SF

2022.05.15

■感想 樋口真嗣 監督 / 庵野秀明 企画・脚本他『シン・ウルトラマン』


予告篇

 "―空想と浪漫。そして、友情。―
 日本を代表するキャラクター“ウルトラマン”を新たに『シン・ウルトラマン』として映画化!
 企画・脚本に、自身もウルトラマンシリーズのファンであることを公言する庵野秀明。そして、監督は数々の傑作を庵野氏と共に世に送り出してきた樋口真嗣。
 「ウルトラマン」の企画・発想の原点に立ち還りながら、現代日本を舞台に、未だ誰も見たことのない“ウルトラマン”が初めて降着した世界を描く、感動と興奮のエンターテインメント大作。"

 いよいよ公開された『シン・ウルトラマン』、仕事帰りに初日レイトショー@豊田KiTARAイオンシネマで観てきました。
 成田享、金城哲夫他スタッフへのリスペクトと空想科学特撮ヒーロー映画の革新、たっぷり堪能させて頂きました。

 成田享、金城哲夫他円谷プロ初期スタッフの創り出した、初代ウルトラマンのフォーマットで(あのフォーマットを使ってこそ?の)ここまでのSFが出来るとは! 素晴らしいです。SFと書いているのは、高度な宇宙知性との接触とその脅威が見事に描けている侵略SFになっているのです!大満足でした。

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 MCUにしてもハリウッド映画の異星からの脅威がほぼトカゲ型の宇宙人による暴力中心の侵略なのに対して(サノスは知性を感じさせましたが、、、)、今回並外れたテクノロジーの進化を持った宇宙からの脅威をまともにスリリングに描き出したのは、まさにこの円谷初期スタッフのクリエイティブあらばこそ、というのが素晴らしいです。これが空想科学特撮の革新であるとともに、世界のヒーロー映画の革新にもなっていると考えるわけです。ではその核は何なのか、というのは以下のネタバレパートで書きますね。

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 映像的な斬新さについては、今回も『シン・ゴジラ』と同様、CGと特撮技術の融合により斬新な映像が撮られていたところですが、特に、縦横無尽なカメラの多視点と、マンや怪獣をカメラがフォローしてグルングルン動くところでした。特にガボラ戦、単調になりがちな「怪獣プロレス」(失礼)の単調さがなく素晴らしい躍動感ある見応えのある決戦シーンでした。

 SF小説との関連を考えると、冒頭の禍特対(カトクタイ) という禍威獣(カイジュウ) を災害として対応する視点は、樋口真嗣が総監督を務めてテレビドラマ化された、作家山本弘の SF『MM9』の気象庁特異生物部対策課(気特対)を連想させます。

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 また異星人による地球の観察と人類への友愛("―空想と浪漫。そして、友情。―)といったテーマは、田中光二の傑作SF短篇連作である『異星の人―エーリアン・メモ 』を想起させますが、これは初代『ウルトラマン』や手塚治虫『W3』の方が先だったりします。地球の観察者は、時折、地球人にたまらなく惹かれてしまう様ですw。

 音響/音楽的には『シン・ゴジラ』継承で旧作の音楽をそのまま使う部分と、鷺巣詩郎によるエヴァンゲリオンに連なる音楽のハイブリッドで、今回も元作の雰囲気を最大限活かして、さらに革新も音でも感じさせる見事なものになっています。


★★★★★以下、ネタバレ全開しますので、ご注意下さい★★★★★







 空想科学特撮ドラマの革新部分について、まずネタバレで書いてみます。

 遥かに進んだを科学とテクノロジーを自在に操る異星の高度知性体がもし侵略を目的に日本に現れたら、、、そんな侵略SFをウルトラマンのフォーマットでSF(もしかしたら"バカSF"(^^;))として本格的に描き出したのが、空想科学映画『シン・ウルトラマン』であると考えるのです(^^)。

 高度知性体が地球に現れたらどういう状況になるか、、、①全く異質な知性として人類とはコミュニケーションが全く取れない。②異星知性体がその高度な知能とテクノロジーで地球人の言語を習得し流暢にコミュニケーションする。大きく言えば、このどちらかであろう。

 シン・ウルトラマンではもちろん初代ウルトラマンのフォーマットに従い②のファーストコンタクトを描いているが、理論物理学者 橋本幸二 京大教授(素粒子論,弦理論,量子重力理論) の監修により、非粒子物理学によるハイパーテクノロジーを描き、高度知性の侵略を描き出す。

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 ここでは圧倒的な科学技術力の差が描かれており、それだけの進化を遂げていれば、例え知性の形態が全く別の異星人であっても、知能とテクノロジーで日本文化を理解した上で日本語のコミュニケーションを可能としている、というのを納得させる。その際のコミュニケーションが公園のブランコや、居酒屋の割り勘飲み会であっても不思議ではないだろうと言う(バカ)SF的な説得感を持たせるw。

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 実相寺監督が創り出したちゃぶ台でのメトロン星人とダンの会話も、現代的リアリティを持つことになる(でもバカSF(褒め言葉です)でしょw)。

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 今作のメフィラス外星人 山本耕史の素晴らしいコミュニケーション能力とユーモアに、劇場で爆笑しつつ上手いなぁ〜と感心した多くの観客のみなさんには、この感覚わかってもらえると思います。山本耕史最高でした。

