、同じく(商業)長編映画3作目で空の未知の存在を描いたピール、『サイン』より僕はこちらに軍配を上げます。

 ピール製作/ナビゲーター/一部脚本の「トワイライトゾーン」もアマゾンプライムで観られるのでこのまま続けて、今年の夏はジョーダン・ピール特集上映が我が家では続きます(^^)。

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2022.05.30

■感想 石川慶監督,脚本,編集、ケン・リュウ原作,制作総指揮『Arc アーク』


映画『Arc アーク』本予告 2021年6月25日(金)公開
 石川慶監督,脚本,編集、ケン・リュウ原作,制作総指揮『Arc アーク』WOWOW録画見。

 昨年6月の映画公開時はあまり評判にならなかったけれど、この映画、静かな佇まいのSFで、なかなか素晴らしい出来でした。ここまでしっとりとした描写と映像で見せるSF映画は稀有ですね。生命倫理をテーマにした『ガタカ』をどこか思い出させるところもあるけれど、あの映画よりSFとしてはよほど思弁的で、その映像演出とともに味わい深い傑作です。

 ケン・リュウの原作短篇は読んでいないですが、テーマ的にはある意味、よくありそうな話なのですが、言葉での説明を極力減らして、多くを語らず映像でテーマを語らせている事で、物語の純度がグッと高まっています。

 その映像、ピオトル・ニエミイスキ撮影監督がとても良いです。多分この方、石川監督のポーランド映画大学留学中の盟友ではないでしょうか。日本の瀬戸内海ほかでロケされた、素晴らしいカメラが堪能できます。

 主演の芳根京子ほか、俳優陣も素晴らしい演技です。とても映画らしいSF、よろしかったら観てみてください。

【単独インタビュー】『Arc アーク』SF作家ケン・リュウが語る、“物語”が存在する意味

"そうした中で、生者と死者が繋がっていることを視覚的な隠喩で示すこのシーンが持つ力強さが、とても気に入っています。自分自身が世代から世代へと続くこの長い鎖の一つのリンクにすぎないことに気が付き、死者と繋がっていることを実感できた時に信じられないほどの力が得られることを、このシーンは素晴らしい形で表現しています。本当に、石川監督の視覚的な隠喩はとてもパワフルで、文章であれば何ページにもわたって書き続けるようなことを、彼はたった一つの画に凝縮しています。"

プラスティネーション(wiki)
 本当にあるんですね! 紐でつるのも本当にやっているみたい!!


BODY WORLDS & The Art of Plastination (English/Français)
 Youtubeで「BODY WORLDS Plastination」で検索すると相当えぐい映像が出てきます。
 御注意を!! リンク先を見るか見ないかは、自己責任でお願いします。
 僕はトラウマになりそうだったので、チラ見しかしていません(^^;;)。

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2022.04.04

■感想 中江裕司 脚本・演出『ふたりのウルトラマン』

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3/26(土)放送NHK BS4K ドラマ「ふたりのウルトラマン」 NHK公式

"ウルトラマンを創った沖縄出身の2人の男たち。金城哲夫と上原正三の知られざる生涯に迫る。ヒーロー誕生の舞台裏や日本復帰前後の沖縄の光と影、夢と挫折を描く人間ドラマ

1972年の沖縄復帰直前、日本全国で大ヒットした特撮ドラマ「ウルトラマンシリーズ」。その初期シリーズには、金城哲夫と上原正三という沖縄出身の若き脚本家が参加していた。アメリカの統治下、沖縄からパスポートを持って上京、20代にして円谷プロのメインライターとして活躍、子どもたちが夢中になる人気番組を創り上げていった。ヒーロー誕生の舞台裏や沖縄の光と影、夢と挫折を描く、沖縄復帰50周年記念の人間ドラマ。"

 中江裕司 脚本・演出『ふたりのウルトラマン』NHK BS-4K録画見。

 前半の上原正三が円谷プロに来てから『マイティジャック』の視聴率不調/『帰ってきたウルトラマン』の脚本1本を最後に金城哲夫が円谷プロを去るところまでは、どっちかというと戯画化された円谷プロ周辺の人々が観ていて辛かった(特に大伴昌司の酷いキャラクタ象で観るのをやめようかと思った)。