宇宙を支配する「たった1つの数式」があるって知っていました? 橋本幸二 京大教授
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非粒子物理学(wiki)
 無知なので、これは映画のための架空科学の造語だろうと思っていたのですが、本当に最先端の思索として理論物理学の世界に実在しましたw。

"理論物理学において、非粒子物理 (Unparticle physics) は、粒子物理学標準模型を用いて粒子の観点から説明することができない、その構成要素がスケール不変である物質を予想する思索的な理論である"

・プランクブレーンの「ブレーン」は、これみたいです。
 ブレーン宇宙論(東大 宇宙理論研究室 小山和哉氏資料.pdf)ってのがあるんですね。

 プランクは「光子のもつエネルギーと振動数の比例関係をあらわす比例定数」であるプランク定数からでしょうか。

 超弦理論等をベースに、プランクブレーンをコントロールして強大な力を持ち、地球人類殲滅兵器たるゼットンを軌道上に展開する超知性体、ゾーフィ。殲滅の目的が、ベータカプセルで巨大な破壊兵器になるポテンシャルを数十億人の人類が持っているから、というのがワクワクするエスエフ設定である。

 圧倒的な力の前に何もできずに立ちすくむ人類の無常感、ここはまさにSFのセンス・オブ・ワンダーだと思う。

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 超弦理論の描き出す11次元とか、劉 慈欣の世界的SF大作『三体』でも超科学文明が次元を自在に操るテクノロジーを利用して、脅威的なシーンが描かれてましたが、ウルトラマンは既に55年前にそんな技術を使う超人を描いてたのですね!(^^)。

 というかそのフォーマットには既にそうした視点が内蔵され、それが55年後に理論物理学の進化の援用によって、樋口真嗣監督 / 庵野秀明企画・脚本のスタッフ陣によって、映像として具現化されたわけです。もう日本の映像界も、『三体』を持って超絶SF世界を描く世界映画シーンに負けないレベルに到達したのです(^^)。どんとこい『三体』、Netflx !! ww。

 最終兵器ゼットンが地球上空に展開していくシーン、人類を一瞬で滅却するパワーの脅威を、あの元作の最終回と同じ効果音で、迫力持って描いてあって、上記の様な侵略SFの映像化に震えながら、胸熱にならざるを得ませんでした。

ウルトラマン (Wiki) より抜粋

放送回 放送日 制作順 サブタイトル 登場怪獣・宇宙人 脚本 特技監督 監督 視聴率
1 7月17日 5 ウルトラ作戦第一号 ベムラー 関沢新一
金城哲夫
高野宏一 円谷一 34.0%
3 7月31日 3 科特隊出撃せよ ネロンガ 山田正弘 的場徹 飯島敏宏 33.6%
9 9月11日 9 電光石火作戦 ガボラ 山田正弘 高野宏一 野長瀬三摩地 39.5%
18 11月13日 19 遊星から来た兄弟 ザラブ星人
にせウルトラマン
南川竜
金城哲夫

高野宏一

野長瀬三摩地 39.8%
33 2月26日 33 禁じられた言葉 メフィラス星人
バルタン星人(三代目)
ザラブ星人(二代目)
ケムール人(二代目)
巨大フジ隊員
金城哲夫

高野宏一

鈴木俊継 40.7%
39 4月9日 39 さらばウルトラマン ゼットン
ゼットン星人
ゾフィー
金城哲夫 高野宏一 円谷一 37.8%

 今作の構成は、初代ウルトラマンの上記リストの話数をほぼこの順番に並べたものである。赤文字部分が登場する怪獣と宇宙人である。各話のエピソードもかなり映画にそのまま使われている部分が多い。ここで脚本家としての金城哲夫の功績が大きいことがわかる。もちろんメインライターだったのでこうなるのは必然かもしれないが、シン・ウルトラマンも金城(と上記リストのシナリオライター)の脚本原案と言っても過言ではないと思う。だけどクレジットには彼らの名前はなく「脚本 庵野秀明、原作監修 隠田雅浩」の名前のみ。ここは成田亨の名前がクレジットされているのと合わせて、是非とも脚本原案等の表記をして欲しかったと思うのは僕だけだろうか。

 そしてこれら5話分のストーリーを繋ぐ縦糸が、上述した侵略SFとしての高度知性の外星人とのコンタクトと人類の無力/そして最後の反撃の物語ということになる。一本の映画として昇華させるための、この庵野秀明らによるアイデアとクライマックスはなかなかのものだと思います。

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 ただこの物語の骨格で、実は一点、しっくりこないこともあります。
 地球人類がプランク・ブレーンとの相性が良く、数十億の超兵器の素材として宇宙から狙われるという設定。ここが凄くドキドキする設定異様な設定で、長澤まさみの巨大化シーンをビジュアル化して、そこから数十億の人類の異様な巨大化のビジョンも観客の脳内に想起させている。しかしメフィラスも同じ能力を持っているはずで、地球だけが特別という感じがしないのが少し腑に落ちません。何らかその辺りの描写があると良かったかな、と。

 あとこの物語の骨格で、一度ゼットン戦にウルトラマンが破れたところで、次がどういう展開になるか、手に汗握った。
 その際に妄想したのが、「シン・ゴジラ」の文字が(「ウルトラQ」の代わりに)冒頭のタイトルに出てきたことで、ついクライマックスで人類が非粒子物理学の公式を得て、東京駅に凍結されたシン・ゴジラを新たなベータカプセルで、対ゼットン兵器として復活させる展開を一瞬、夢想しました。もちろんそんな展開はなかったのだけれど、一瞬シン・ゴジラがプランクブレーンの力で超巨大化してゼットンと戦うビジョンは鮮烈でした(^^)。

◆その他 雑記
・エンディングの歌、米津玄師「M八七」の音調では僕には「空想と浪漫。そして、友情」の歌に聴こえませんでした。ビジネス側面が強いとは言え、ここはやはり初代のテーマソングを高らかに聴かせて欲しかったなぁ〜と思うのです(^^)。

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2022.01.31

■感想 磯光雄監督『地球外少年少女』Mitso Iso's "Orbital Children" "Extra-Terrestrial Boys & Girls"


『地球外少年少女』ティーザー予告編 - Netflix
 『電脳コイル』からはや15年、磯光雄監督の待望の新作『地球外少年少女』が遂に公開された。Netflixで1~6話を一気見してしまいました。
 貴重な新作を一気に、何とも贅沢な気分です。

 こちらも『電脳コイル』に続き近未来SF、商業的宇宙開発が活発に実施されている現在から進化して、まさに近未来にこんな宇宙の光景が登場するのでは無いかという、ワクワクする展開でした。

 作画も色彩も美術も素晴らしく、宇宙映像のセンスオブワンダーを堪能できました。

 リンク先は企画当初のイメージの様ですが、ここにコンセプトが明確に構築されてた様子が伺えます。

 素晴らしいSF映像!しかしここで僕がSFと書いているのに対して、なかなか磯監督のスタンスは微妙な様です。

 「地球外少年少女」磯光雄監督「未知の先にある変化はおもしろい」宇宙を舞台にアニメを作る理由。「電脳コイル」との共通点も【インタビュー】(アニメ!アニメ!)

"磯:2014年頃です。いずれは宇宙を舞台にした作品を作らなければならないと思っており、ついにタイミングが巡ってきたのだと企画を作り始めました。『ゼロ・グラビティ』(※)を見て「『宇宙=SF』ではなくなったんだなあ」と実感したことが大きなきっかけだったと思います。同じようにアニメでも宇宙を舞台にしたアクションドラマを作ることができるのではないかと、、、"

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 磯光雄監督御本人は、この映画をSFとは読んでいない様です。なかなか複雑な気持ちになります。これが商業的アピールのしやすさからなのか、SFに対する想いからなのか、気になるところです。

 商業的には、テクノロジー、産業方面ではSFの空想力は再注目されていますが、日本の映画業界は変な誤解があるのかもしれないですね。米のApple movie trailersページ等ではアクション寄り大作("Moonfall"とか)もジャンルはSFとしっかり謳っているのに対して、あえてSFという言葉を前面に出さないのは、日本の映像制作環境の状況が少し違う様にもみえます。

 あくまでも磯監督は前述のインタビューにある「『宇宙=SF』ではなくなった」というスタンスで、現在の宇宙開発/ハリウッドの近未来の宇宙映画状況をこの様に捉えているということなのかもしれないですが、、、。

 SFで育った世代としては100年に満たない(ガーンズバックのアメイジングストーリーズ創刊が1926年ということですので)SFというジャンルがネーミングとしてだけかもしれないですが、この様にトーンダウンしてしまうのは何とも残念な気持ちでなりません。SFって人類の想像力の飛躍のためにも滅ぼしてはいけない概念の様に思います(^^;)。磯監督の本作も想像力の飛躍が素晴らしいので。

 後半、SFにこだわって考えたことの記述になってしまいましたが、SFかどうかというより、これだけの想像力と素晴らしい映像を見せてくれたことで本作は素晴らしい作品だと思います。Netflixは全世界公開ということなので、海外での評価もとても楽しみです。

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2021.06.07

■感想 劉 慈欣著, 大森 望, 光吉 さくら ワン チャイ, 泊 功訳『三体III 死神永生』

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 劉 慈欣『三体III 死神永生』読了。
 ネタバレはしない様に書きますが、素晴らしいスケールの真っ向勝負のSFでした。I,IIからの期待を裏切らず、宇宙の深淵まで突き進んだ奇想SFの見事な大団円に感無量。


 劉 慈欣、片鱗は今までのI,IIでも充分に現れていましたが、今作上巻で炸裂するロマンティスト振りが素敵ですw。新海誠かくやという一大シチュエーションを骨格にして描かれる手際の見事さ。
 そのシチュエーションは、劉さんの徹底して突き詰めて深く探求していくSF的想像力のみが行き着ける非情な世界設定になっていて、その黒暗ぶりに今回も痺れます。

 下巻で炸裂する宇宙論を縦横無尽に使い尽くして描かれる超絶の光景。この奇想映像の極北は読者に想像力の限界を要求する、まさに今までに観たことのないイメージを脳内に展開させてくれます。
 Netflixが実写映像化するそうですが、ここまでの本格奇想SF映像は、世界の映画界でいまだかつて描かれたことのないものなので、いやがおうにも心配と期待が渦巻きますw。