 しかし実はこのドラマの真骨頂は後半の、今まで類似の円谷プロ周辺を描いたドラマでは軽く触れられるくらいだった金城の沖縄帰還後の苦悩の描写だった。

 金城の実在する仕事部屋を撮影の舞台として描かれた後半。沖縄を描いた芝居の1シーンを脚本・演出家である金城が自ら演ずるシーン。沖縄海洋博で金城が脚本と撮影を担当したドキュメンタリー映画「かりゆしの島―沖縄」の1シーンを挿入して描かれる金城の生前最後の仕事の苦悩。沖縄と日本本土との狭間で擦り減っていく金城の姿がとても辛く響いてくる。

 脚本・演出を担当した中江裕司は、『ナビィの恋』(未見)等の映画監督で、京都出身/沖縄在住とのこと。沖縄での金城の仕事を丁寧に追った上で作られているのが良くわかる作品になっていた。

 この時代の金城哲夫を、沖縄出身の満島真之介が熱演していて、色々と迫ってくるものが多い印象的なドラマになっていた。

 『ウルトラマン』とか『ウルトラQ』『セブン』リマスターの4K映像がドラマの中で流されて、35mmフィルムと16mmフィルムの差がよく分かったり、といった映像的な楽しみもあったけれど、映像的な一番の収穫はラストシーン、4Kで見事に捉えられた東京の夜景と星空のシーン。見事な「光の国」の描写に感動、でした。

◆関連リンク
ウルトラマン・金城哲夫さん映画「かりゆしの島」 映像・脚本 初の同時公開 

"「ウルトラマン」シリーズの脚本を手掛けた故・金城哲夫さん(1938~76年)が生前最後に手掛けたドキュメンタリー映画「かりゆしの島―沖縄」の映像の一部と、哲夫さん直筆の同作品の脚本が、21~27日の正午から午後5時まで、南風原町立中央公民館で一般公開される。同作品は、沖縄国際海洋博覧会(75~76年)の沖縄館で上映された。作品の映像と脚本が同時に公開されるのは全国でも初めて。県内で映像が公開されるのは、海洋博以来とみられる。"

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2022.03.07

■感想 三木孝浩監督『夏への扉 -キミのいる未来へ-』


『夏への扉 ーキミのいる未来へー』予告映像

 三木孝浩監督『夏への扉 -キミのいる未来へ-』WOWOW録画初見。
ハインラインの原作を読んだのは、はるか昔。ハヤカワの青背で読んだはずなのだけれど、実はほとんどストーリーを忘れていることに気づきました。

 本作はなかなかのSFマインドもあり、かなり楽しめました。過去と未来の映像化も上手く出来ていて、SF世界に彩を加えています。SFの映画化としては日本では有数の作品になったのかもしれません。本作、世界でも初映画化ということで素晴らしいことだと思います。

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 映画化は、『ノルウェイの森』他を作られたプロデューサー小川真司氏の「1979年の初読以来、映画化はずっとずっと個人的な夢」だったとのことで、思いのこもった作品になっていました。
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★★★★★★★ネタバレ注意★★★★★★★
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 Wikiで確認してみたら、本作、ほとんど原作と同じストーリーですね。もうまるで忘れていたことに気付かされました(^^;)。

 映画見ていて、少し惜しいと思ったのは、主人公が30年後の未来へコールドスリープで「戻る」理由がわかりにくかったこと。ここをもう少し丁寧に描いていたら、SFらしさがもっと出たのに、と少々残念でした。ラストの感慨もさらに増していたはずですね。

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2022.02.28

■感想 ジャン=ピエール・ジュネ監督『ビッグバグ』"BIGBUG"

BIGBUG Trailer (2022)

『アメリ』監督6年ぶりの最新作!SFコメディ映画『ビッグバグ』のティザー予告

" 時は2050年。人工知能は至るところにあふれている。あまりにも身近になり過ぎて、人間はあらゆるニーズや欲望の充足をAIに頼る生活に。それが究極にプライベートで道を外れたことであっても…。
 ある静かな住宅街で、4体の家庭用ロボットが突然、主人を人質に自宅に立てこもることを決意。一緒に閉じ込められたのは、どこかかみ合わない家族、お節介な隣人、そして野心的なセックスロボット。彼らは、異常なほどおかしくなっていく雰囲気の中で、お互いに我慢せざるを得なくなる。
 一方、家の外では、最新世代のアンドロイド、ヨニキスが世の中を乗っ取ろうとしている。" 