 この映像化には、劉慈欣とケン・リュウがコンサルタントとして協力するとのことだけれど、変にヒーローものだったりラブロマンスだったりに比重を置くのでなく、真っ向勝負のSF世界を原作通りに描いてもらいたいものです。

 そしてラストに流れる、極上のSFのみが獲得するまさに時空を超えた詩情。小松左京『果てしなき流れの果てに』を想起するこの広大なビジョンがもしNetflixで描かれたら、それは本格SFが初めて真っ当にSF映像になる瞬間かもしれない。あまり大きくは期待しないで待ちたいものです(^^)。

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【オンラインイベント】大森望×いとうせいこう 『三体』シリーズ完結記念

"本イベントはZoomウェビナー機能を使用してオンラインでライブ配信します

2021年 06月12日(土)  19:00 - 20:30 JST

六本木 蔦屋書店では、『三体』シリーズの完結を記念してオンラインイベントを開催します。
出演者にお迎えするのは、訳者の大森望さんと、同シリーズ愛読者であるいとうせいこうさん。
SFという枠を超えた極上のエンタテインメント傑作について語る機会を、どうぞお見逃しなく。

【参加条件】
イベントチケット予約・販売サービス「Peatix」にてチケットをご購入いただいたお客様がご参加いただけます。
お申込みの締め切りは6月12日(土)18:00までです。

お申し込みはこちら

(1)オンラインチケット:1,500円 〜"

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2020.08.03

■感想 2020年 世界SF作家会議

 
【世界SF作家会議】#6 劉慈欣インタビュー (Youtube)

【フジテレビ】SF作家の想像力がアフターコロナの世界を照らし出す!『世界SF作家会議』

"日本SF界より、レジェンド・新井素子、鬼才・冲方丁、俊英・藤井太洋、新進気鋭の小川哲、が豪華集結!中国SF界から『三体』の劉慈欣も緊急参加!"

 『三体』の劉慈欣のメッセージが素晴らしい。

 SFを読んできて、911, 311, コロナ等々、SF作家(特に小松左京)が予測した事態の、斜め上を行くような事態に、ある種の驚愕を覚えながら、まさに今も続く、(SFからは想像できなかった)真綿で首を絞める様なパンデミックの事態を体感しているわけです。

 そろそろ終わりが見えてきた人生のあとうん十年で、もしかしたら今まで以上のSF的事態をまだ垣間見ることになるんじゃないかと、時々考えることがある。
 次はファーストコンタクトかもしれない、と血が騒ぐセンス・オブ・ワンダーを感じたりもするわけですがw、劉慈欣は正にそれをここで警鐘している。

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 さすが『三体』、特に「黒暗森林」理論を冷徹に幻視したSF作家。
 日本の作家陣がコロナについて、斜め視点で(それなりに興味深い発言もあるんですが)語っている、このほぼ日本人ばかりの"世界SF作家会議"で、唯一SFの現在の価値を正々堂々正面から語る劉慈欣の本格SF魂に共鳴します。

 この堂々たるSFの王道を突き進む姿で、『三体』は受けているのでしょうね。"世界SF作家会議"、今後も是非とも続けて頂きたいものです。

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2020.07.15

■情報 マルチメディア展開 劉慈欣『三体』『三体II:黒暗森林』舞台化、ファンメイド映像

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The Three-Body Problem II: Dark Forest
Beijing Poly Theatre

"Project Characteristics of The Three-Body Problem
Adapted from the First Hugo Award-Winning Work in Asia-The Three-Body Problem
A science fiction enlightenment in the history of Chinese drama
Naked Eye 3D Technology
A Multimedia Special Effect Feast"

 北京で2019年に開催されたPhilippe Decouflé演出、Lotus Lee Drama Studioによる『三体』『三体II:黒暗森林』のステージ化。
 マルチメディアによる裸眼3Dを実現しているとのこと。どんなものなのか観てみたい。

 ネット検索すると一部動画と舞台写真が見られるので、以下ご紹介。 
Lotus Lee Drama Studio(Facebook)
  ここにある予告編映像が素晴らしいです。劉慈欣『三体』ファン必見!!
 映像と舞台のプロップを見事に使った三体映像が現出している様です。

 日本でも観てみたいですね。中国で三体をステージ化しているLotus Lee Drama Studioによるマルチメディア舞台の予告篇映像。
 あの名場面、そして三体世界の恒星の動きを舞台上で展開(以下写真引用の右下。よく見ると気球とミニドローンを組み合わせて惑星の自由な動きを作り出している様です)。

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Lotus Lee Drama Studio
'Three Body Problem' novel hits the stage in play
'Three-Body' trilogy book gets drama treatment
China set to become the brightest sci-fi star
 『三体』の舞台化についての記事。上記画像の引用元です。

◆ファンメイドフィルム
 上記舞台ほどの完成度ではないですが、ファンメイドもなかなか微笑ましく頑張っています。

My Three Body "Dark Forest" Theme Song - Music Video (English Subtitles)
 『三体II:黒暗森林』のテーマソングMV(^^)。マインクラフト的映像で、『三体』と『三体II:黒暗森林』のあの名場面が映像化されていますww。ネタバレ、ご注意ください。世界での『三体』人気の一端。


My Three Body Season 3 - Episode 8
 20分にわたって、『三体II:黒暗森林』のあの戦闘シーンを映像化。ネタバレ注意!!

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2020.07.13

■感想 劉慈欣『三体II:黒暗森林』( 大森 望 , 立原 透耶 , 上原 かおり , 泊 功 訳 )

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 劉慈欣『三体II:黒暗森林』、読了。
 前作にも増して、骨太で壮大なストーリーと、大ネタ小ネタとつるべうちのSF奇想アイデアの数々を堪能。
 
 前作に続くストーリーは、四百数十年後の三体星人による地球侵略艦隊の到着へ向けて、迎え撃つ地球側のストーリーを中心に進む。
 とりわけ面白いのが、三体人の独特のコミュニケーション能力に対抗して、取られる地球側の前代未聞の面壁計画(ウォールフェイサー・プロジェクト)で選出される四人の面壁者と呼ばれる主人公らの対応策。ここのコンゲーム的な筆運びは本書のエンタテインメント性の多くの部分を負って、優れたリーダビリティをもたらしている。面白くてページを繰る手が止まらないといった状態。上下巻670ページ余りを一気に読ませる筆力である。

【発売中】劉慈欣『三体Ⅱ 黒暗森林』訳者・大森望氏あとがき

" インタビューなどで、往年の〝大きなSF〟に対する偏愛を隠さない劉慈欣だが、《三体》三部作には、クラークやアシモフに代表される黄金時代の英米SFや、小松左京に代表される草創期の日本SFのエッセンスがたっぷり詰め込まれている。こうした古めかしいタイプの本格SFは、とうの昔に時代遅れになり、二一世紀の読者には、もっと洗練された現代的なSFでなければ受け入れられない──と、ぼく個人は勝手に思い込んでいたのだが、『三体』の大ヒットがそんな固定観念を木っ端微塵に吹き飛ばしてくれた。黄金時代のSFが持つある意味で野蛮な力は、現代の読者にも強烈なインパクトを与えうる。それを証明したのが『三体』であり、『黒暗森林』『死神永生(ししんえいせい)』と続くこの三部作だろう。『三体』がSFの歴史を大きく動かしたことはまちがいない。"

 本書に感じるのは、まさにSFを読み始めた頃の、小松左京や光瀬龍、そしてクラークやスタニスワフ・レムといった往年のSFの巨匠たちの、宇宙を舞台にした巨視的な骨太の"大きなSF"の、堂々たるセンスオブワンダー溢れる物語への興奮である。

 特にネタバレになるので詳しくは書けないけれども、クライマックスのある面壁者の透徹した思考の果てに生まれた秘策を巡る、宇宙知的生命の活動を総括的に、そして俯瞰で眺める視点が素晴らしい。フェルミのパラドックスの一つの解の提示なのだけれど、それが恐ろしくペシミスティックで、宇宙の真空の広大な空間を感じさせるこの部分の筆致には震えました。

 前半の理想の仮想女性、後半の大宇宙戦闘シーン、そして『銀英伝』や『2001年宇宙の旅』と言ったアニメ系映像系SFファンを引き込む、というか劉慈欣友達だね的ネタとか、嬉しくなる様なまさに骨太なSFであり、SF映像である本作、日本の読者も大いに楽しめる傑作だと思う。前作にもましてお薦めです。
 
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・当ブログ関連記事
 ■感想 劉慈欣『三体』( 立原 透耶 翻訳監修, 大森 望, 光吉 さくら, ワン チャイ訳 )
 ■感想 劉慈欣原作、郭帆監督『流転の地球(さまよえる地球) : The Wandering Earth』

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2019.11.20

■情報 小松左京原作『日本アパッチ族』ラジオドラマ『鉄になる日』他


小松左京生誕85周年ラジオドラマ「鉄になる日」

『日本アパッチ族』(wikipedia)

"2012年11月21日 『鉄になる日』MBSラジオ(演出:島秀一、脚色:林一郎)

現代風にアレンジ。文化庁芸術祭ラジオ部門大賞、ギャラクシー賞ラジオ部門大賞を受賞[2]。アジア太平洋放送連合(ABU)賞大賞を受賞。"

 小松左京『日本アパッチ族』を原作としたラジオドラマ『鉄になる日』が、Youtubeにアップされていました!
 ずっと聴きたかったのですが、東海地方では放送されなかったので、これは嬉しいです。ということで先日の『日本沈没』ラジオドラマに続き、ご紹介したいと思います。

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 小松左京展でも紹介されていたように、『日本アパッチ族』は第一長編で、当時貧乏で小松左京夫妻の唯一の娯楽だったラジオを質入れしてしまったため、奥さんのために小松左京が毎日少しづつ執筆したという、まさしく娯楽巨編奇想SFです。(実はラジオは質入れしたのでなく修理に出していたということですが、おかげで我々はこんな抱腹絶倒の奇妙な傑作を読めたわけですが(^^) )


伝えたい戦後70年 復興の光と影「アパッチ族」

"終戦から10年あまりたった昭和30年代。日本が高度成長の道を走り始めた頃、戦災復興から取り残され、自分たちだけでしたたかに生き抜こうとした「アパッチ族」と呼ばれる人たちが大阪にいました。著名な作家達が相次いで文学作品の題材にした「アパッチ族」とは。"