 Netflixのホーム画面で、カラフルな予告篇があるな、と思ったら、何と『ロスト・チルドレン』『アメリ』のジャン=ピエール・ジュネ監督のNetflixオリジナルの最新作。(ちなみにYoutubeにはこの映画の予告が上のリンクの様なおどろおどろしいサムネイルのものしか置かれていないので、本来の映画の雰囲気を示したキッチュな画像を置けませんでした)

 実に『天才スピヴェット』(2013)以来なので、9年ぶりの新作長篇である。ジュネ監督、9年新作を撮れなかったのだろうか。事情はよくわからないが、ありがとうNetflixと言わざるを得ない。

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 物語は上に引用した通りなのだけれど、2050年のある限定的な空間を舞台にして、アンドロイドと人間によって繰り広げられるブラックコメディ映画。全篇フランス語なのだけれど、どっか映像にはアメリカのホームコメディテレビドラマの雰囲気が横溢。観客の笑い声は聴こえてこないけれど、物語の組み立てもそんなホームドラマをシニカルにダークに、そしてさらにキッチュにした様な、ジュネ監督独特の映画になっておりますので、ご安心。

 冒頭のサムネイル画像を観ると、まるで『ロボコップ』のピーター・ウェラーが年取った姿でロボット役をやっている様な映像なのだけれど、実はこの役者  François Levantal というピーター・ウェラーより若い1960年生まれのフランスの俳優さん。このキャラクターは『ロボコップ』のパロディに見えてしかたなかった。

 多分、舞台を限定したのは、予算的な問題もあったのだろう。だけど、場面と登場人物を絞ったことで、一つ一つのCGやキャラクターの映像と造形はなかなか高レベルでジュネ監督の名目躍如。

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2022.02.25

■感想 濱口竜介監督『ドライブ・マイ・カー』


『ドライブ・マイ・カー』30秒予告【第1弾】
 濱口竜介監督『ドライブ・マイ・カー』、Amazonプライムで有料レンタルにて観ました。48hrの時間制限があったので、2晩で続けて2回観ました。1回目も凄く良かったのですが、じっくりセリフの端々まで堪能した2回目はまさにこの映画の凄さを感じました。


 まず濱口監督の演出、映像として見せて、登場人物に多くを語らせていないのが、いいですね。
ただ僕は同じ村上作品の映画化では『ノルウェイの森』『バーニング 』に比べると、映像で村上作品の登場人物の内面を語る手腕はトラン・アン・ユン、イ・チャンドン両監督に軍配が上がるかと思いました。



「映像化に向かない」ハルキ作品をめぐる映画化への挑戦
米紙が絶賛「映画『ドライブ・マイ・カー』は濱口竜介監督の新たな傑作だ」

"「村上さんの文章は、内なる感情を見事に表現しています。だからこそ、人は彼の作品の映像化を望むのだと思います。ですが、内面における感情を映画で再現するのは、本当に難しいことです」

"

 例えば本作では、車が闇の中を進む描写で、人のどす黒い部分へ触れていく雰囲気が醸成されています。
これが『ノルウェイの森』の場合はロケ地である兵庫県神河町の砥峰(とのみね)高原の森の空撮、『バーニング 』では北朝鮮との国境沿いの村の夕闇の映像が、そうした役割を果たしていたけれど、僕は後の2者の方がその映像センスの的確さで上を言っていると初見では思いました。

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 しかし2回目を観て、映像だけでなく、物語と並列して描かれる演劇「ワーニャ伯父さん」のセリフが、相当に雄弁に村上作品っぽさを盛り上げていて、『ノルウェイの森』『バーニング 』と並ぶくらいの高みに映画を到達させている気がしました。


また演劇の援用としては、神が不在の『ゴドーを待ちながら』からはじまり、『ワーニャ伯父さん』で、神による村上ワールドの喪失を救済する構造にもとても感心しました。特に3回違う形で登場するセリフで、あの世から現生を回想する部分の鮮烈さ。1回目から3回目へのその深化もスリリングで白眉です。

 演劇要素は、原作にはなく映画のオリジナルで、こうした使い方が何とも言えない映画の奥行きを創り出していました。加えてそこの役者たちのダイバーシティ含めて、何とも豊潤な映画空間を構築しています。