 そしてこれが、噂に聴いた 本物の 大阪アパッチ族 の様子を伝えるドキュメント!
 小松左京はこのニュースを知って、スペキュレイションを広げて、鉄で食う出なく、鉄を食う『日本アパッチ族』を書いたのでしょうね。

日本アパッチ族 小松左京 (大阪弁・30年以上前の録音)
『日本アパッチ族』(wikipedia)

"1972年5月27日 NHKラジオ第1放送文芸劇場(NHK大阪放送局制作)"

 こちらも貴重な46年前のラジオドラマ。上のドラマに比べると昭和の匂いが懐かしい感じです。こちらのワイルドな感じが原作の記憶に近いような気がします。もう一度これを機に40年ぶりくらいになりますが、原作を再読してみたいものです。

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◆関連リンク 
松岡正剛の千夜千冊 1713夜『日本アパッチ族』小松左京

"なんとも奇っ怪な小説を書いたものだ。いまなおこの話に匹敵するSFがない。"

 あの松岡正剛氏にここまで言わせる奇想小説 !

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2019.11.18

■録音版公開 2 小松左京原作、岡本愛彦演出 ラジオドラマ『日本沈没』(1973年)


ラジオドラマ『日本沈没』 No 4 94〜103回

原作:小松左京 (光文社カッパノベルス刊)
演出:岡本愛彦 脚色:蓬莱泰三 音楽:田中正史
効果:高田暢也 演出助手:竹内東弥

キャスト
小野寺浩介:江守徹 阿部玲子:太地喜和子 田所雄介博士:加藤武
幸長信彦助教授:金内喜久夫 中田一成:高橋悦史 邦枝:角野卓造
山本総理:北村和夫 渡老人:龍岡晋 吉村秀夫:下川辰平
ナレーター:川辺久造 その他出演:文学座

 映画版、テレビ版より早い1973年10月8日から1974年4月5日の半年間、毎日放送制作で、9:00 - 15分の帯番組として、月曜から金曜の毎日、全国ラジオネットワーク(NRN)系列局で放送された。全130回。 今回はその東海ラジオの録音版公開の第二回として中盤の94回から最終回のご紹介です。AM放送故の雑音、古いカセットテープからのデジタル化で再生速度の不安定さはご容赦下さい。
 46年前にこのように素晴らしい作品を作られた制作者の皆様に感謝いたします。

 まず1本目(前回記事から数えると4本目)、73年年末に放送された中盤の一部です。 映画版と比べても遜色のない重厚なドラマの雰囲気をお楽しみいただければ幸いです。

 


ラジオドラマ『日本沈没』 No 5 116, 120, 123, 126回

 いよいよ放送も終盤に差し掛かり、日本はほぼ壊滅し海の底に沈む寸前です。
 ここら辺りは、小野寺と玲子の物語は、原作から少し離れて別の展開を見せています。


ラジオドラマ『日本沈没』 No 6 最終回

 そしていよいよ最終回。ここは最後ということで全篇の録音が残っています。今までの録音と異なり、冒頭から最後まで、本来の放送の形が唯一残っている回になりますので、お聴きいだければと思います。

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 No.1-6の全てを聴いていただいた方がいらっしゃったとしたら、お聞き苦しい中、ありがとうございました。
 ラジオドラマというメディアを最大限に活かして作られたSFドラマの白眉の傑作だと思いますので、お楽しみ頂けたとしたら幸いです。

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◆関連リンク
ラジオドラマ 日本沈没 (1973) Wikipedia

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■録音版公開 1 小松左京原作、岡本愛彦演出 ラジオドラマ『日本沈没』(1973年)
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2019.11.13

■録音版公開 1 小松左京原作、岡本愛彦演出 ラジオドラマ『日本沈没』(1973年)


ラジオドラマ『日本沈没』 No.1 ダイジェスト1〜94回

原作:小松左京 (光文社カッパノベルス刊)
演出:岡本愛彦 脚色:蓬莱泰三 音楽:田中正史
効果:高田暢也 演出助手:竹内東弥

キャスト
小野寺浩介:江守徹 阿部玲子:太地喜和子 田所雄介博士:加藤武
幸長信彦助教授:金内喜久夫 中田一成:高橋悦史 邦枝:角野卓造
山本総理:北村和夫 渡老人:龍岡晋 吉村秀夫:下川辰平
ナレーター:川辺久造 その他出演:文学座

 映画版、テレビ版より早い1973年10月8日から1974年4月5日の半年間、毎日放送制作で、9:00 - 15分の帯番組として、月曜から金曜の毎日、全国ラジオネットワーク(NRN)系列局で放送された。全130回。 その東海ラジオ放映の、73年年末に放送された1〜年末回までのダイジェスト放送と94回までの一部録音版です。 AM放送故の雑音、古いカセットテープからのデジタル化で再生速度の不安定さはご容赦下さい。

 46年前にこのように素晴らしい作品を作られた制作者の皆様に感謝いたします。

 映画版と比べても遜色のない重厚なドラマの雰囲気をお楽しみいただければ幸いです。

 うちにはカセットテープ3本が存在します。そのA,B面を6本のデジタル音源に変換したので、全部で6本の動画としてYoutubeに順次公開していきます。本日の記事はその前半3本のご紹介です。残り3本は今週末にアップして、次週の記事として記載したいと思っています。


ラジオドラマ『日本沈没』 No.2  30〜36回

 30-36回の一部録音版です。
 上のNo.1 ダイジェストとこのNo.2は一部、時系列が逆転しています。ラジオで録音した順番(放送の順番)は、YoutubeアップのNo.2、No.3、No.1の順です。 ややこしくてすみません。

 当時、中学生でカセットテープを買う小遣いが足りなくて、ラジオを聴きながらここだっ! と思ったシーンをその場で録音していくという録り方をしているので、話が飛び飛びなのはご容赦ください。

ラジオドラマ『日本沈没』No.3  4?, 51, 53, 54, 55回

 本日の最後は、前半の4?, 51, 53, 54, 55回の一部録音版です。

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 このラジオドラマのシナリオは、演出された岡本愛彦さんに手紙を書いて、特別に譲って頂いたものです。
 シナリオ裏表紙に制作時に出前された食事の数が記されているのが生々しいです。五目そば 三、ギョウザ 三、ライス 一、焼きそば(かため) 二と書かれてます。

 岡本さんは、TV「私は貝になりたい」等で有名な映画とテレビドラマの監督さんで、すでに2004年に79歳でお亡くなりになっています。
 数少ないラジオドラマの演出がこの『日本沈没』です。ラジオドラマでありながら大変視覚的な演出でイメージ喚起力に優れるこのラジオドラマを作られたのも、映像畑の演出家でいらっしゃったことが大きく影響しているのかもしれません。

 最後になりましたが、改めて素晴らしいドラマを制作された岡本愛彦さんに追悼の意を表したいと思います。何も知らない中学生に丁寧にご返事いただき、不躾なお願いにも関わらず、シナリオと長文のお手紙を頂き、本当にありがとうございました。

◆関連リンク
ラジオドラマ 日本沈没 (1973) Wikipedia

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2019.11.06

■感想 「小松左京展「D計画」」@世田谷文学館

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「小松左京展「D計画」」@世田谷文学館 (美術手帖)

"会期 2019年10月12日~12月22日  会場 世田谷文学館
 開館時間 10:00~18:00 ※入場・ミュージアムショップの営業は閉館30分前まで
 休館日 月(10月14日、11月4日は開館)、10月15日、11月5日
 観覧料 一般 800円 / 65歳以上・大学・高校生 600円 / 小中学生 300円

 代表作『復活の日』や『日本沈没』など、人類の滅亡の危機を描いた小松の作品は、徹底した取材・調査と膨大な知識・想像力が生んだもの。その迫力と高いエンターテインメント性で読者を圧倒し、地球規模災害や世界の変化など未来を予見したような作品の設定も驚異的だ。
  
 本展は、作家・小松左京が誕生するまで、代表作の魅力の再発掘、また大阪万博のテーマ館サブ・プロデューサーを務めるなど多分野での活動に注目。多彩な資料をもとに、「小松左京」とは何者かを探る。"

 東京出張にくっつけて「小松左京展「D計画」」を10/22に見てきた。
 生原稿から企画メモ、『さよならジュピター』メイキング、映画のミニチュア、万博の資料、飼われていた猫たちまで、充実の展示。
 ディスプレイされた著作から引用された言葉群を展示とともに読み進め、小松SFを過去へ/未来へ旅する、感慨深い3時間でした。

 ボリュームとしては会場の広さと資料の量では、『高畑勲展』に比べると1/3ほどかもしれないけれど、他では見られない創作メモ等、その情報密度はこちらも重量級で、半日みっちりじっくり鑑賞したが、まだ情報の1/4ほどしか見切れていない感じ。

 以下は簡単なレポートと、僕が撮ってきた写真記録です。(写真は会場内は3箇所のみ撮影可)

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 会場は『高畑勲展』と比べると観客の数ではもの凄く空いている。表現者として考えると、アニメーションの高畑監督と比べると一般性は少し小さいかもしれないが、現在の日本の文化/文明に対する影響では、小松左京の巨大さは疑うべくもない。もっとこうした作家の展示というのは大きく、そして大勢の人々に見られてもいいのではないかと思ってしまう。
 特にこの資料の密度は圧倒的なので、是非、小松左京作品に触れたことのある方には、みて欲しいものです。

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 小松左京の書斎を再現したコーナー。
 このすぐ横に『日本沈没』コーナーがあり、当時、執筆に際してD計画の各種計算に使われた電卓等も飾られていた。

 代表作については、キーとなる作中の文章がパネルに文字として大きく引用されいて、かつて読んだ記憶が想起され、たの展示品共々、小松ワールドが眼前にまざまざと展開される構成で、そのイメージ喚起は圧巻でした。

 小松SFから小説や映画に興味を持ってきた僕としては、ここで示される『日本沈没』『日本アパッチ族』『果てしなき流れの果てに』『エスパイ』『復活の日』『結晶星団』『ゴルディアスの結び目』『虚無回廊』『地には平和を』等々のSF小説とその映像/メディアミックス作品については、原点的に感じられて非常に感慨深い空間でした。