これらの複合的な描写でアカデミー賞の作品賞ノミネート作品として『パワー・オブ・ザ・ドッグ』や『ドント・ルック・アップ』に比べて、相当に重厚な傑作だと言ってもいいのではないでしょうか。

 ただ、エンターテインメントとして一般受けするかどうかというと、特に初見における演劇部分の複雑さが足を引っ張るかもしれないと思ったのでした。はてさてどうなりますか。

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★★★★★★★★★以下、ネタバレ注意★★★★★★★★★
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特に映画的な力に満ちていたシーンとして一番素晴らしかったのが以下の件です。



【ネタバレ解説】「ドライブ・マイ・カー」がより面白くなる11の裏話



“原作には「“声”について非常に真実と思えることが書いてあった」という。濱口監督は、最も心に残った部分も明かしている。それは高槻というキャラクターの言葉を表現しているものだ。
「高槻という人間の中にあるどこか深い特別な場所から、それらの言葉は浮かび出てきたようだった。ほんの僅かなあいだかもしれないが、その隠された扉が開いたのだ。彼の言葉は曇りのない、心からのものとして響いた。少なくともそれが演技でないことは明らかだった。」”



 サーブの後席で主人公家福の隣に座り、家福の妻 音が(原作の短篇集の「シェヘラザード」として)語る「同級生の家に空き巣」に入る物語の続きを話す高槻のシーン。特にカメラ目線で目に当てる照明により独特の表情を作り出した高槻によるスリリングな語りは、まさにこの「隠された扉」が開き奥底から響いてくる彼の声の描写である。


 同じ車の中での深淵を覗き込む様な描写に、押井守『ビューティフルドリーマー』における夢邪鬼の語る言葉を思い出したのは僕だけでしょうか。



◆その他のメモ


・短篇「木野」については、主人公の妻 音 の語る物語の少年の名前として出てくるだけでしたが、「木野」でバーに迫るどす黒いもののイメージが映画でも使われていると感じた。どちらかというとそれは村上作品全般に登場するそれの描写を援用している様にも感じた。



・北海道の架空の町 十二滝町で描かれるクライマックスの場面、それでも生きていかないと…と語る主人公の二人を映した後、画面はサーブの車が雪の中に佇むシーンを長回しで映す。タイトル通り、運転と人生をオーバーラップさせた様な味わい深いシーンです。

・村上作品の心象風景を映像として映すシーンで印象的だったのは、渡みさきが「母を殺した」と告白したシーンの後、家福がそれを自分は否定できないと言って、カメラが車の速度でトンネルから海を描く映像。ここの迫ってくる映像の力は素晴らしい。 

・言語のダイバージェンスとして、手話による女優の語り。特に『ワーニャ伯父さん』のラストの回復シーン。あの女性の生命力の輝きは特筆です。

・ラストシーン、ヒュンダイ製のモダンな車、しかも全部ソナタというある種異常なシーンの中に一台だけ違う車 サーブが映るシーン。あれは一体どういう意味だったのでしょう。元々この映画は冒頭以外は、韓国を舞台に描かれる予定だったのが、コロナ禍で広島が舞台になったとのこと。韓国がラストシーンで描かれるのはわかるけど(あの夫妻の犬がサーブに乗っているし)、あの同じ車は一体何だったか悩みます。どなたか、教えて。

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 西島秀俊、三浦透子、霧島れいか、濱口竜介監督が登場『ドライブ・マイ・カー』壮行会イベント【トークノーカット】

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2022.02.16

■感想 セス・ラー二―監督『2067』


2067 Official Trailer (2020) Sci-Fi Movie セス・ラー二―監督『2067』 (WOWOW)

"人間が人工酸素を供給するマスクなしには生きることもできなくなった2067年の地球を舞台に、407年後の未来から名指しで呼ばれた主人公の冒険を描くSF。「ザ・ロード」で主人公の息子役を絶賛された若手K・スミット=マクフィーが、妻を救うため旅立つ青年役を好演する。監督・脚本は「トンビルオ! 密林覇王伝説」のS・ラーニーが務め、2067年を中心に、過去・現在・未来が複雑に折り重なる壮大なストーリーを紡ぎ上げた。共演はドラマ「トゥルーブラッド」のR・クワンテン。"

 先週、ジェーン・カンピオン監督の『パワー・オブ・ザ・ドッグ』を観て、とても印象的な役を演じていたコディ・スミット=マクフィー(この作品でアカデミー賞助演男優賞にノミネートされましたね)が主演を務めた2020年のオーストラリア映画が、WOWOWでちょうど放映されたので、観てみました。

 よくあるディストピアものかと思っていたら、なかなか面白い展開。少し無理ある展開もあるのだけれど、映像が低予算ながら、シャープに印象的な絵を見せてくれていて、小気味良い感じです。特に予告編にある冒頭付近の映像は、『ブレードランナー』っぽいのだけれど、そうした物の中ではなかなかのレベルでワクワクします。

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 で、主演のコディ・スミット=マクフィー、『パワー・オブ・ザ・ドッグ』ほどではないものの、結構こちらでもエキセントリックな感じ。こうしたSFアクションだとマッチョな主役が多い中、この俳優を主演に持ってくるところも、本作の監督のオリジナリティかもしれません。

 配信でこうしたSF映画は、数々アップされていますが、小品としては佳作に入るのではないでしょうか。

◆関連リンク
コディ・スミット=マクフィー(wiki)
 『パラノーマン ブライス・ホローの謎』『コングレス未来学会議』『猿の惑星: 新世紀』『X-Men』 等々、結構、観たことのある作品に出られていますね。やはり『パワー・オブ・ザ・ドッグ』が圧倒的に印象的。





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2022.02.11

■感想 アンドリュー・ニコル監督『TIME/タイム』


「TIME/タイム」予告編

 アンドリュー・ニコル監督『TIME/タイム』('12) Amazonプライムで初見。これ、公開当時知らなくて、初めて観ましたが、なかなかスリリングで良いですね。

 設定はちょっと無理もあるけれど、映画のスリラー的にはなかなか見せる設定です。あと『ガタカ』のニコル監督らしいクラシカルな近未来描写と優生思想的な階層社会描写も映画の奥行きになっていていい感じです。

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 ストーリーは安直な展開という批判はあるんでしょうが、この楽天性は僕は好きです、とりわけ今週2本続けてディストピアな映画を観たあとは救われます(^^;)。
 
 ニコル監督の未来描写、『ガタカ』では少しクラシカルなデザインの車に電気自動車的なモーター音を被せて見事に表現していたのが、今作では5-60年代のアメ車を少し改造して、ブンブンとエンジン音を響かせていました。でも黒を基調としたシックな未来社会描写と相まって独特の近未来映像になっているから不思議です。
 
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 その光景の一因は、多分モデル的体型のスリムで脚の長い女優、男優の多用もあるでしょう。それだけでスタイリッシュな未来w。
 今作、『ツイン・ピークス The Return』でエキセントリックなドラッグ中毒娘でぶっ飛んだ表情の演技を見せていたアマンダ・サイフリッドがキュートで快活なヒロインを演じていて、とても映えていました。何というか未来顔でいいですね(^^)。何だ? 未来顔って! クリクリした目玉の印象でしょうか。自分でもわかりません。

◆関連リンク
アンドリュー・ニコル(wiki)
『TIME』アマンダ・サイフリッドが語る もし永遠の命があったら?「誰かにあげるわ」

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2022.02.09

■感想 ジェーン・カンピオン脚本・監督『パワー・オブ・ザ・ドッグ』

『パワー・オブ・ザ・ドッグ』予告編 - Netflix
 ジェーン・カンピオン脚本・監督『パワー・オブ・ザ・ドッグ』をNetflix初見。

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 これは噂通りの問題作ですね。僕は好きになれない映画な感じを味わいながら、自分ちで観ているのに終始居心地の悪さを覚え続けた。

 西部の美しいが不安を讃えた映像と、カンバーバッチ、キルステン・ダンストと25歳の俳優 コディ・スミット=マクフィーら俳優陣の奥行きのある演技が素晴らしい。特にコディ・スミット=マクフィーは、随分と異なるタイプだが、どこかアンソニー・パーキンスを彷彿とさせる印象的な役者。好きにはなれないけれど、一種異様な迫力がある。

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 何が起こるかわからない迷宮的な不穏なトーンに身を任せたい人には最適な映画です。
 才人と評判のジェーン・カンピオン監督、実は恥ずかしながら初見ですが、これは一筋縄ではいかない奥深い作家ですね。他も観てみます。

◆関連リンク
トーマス・サヴェージ『パワー・オブ・ザ・ドッグ』(角川文庫)

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