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 この写真は『さよならジュピター』のメイキング映像と、そのオーディオコメンタリーが流されるコーナーの隣に置かれた小松家の歴代の猫達のコーナー。
 各作品で苦労された小松左京の心を癒したであろうねこ達の姿と、そこに横たわる小松の写真。自身が撮られた猫のホームビデオも流されていて、猫への深い小松左京の愛情が伝わる良いコーナーでした。

 そして最後のコーナーに生賴範義氏の描いた2008年の小松左京さんのあの絵が飾られていたが、世界をそして宇宙を洞察するあの眼の輝きが素晴らしかった。

◆展示物から知った情報
 展示されていた企画書やメモ等から知った濃い情報を以下箇条書きにします。他で既に公開されているのかもしれないですが、少なくとも僕にとっては初めて知った情報。写真撮影は不可であったため、その場でiPhoneでメモを取ってきたものです。もし一部記録ミスがあったら申し訳ありません。文責 : BPということで、、、、(^^;;)。

wikipedia「日本沈没」等に記載されているメディアミックス作品として、ラジオドラマは1973-74年半年間に渡って放映された毎日放送の連続ラジオドラマ版と1980年のNHK版があるのは知っているが、昭和48年1973年の11月に文化放送で単発ドラマとして「ここを過ぎて悲しみの都へ(日本沈没より)」という芸術祭ラジオドラマ部門へ出品されていた作品があったのを初めて知った。時期的に毎日放送のラジオドラマと並行して放送されたということになるが、どういう事情だったのでしょうか。映画の公開直前ということで、キャンペーン的な意味合いがあったのか、、、。展示品はこのドラマのシナリオでした。(逆に展示コーナーには、毎日放送版のシナリオは展示されておらず、うちにあるシナリオは貴重かも、と思ったり、、、。)

 このラジオドラマについて、ネット検索すると、以下の情報がありました。
 公開セミナー「鉄になる日」関連番組(pdf)

"小松左京「日本沈没」よりドラマ「ここを過ぎて悲しみの都へ」文化放送1973/11/4 50分
大地震が次々と日本列島を襲う。沈没を予告された日本列島に生きる日本人の運命は?。小松左京の「日本沈没」をラジオドラマ化。
原作:小松左京。脚本:横光晃。出演:中尾彬,日色ともゑ,前田昌明,加藤嘉,久米明,杉山とく子,松本のり子。"

・キネ旬 73.12/15 「映画 日本沈没 のイメージを探って」と題した小松左京、森谷司郎他の対談記事。
 これは読んだ記憶がないので、いつか入手したいものです。

・映画企画 『新日本沈没』、東宝で95-96年に企画されていたようです。これもwiki等にない情報。検索してもネット情報も見当たりません。
 企画書 1995 6/30。提案 北山裕章。
 同企画書 1996 4/24、12/12。企画 提案 橋本幸治 北山裕章。
 ストーリー 米村正二 藤田伸三。正篇のリメイク+続篇を加えた全長版とのこと。
 監督案として、大森一樹 澤井信一郎 滝田洋二郎 崔洋一 伊藤俊也 降旗康男の名が書かれています。
 配役案は、小野寺 真田広之 中井貴一 緒形直人、玲子 宮沢りえ 後藤久美子 清水美沙、田所 柄本明 ビートたけし 勝新太郎という記載。
 僕はこの監督陣なら、澤井信一郎版とか観たかったかも。ビートたけしの田所博士はさすがにないかとw。

・1999年公開予定の松竹版。大森一樹監督として制作発表されたもの。ポスターが飾られていました。
 ネットでこの映画のポスターとして知られているものと同じでした。

・日本沈没 全6回バージョン 2002.10/2 (株)東宝映像美術企画。全6回と書かれていたので、たぶんテレビ企画ではないかと。
 イメージキャスト 地球物理学者 伊東四朗 、潜水艇乗り 坂口憲二 、女優志願 小池栄子 以上未交渉と記載。

・半村良の小松『日本沈没』の読後の書簡 73.3/25
 「沈没でSFをはじめてやっと納得できる教範に会った心境です。」という記載あり。ここを起点に半村良によるSFへの再チャレンジに火がついた様子が伺えます。もしかしたら傑作SF『妖星伝』等は、この『日本沈没』がなければ産まれなかったのかも。
 その他は、半村良先生の『日本沈没』への書簡 (小松左京ライブラリ)参照。

・アーサー C クラークの『さよならジュピター』 参加辞退の書簡。
 特に説明書きがなかったため、詳細は不明ですが、たぶん映画化の際に協力を仰いだのかと。これも当時聞いたことはなかったし、ネット検索しても出てこない情報なので、なかなか貴重。もしクラークの協力が得られていたら、どんな映画の変更があったのか、夢想させます。

・映画『さよならジュピター』について、「興行的には収支とんとん」の文字。

・万博のテーマ特別委員会 資料に「候補者名簿 芸術部門 黒澤明」の名があり、丸が打ってある。
 もし黒澤明による万博企画があったとしたら、、、これもいろんな想像を膨らませられます。

・その万博に関する小松左京の1970年3月13日の言葉「地下第三スペース  全展示場をもう一度見回った。私にとっての万国博の本当の終わりだった」。全力を尽くして走り回った後の気持ちだろうか。奥の深い言葉として、展示の最後のコーナーで感慨深く感じました。余韻を引く言葉です。

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